PrismML が 27B モデルを iPhone に圧縮。知能もほぼそのまま
約 54GB の 27B モデルを約 3.9〜5.9GB に圧縮。スマホでもローカル動作し、平均スコアは約 9 割を維持します。まずまず核心的な価値を説明し、技術的な詳細と注意点は後半で解説します。
PrismML が Bonsai 27B を公開しました。核心は、かつてクラウドや最上位 PC でしか動かなかった「巨大モデル」を、iPhone に収まるサイズへ縮小したこと。しかも知能はほとんど落ちていません。
3分でわかる核心情報
従来、27B(270億パラメータ)クラスの中型モデルは、オリジナルファイルで約 54GB あります。一般的な 4-bit 圧縮でも約 18GB あり、スマホには容量・性能ともに収まりませんでした。
Bonsai 27B は、極端な低ビット圧縮(1-bit と三値)により、言語ウェイトを約 3.9GB〜5.9GB(三値の実デプロイパッケージは約 7.2GB)に削減。オフラインでスマホや通常のノートPCでローカル動作します。PC(RTX 5090)ではピーク約 163 字/秒、Apple M5 Max では約 66〜87 字/秒の規模です。
圧縮が強くなるほど、モデルの性能は通常低下します。「高思考モード」で15項目のテストをオリジナルと比較しました。
数学やコーディングといったハードな指標の低下は最小限です。ツール呼び出しと視覚は低下が大きめですが、詳細は後述します。雑談だけのオモチャではなく、少なくともこのテストセットでは、実務に使えるプロダクションモデルとして機能します。
- 1-bit スマホ版 · 約 3.9GB · フラッグシップ iPhone の予算内に言語ウェイトが収まり、平均スコアは約9割
- 三値 PC版 · 理想 5.9GB / 実際のデプロイ約 7.2GB · ノートPC向き、平均スコア約 95%
- ライセンス · Apache 2.0、ウェイトとデモは公開済み
以下で技術を分解します。ベースモデル、通常の圧縮が崩れる理由、スマホのメモリに何が入るのか、速度とデモの読み解き方です。「スマホで動く」は、262K の長文、視覚、長時間のエージェントを同時にフル活用できるという意味ではありません。
ベースは Qwen3.6-27B、Bonsai はネットワーク全体を極限まで低ビット化
ベースは Alibaba Qwen チームの Qwen3.6-27B です。約 27B パラメータ、ハイブリッド注意力構造を持ち、約75%の層が線形注意力、25%の層がフル注意力を使用。ネイティブで超長文コンテキストをサポートします。PrismML は新しい 27B をゼロから訓練したのではなく、この訓練済みネットワークのウェイトを二値または三値化し、それを直接実行できる専用カーネルを組み合わせました。
128 ウェイトごとにスケール係数を共有。理論値は約 1.71 bit/weight、理想サイズ 5.9GB。現在のカーネルは 2-bit スロットにパッケージするため、実際は約 7.2GB。15項目平均 80.49、オリジナルの約 94.6%。
符号ビットとグループスケールのみで、約 1.125 bit/weight、デプロイ時 約 3.9GB。平均 76.11、オリジナルの約 89.5%。スマホの単一アプリ予算内に収まるのはこのクラスです。
ビジョンタワーは別途約4bitで、ディスク上は約0.63GB。テキストのみの利用なら通常メモリに常駐しません。オプションの DSpark ドラフト加速層は、さらに約 1.8〜2.0GB 追加されます。
ローカル27Bの壁は「1トークン生成ごとに全ウェイトを読み込む」こと
ローカルでトークンを生成するたびに、デバイスはほぼ毎回、モデル全体のウェイトをメモリから読み込み直す必要があります。バッチサイズが小さい場合、ボトルネックは演算ピークではなく、メモリ帯域幅になることが多いのです。モデルが大きいほど、ステップごとに移動するデータ量が増え、速度・発熱・バッテリー消費が悪化します。
FP16 の Qwen3.6-27B は約 54GB。一般的な「4-bit」パッケージ Q4_K_XL の実際の平均は約 5.2 bit/weight、約 17.6GB です。より積極的な IQ2_XXS は「2-bit」とされますが、実際は約 2.8 bit、約 9.4GB。多くのスマホの単一アプリ予算にはまだ重く、長い推論チェーンではスコアが大幅に低下します。
これが「27B がすごい理由」の本質です。パラメータ数自体の新しさではなく、このクラスの性能が初めてエッジ側のデプロイ可能な物理的境界に収まったのです。通常の方法では 4-bit 以上ならスコアを維持できますが、それ以下では、均等にスコアが下がるのではなく、ツール呼び出しの解析や多段推論の一貫性が崩れ始めます。Bonsai の主張は、サブ 2-bit 領域でもこれらの動作を一定レベル維持するというものです。
圧縮されるのはウェイト。長文を扱えるかを決めるのはキャッシュ
Qwen3.6-27B のハイブリッド注意力が大きく貢献しています。64 層のうち、完全な注意力キャッシュが長さに応じて増加するのは 16 層のみ。FP16 キャッシュは約 64KB/ステップで、全注意力の 27B より約4倍省メモリです。それでも 262K コンテキストの FP16 キャッシュは約 17.2GB となり、1-bit ウェイト自体よりも大きくなります。
Bonsai のウェイトは、4-bit KVキャッシュに対して比較的「耐性」があります。出力分布の forward-KL で測ると、同じく 4-bit キャッシュを有効にした場合、Bonsai は自身の FP16 キャッシュベースラインからの乖離が、FP16 / 通常の 4-bit ウェイトより約1桁小さくなります。ウェイト圧縮とキャッシュ圧縮は、この路線では方向性が同じで、互いに妨げにはなりません。プロジェクトのドキュメントでは、4-bit KV は依然として実験的機能とされており、主にメモリを節約しますが、デコードは少し遅くなり、実際のワークロードでの調整が推奨されます。
平均で約9割維持。損失は指示追従・ツール・視覚に集中
評価は thinking モードで実施。全15項目で、知識・数学・プログラミング・指示追従・ツール呼び出し・視覚をカバー。FP16 ベースライン平均 85.07、三値 80.49、1-bit 76.11。比較で最も顕著なのは、Bonsai が数点落としたことではなく、通常の積極的量子化がどう崩れるかです。IQ2_XXS は AIME26 で 93.33 → 57.5、LiveCodeBench で 87.77 → 56.4。同じ問題で、1-bit Bonsai の AIME は 87 以上、LiveCodeBench は 76.4 を維持しています。
| 能力カテゴリ | FP16 | 三値 | 1-bit | 1-bit 差分 |
|---|---|---|---|---|
| 数学 | 95.33 | 93.40 | 91.66 | −3.67 |
| プログラミング | 88.74 | 85.96 | 81.88 | −6.86 |
| 知識と推論 | 83.15 | 76.96 | 73.39 | −9.76 |
| 指示追従 | 78.47 | 71.77 | 65.74 | −12.73 |
| ツール呼び出し | 80.00 | 74.01 | 66.03 | −13.97 |
| 視覚 | 72.61 | 65.19 | 59.57 | −13.04 |
| 総平均(15項目) | 85.07 | 80.49 | 76.11 | −8.96 |
2つのバージョンの位置づけが見えてきます。三値は、メモリが十分にあるノートPC向けで、オリジナルの 27B の感触にできるだけ近づけたい場合に適しています。1-bit はまず「収まるかどうか」を解決しますが、「平均9割」をそのまま「エージェント能力9割」と読んではいけません。ツール呼び出しが全精度より数点低いだけなら三値で辛うじて成立しますが、1-bit ではツール系の平均差分は約14点にもなります。
評価条件で割り引くべき点
評価には EvalScope、vLLM、H100 を使用し、各項目の生成長さの予算と採点方法も公開されており、レーダーチャートだけを出す発表よりははるかに詳細です。ただし、結果はまだ第三者による再現がされていません。ほとんどの項目は1回のみの実行です。Bonsai のサンプリング温度は 0.7、Qwen ベースラインと通常の量子化は 1.0 で、生成設定は完全には一致していません。総平均は15項目の単純平均で、数学が4項目を占めます。Bonsai は偶然にも数学で最も良い成績を維持しているため、「95% / 90%」は、ツールや指示に偏った実際のプロダクト負荷よりも良く見えます。エージェントとして使う場合は、総平均ではなく BFCL v3、τ²-Bench、IFEval、IFBench を優先的に確認してください。
速度は2層:低ビット転送と、CUDA 上のドラフト加速
低ビットウェイトは各ステップで転送するデータ量を直接減らすため、トークン生成が最も恩恵を受けます。速度は tg128(約128ユニット生成)と pp512(512入力ユニット処理)で統一報告され、バッチサイズ1、ドラフト層とビジョンタワーは含みません。
DSpark 投機的デコード:小さなドラフトモデルが先にセグメントを予測し(深さ k=4)、ターゲットモデルが一度に検証します。検証はロスレスで、出力分布はターゲットモデルのみを実行した場合と同一です。H100 では、三値が 98.0 → 131.8 字/秒(約 1.34×)、1-bit が 104.8 → 143.8(約 1.37×)に向上。Apple Silicon のシングルリクエストシナリオでは、複数行の検証コストを償却できず、デフォルトではオフです。プロジェクト側も高度に実験的と位置付けています。
消費電力:M5 Pro では 1-bit が約 0.275 mWh/字で、データセンター GPU 6種の 0.63〜1.32 mWh/字より1桁低い値です。iPhone 17 Pro Max では、バッテリー1% あたり約 672 字を生成し、約 10.8 字/秒を維持。5.2分で約 3360 字生成後、バッテリーが 100% から 95% になり、軽度の熱スロットリングが見られました。桁としては参考程度に、機種によってばらつきがあります。
試す価値があるものと、当面は想定すべきでないもの
プライバシー重視のローカルQA・文書処理。オフラインアシスタント。反復的で難易度の高くないエージェントステップをクラウドからローカルへ。単一コンシューマー GPU で 27B をホスト。ノートPCで三値版を使った長文文書処理。
スマホでの 262K フル活用。ビジョンタワーの常駐。DSpark のデフォルト有効化。長時間・複数ファイルにわたるエージェントコーディング。この15項目の平均点をそのまま本番信頼性とみなすこと。
PCが最も簡単、スマホは現時点では開発者向けパス
すぐ試したい一般ユーザーは、PC向けデモを優先。スマホ側でも動作しますが、「App Store でワンタップインストール」できる完成品アプリはまだありません。1-bit ウェイトと Apple 製 MLX / Swift カーネルを自分で組み込むか、今後のアプリ版を待つ形になります。
公式オールインワンリポジトリ:PrismML-Eng/Bonsai-demo。2つのコマンドでローカルチャットサービス(視覚・ツール呼び出し含む)を起動できます。
- デフォルトは三値 27B:品質重視、メモリが十分なノートPC / デスクトップ向け(約 7GB 級の言語パック)
- スマホと同じサイズを試す:1-bit ファミリー
BONSAI_FAMILY=bonsaiに切り替え - 27B ウェイトがまだ非公開の場合:Hugging Face の読み取りトークンを
BONSAI_TOKENに設定 - 起動後:ブラウザで
http://localhost:8080を開けばチャット可能。Mac では MLX スクリプトrun_mlx.shも使用可 - Windows:同じリポジトリで
setup.ps1/run_llama.ps1を使用
- git をインストールし、ディスクに約 15GB+(ウェイト + ランタイム)の空きを確保
- リポジトリをクローンして移動(コマンドは下のコピー可能ブロック参照)
./setup.shを実行(モデルダウンロード、プリコンパイル済みバイナリ取得。Mac では MLX も処理)./scripts/start_llama_server.shを実行し、ブラウザで localhost:8080 を開く- 1-bit にしたい場合:
BONSAI_FAMILY=bonsaiを設定してから setup / 起動
git clone https://github.com/PrismML-Eng/Bonsai-demo.git cd Bonsai-demo # デフォルト:三値 27B(ノートPC向き) export BONSAI_MODEL=27B # 27B リポジトリが非公開の場合、HF 読み取りトークンを設定 export BONSAI_TOKEN="hf_your_token_here" ./setup.sh ./scripts/start_llama_server.sh # ブラウザで http://localhost:8080 を開く # 1-bit スマホ同梱ファミリーに変更: # BONSAI_FAMILY=bonsai BONSAI_MODEL=27B ./setup.sh
iPhone 17 Pro Max では、1-bit 約 3.9GB の言語ウェイト、約 11 字/秒。Apple デバイスは MLX(Python / Swift) を使用します。
- ウェイト:Hugging Face 上の 1-bit MLX パッケージ、例:prism-ml/Bonsai-27B-mlx-1bit(約 4GB 規模、パッケージオーバーヘッド含む)
- カーネル:公式メンテナンスの mlx-swift ブランチ(iOS / macOS 低ビットカーネル)。言語側のみが真の 1-bit 実行可能
- 実際のハードル:フラッグシップ機でもメモリ予算が逼迫(物理メモリの約半分がアプリに割り当て)。Xcode / Swift 統合の知識が必要で、純粋な初心者向けの「ダウンロードすれば動く」フローではありません
- 三値版はスマホに無理やり入れない:デプロイ約 7.2GB で、一般的な iOS 単一アプリ予算を超えます
- Android:今回のリリースは Apple MLX + NVIDIA CUDA が中心で、同等の「ワンタップで Android ストアに」というパスはありません。開発能力があれば GGUF / llama.cpp で自己移植も可能ですが、公式の簡単セットアップは提供されていません
発表ページでは期間限定の無料開発者プレビュー API を提供しており、ローカルに 27B をダウンロードせずに機能を試せます。ローカルウェイトとデモは引き続き Apache 2.0 のオープンソースが主要パスです。ウェイトのコレクションは Bonsai 27B Collection を参照してください。
上記のデータとデモは発表資料と技術ホワイトペーパーに基づきます。第三者による再現がされているか、ミッドレンジ機で十分かは、ご自身で検証が必要です。27B ウェイトが初めてローカルデプロイのハードルを約 4GB に引き下げました。長文コンテキスト、マルチモーダル常駐、エージェント信頼性は、引き続きシナリオごとに実測が必要です。
主な出典
PrismML 発表ページ:Announcing Bonsai 27B
技術ホワイトペーパー:Bonsai 27B Whitepaper
実行と制限:Bonsai Demo Repository
モデルウェイト:Bonsai 27B Collection
27B モデルを iPhone に。でも収まるのは「言語」の部分
PrismML が約 54GB のモデルをスマホに収まるサイズへ。この1ページで、その仕組み・維持できた性能・残された課題を解説します。
↓ 一枚で読了 · 動く図あり
27B(270億パラメータ)クラスのモデルは、オリジナルファイルが約 54GB。一般的な 4-bit 圧縮でも約 18GB あり、スマホでは容量・性能ともに困難でした。PrismML が公開した Bonsai 27B は、言語ウェイトを約 3.9GB(1-bit 版)〜 7.2GB(三値版)に圧縮。iPhone やノートPC でオフライン動作し、15項目のテスト平均点はオリジナルの約9割を維持します。
ベースは Alibaba Qwen チームが訓練した Qwen3.6-27B。PrismML は、この訓練済みネットワークのウェイトを 1-bit または三値(各ウェイトが −1/0/+1 のいずれか)にマッピングし、それを直接実行できる専用計算コアを組み合わせました。言語側は埋め込み層から出力ヘッドまで全チェーンが低ビットで、一般的な「2-bit」パッケージのように重要層の一部を 4〜8 bit に残すことはありません。だからこそ、サイズ表示と実態が一致します。
ビジョンタワーは別途約 0.63GB で常駐せず、使用時にのみロードされます。さらに高速化したい場合の DSpark 加速層は約 1.8〜2GB ですが、プロジェクト側は実験的としており、デフォルトではオフです。スマホで同時に使えるのは、これらのうち最小の部分です。
PrismML 独自の15項目テスト(thinking モード)は、知識・数学・プログラミング・指示追従・ツール呼び出し・視覚をカバー:三値版は平均 80.49、1-bit 版は 76.11。オリジナル比で約 95% と約 90% です。通常の積極的量子化 IQ2_XXS は AIME26 で 93.33 → 57.5、LiveCodeBench で 87.77 → 56.4。同じ問題で、1-bit Bonsai の AIME は 87 以上、LiveCodeBench は 76.4 を維持しました。
数学 −3.67点、プログラミング −6.86点。長鎖推論問題では、通常の量子化のような壊滅的な低下はありません
ツール呼び出し −13.97点、指示追従 −12.73点、視覚 −13.04点。1-bit 版ではこれらの低下が顕著で、フルパワーのエージェントとしては使えません
低ビットウェイトにより各ステップで移動するデータが減り、生成速度が向上します。以下は PrismML 公式の自己測定で、第三者による再現はまだです:
入るのか!?
唯一の常駐部分
- × ビジョンタワー 0.63GB、使用時のみ
- × 長文キャッシュ、会話が長くなるほど増加
- × 加速層 DSpark、デフォルトOFF
プログラミング −6.86
スマホはまだ先
- × ダウンロードできるアプリは無い
- × MLX / Swift での自己統合が必要
