深度・小互解説
未来のウェブサイトは訪問者ごとにその場で組み立てられる:Adobeが意図に応じてリアルタイムに専用ページを生成するデモを公開
ライブデモ:「キャンプ」と検索した途端、コーヒーメーカーのサイトのコピー・商品・レコメンドが軒並みアウトドア仕様に切り替わる。技術自体は実用段階だが、顧客サイトへの本格導入はまだ先だ。
まず全体像
- Adobeのチーフサイエンティストである Carlos Sanchez は、AI Engineer World's Fair(AIEWF)で「agentic site」(agentic site)を披露した。訪問者の閲覧行動と検索意図をもとに、AIがその場で専用ページを組み立てる仕組みだ。
- 事例一:コーヒーメーカーを販売するサイトでは、訪問者が「キャンプ」と検索した後、コピー・商品の並び順・レコメンド内容がすべて「アウトドアでコーヒーを淹れる」というテーマに組み替えられる。事例二:「ヨーロッパのAIカンファレンス」のような自由記述のクエリを入力しても、対応するページをその場で生成できる。
- システムはAIにゼロからページを書かせているわけではなく、企業がすでに持っているコンテンツライブラリから素材を検索して組み立てている。Sanchezは、これは生成品質をコントロールするためだと説明する。
- Adobeが自ら課している技術的なハードルは、ページ生成の遅延を1-2秒以内に抑えること。現在の推論コストは1ページあたり約1-2セントで、今後さらに下がっていく見込みだという(いずれもAdobe自身による評価データ)。
- この仕組みはまだ顧客の本番サイトに大規模導入されてはいない。Adobeは現在、顧客にコンセプトをデモしながら試験的に取り組んでくれるパートナーを探している段階で、Sanchez自身もこれが主流のやり方になるかどうかは分からないと述べている。
⚑本稿はサードパーティメディアLatent.SpaceによるAdobeへの現地取材に基づくもので、企業発表資料ではない。文中の「1-2秒の遅延」「1ページあたり1-2セント」といった技術数値はいずれもAdobe自身による見積もりであり、第三者による実測ではない。以下は事実として記述し、その都度は繰り返さない。
1あなたが誰かによって、サイトの姿が変わる
一つのサイトが、あなたが誰かによって姿を変える
サンフランシスコで開催されたAI Engineer World's Fair(AIEWF)で、Adobeのチーフサイエンティストである Carlos Sanchez は、同社が模索している「agentic site」(agentic site)を披露した。訪問者一人ひとりの意図に応じて、その場でページを組み立てるウェブページの形態だ。
この20年間、ウェブでいう「パーソナライズ」とは基本的に、あらかじめ用意された数パターンの中から一つを選んで見せることを指していた。Sanchezが披露したのは、ページそのものがあなたが開いた瞬間にその場で組み上がる、あなたただ一人のためのページだ。
◆注目すべきは、サイトのパーソナライズが「いくつかの既定パターンから選ぶ」段階から、「ページ全体をAIが訪問者一人ひとりに合わせてリアルタイムに検索・組み立てる」段階へと引き上げられた点、そして生成の遅延を1-2秒以内、1ページあたりの推論コストを1-2セントにまで抑え込んだ点だ。Sanchezは、多くの人はウェブページのリアルタイム生成をまだ先の未来の話だと思っているが、「いや、これは未来の話ではない。今すぐできることだ」と語る。
Adobeのチーフサイエンティスト、Carlos SanchezがAI Engineer World's Fairの会場で講演。出典:Latent.Space
たとえるなら · agentic siteとは何か
記憶力がよく手も早い販売員のようなものだ。あらかじめ何種類ものパンフレットを刷って選ばせるのではなく、あなたがたった今尋ねた質問に合わせて、その場で書き換え、あなただけに見せる一部を刷り上げる。Adobeはこの発想を「audience of one」(受け手はあなた一人)と呼ぶ。ページは人によって異なり、もう「25-34歳女性」のような何段階かの区分に人を当てはめてテンプレートを適用する時代ではない。
