実践:GitHub 公式が教えるハーネスの使いこなし——すぐ回せる 8 ステップ

この記事の中で彼自身がスキルを 2 つ入れています。原文タイトル末尾の「mostly(だいたい)」には、それなりの重みがあります。
著者:GitHub Blog07-29 · 12 分で読了⚑ チュートリアル
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ツール解説 · 小互解説
1 分でわかる要点
  • 毎日のように新しい MCP、スキル、ワークフローが出てきて追いきれません。GitHub 公式ブログは 7 月 27 日にこう書きました。追うのはやめて、手元の AI コーディングツールそのものを使いこなせ。その方が効く、と。
  • 著者 Burke Holland は GitHub と Microsoft で開発者アドボカシーを担当し、GitHub Copilot が主戦場です。開発者ツールの啓発チームも率いてきました。紹介しているのは、自分がいちばん毎日回している 8 ステップ。GitHub Copilot の既存機能だけで完結します。
  • コードを書く前に、まず AI にプロトタイプを 20 個出させ、1 ページに並べて比較します。「API エンドポイントを 1 つ足す」ような見えない作業でも、先に図を描かせます。理由はシンプルです。見なければ、考えもしないから。
  • 最後の関門は、別会社のモデルに粗を探させること。彼は GPT-5.6 Terra でコードを書き、Copilot が自動で Claude Sonnet を呼んでレビューさせます。学習データが違えば、盲点も違います。
  • 全権限モードは推奨するが、サンドボックス内に限る。AI 投資家の Matt Shumer は自分の Mac でオンにした結果、環境変数の解決ミスから再帰削除コマンドが走り、ホームディレクトリのファイルをほぼ消しました。
  • 原文タイトル「The harness is all you need (mostly)」の末尾 mostly には重みがあります。彼自身、この記事の中でスキルを 2 つ入れています。1 つは計画を徹底的に問いただす用、もう 1 つはデザインのトーンを決める用です。
⚑素材は GitHub 公式ブログ。著者は GitHub と Microsoft で開発者アドボカシーをしており、自社製品 GitHub Copilot の使い方を語っています。機能名とコマンドは Copilot 固有ですが、方法そのものはどのツールでも通じます。
導入

GitHub 公式が整理した 8 ステップ——日付ピッカー開発を例に

GitHub 公式アカウントが共有した、きわめて実践的な AI 開発者ワークフローのガイドです。毎日湧き出る新 AI ツール、複雑なプロンプト、各種の黒魔術に振り回されないこと。本番で生産性を跳ね上げるのは、ハーネスを使い切ること——それが本筋です。

著者 Burke Holland は GitHub と Microsoft で開発者アドボカシーを担当し、GitHub Copilot が主戦場です。「ゼロから Date Picker コンポーネントを作る」を例に、明確で繰り返し使える 8 ステップを整理しました。GitHub Copilot の既存機能だけ。新しいものは何も入れません。

ハーネスがまだピンとこない?
モデルの外側の殻から——Lilian Weng が説くハーネス工学
この 1 本で十分。モデルの外側の層が何を担い、どこまでできるか、そこに全部あります。

以下の 8 ステップが、彼が毎日回している流れです。タブを押すと、各段で何をしているか見られます。

入口を 1 つ選ぶ。初心者は CLI から

各入口は同じハーネスに収束中。一度学べばどこでも使えます。

承認ボタンを切り、サンドボックスで走らせる

自律性がなければ効率化は語れません。全権限は隔離環境必須。

/allow-all(別名 /yolo)

プロトタイプを 20 個並べ、1 ページで比較

見て初めて、自分が欲しいものがわかります。

Give me 20 mocks for a date picker web component…

計画モードへ。境界の問いを出させる

要件がぼんやりでも構いません。ぼんやりを解くのがこの段です。

/plan Build a date picker web component…

計画を承認し、Autopilot に任せる

組み込みループがモデルを推し進め、計画の全項目を完了させます。

人がレビュー。「だいたい動く」は拒否

出てきたものは大抵、欲しかったものではありません。品質はあなたの審美眼次第。

別会社のモデルに粗を探させる

別系列のモデルに見てもらうと、盲点がずれます。

Perform a rubber duck review on…

コミット。話題が変わったら新セッション

セッションはテーマ単位。話がそれ切ったら切り替えどきです。

第 1 ステップ

第 1 ステップ:入口を 1 つ選ぶ。初心者は CLI から

GitHub Copilot ファミリーだけでも入口はいくつもあります。CLI、新登場の GitHub Copilot デスクトップアプリ、VS Code、Visual Studio、JetBrains——これはほんの一例です。

良いニュースは、これらの入口が同じハーネスに収束しつつあることです。細部は違っても、コアの流れは同じ。一度学べば、どこでも使えます。

初心者への勧めは CLI から始めること。ハーネスを覚えるなら、できるだけ近くにいた方がいい、というのが理由です。端末は純テキストで、覚える UI の山がありません。一文打つと Agent が動き、やりとりはより直接で即時です。彼の言葉を借りれば、「正直、かなり気持ちいい」。

今回のデモで使ったのは新登場の GitHub Copilot デスクトップアプリ。Copilot CLI の上に載っており、macOS、Linux、Windows に入れられます。売りは複数の Agent セッションを同時に開けること。それぞれ独立した git の worktree とブランチで走り、互いに干渉しません。セッションモードは 3 つ。次の数ステップで語る内容とちょうど対応します。

セッションモード誰が主導か
Interactive対話往復。1 手進めたら、あなたの一言を待つ
Plan計画先に実装計画を出し、あなたがレビューして承認
Autopilot自動操縦任せきり。一手ずつ進めてタスク完了まで
第 2 ステップ

第 2 ステップ:承認ボタンを切る——ただし自分の PC では切らない

YOLO モード(you only live once。「人生一度きり」。プログラマーの自嘲で「もう開き直る」の意)。公式名は Allow All(すべて許可)。起動方法はツールごとに少し違いますが、多くはチャットで /allow-all と打つだけ。/yolo は同じコマンドの別名です。オンにすると Agent は実行したいコマンドをそのまま走らせ、一歩ごとに聞かなくなります。

彼がオンを推す理由はこうです。Agent に自律性があって初めて、効率の上がり方が見えます。何をするにも「承認」をクリックするなら、自分でやった方がマシです。一日中承認を押し続けるのも、かなりつらい体験です。さらに悪いことに、押し続けると中身を見ずに押す癖がつき、承認ステップそのものが形骸化します。

続けて彼は、7 月 10 日のツイートへのリンクを貼りました。Matt Shumer は AI 界隈で活動する投資家で、AI ライティング製品 HyperWrite の CEO も務めた人物です。彼は GPT-5.6 Sol を自分の Mac 上で走らせていました。Agent がファイル整理を実行する過程で再帰削除コマンド(rm -rf)を組み立て、Mac のホームディレクトリの中身をほぼ消し去りました。

1:21
セッションが 1 時間 21 分走ってから、削除に気づいた
Ultra
最高自律度の Ultra 枠。日常の一歩一確認ではない
$HOME
環境変数の解決ミスが原因。モデルは誤ったパスを実行

かなり腹が立った……OpenAI チームは調査中だが、こんなことが起きるのは GPT-3.5 の頃の話だと思っていた。2026 年半ば、最高推論枠の最前線モデルで、ではない。

Matt Shumer、2026-07-10

そこで著者の結論はこうなります。YOLO はオンでいい。ただしローカルではオンにしない。会社ではなおさらです。データは組織のシステム上にあり、事故の代償が大きい。オンにするならサンドボックス本機と隔離された使い捨ての環境。中が全消しされても、自分のファイルには影響しません。を使います。いちばん手軽なのは GitHub Codespaces(クラウド開発環境)か dev container(本機上でコンテナに隔離した開発環境)です。

権限は 4 段階——読み取り許可から完全自動まで

この層が、「楽」と「安全」を両立できるかを決めます。Copilot CLI の既定は、何でも止めるわけではありません。検索、ファイル読み取り、読み取り専用コマンドなど、読み取り操作はもともと自動許可です。あなたに確認を求めるのは、システムを変えうる動作——破壊的コマンドの実行、ファイル書き込み、URL へのアクセスです。

「毎ステップ質問」から「完全自動」のあいだにも、段階があります。

段階止まるかいつ使うか
既定読み取りは自動許可。ファイル変更・破壊コマンド・URL は毎回確認自分の PC で作業するとき
--allow-all / --yolo許可が必要な動作は聞かない。意思決定点では、どうしたいかまだ聞くサンドボックスで任せきりにしたいとき
--no-ask-user確認質問はせず自分で決める。ただし次の一手を勝手に続けない追質問は嫌だが、枠を燃やし続けたくもないとき
autopilot モード一手ずつ進めてタスク完了まで。全権限がなければ承認が要る作業は不可明確な計画があり、一度に仕上げさせたいとき

さらに細かくもできます。--allow-tool='shell(git:*)' --deny-tool='shell(git push)' の意味は「git は全部 OK。ただし push は禁止」。覚えておくべきルールが 1 つ。拒否ルールは常に許可ルールより優先します。--allow-all を付けても同じです。

第 3 ステップ · コア手法

第 3 ステップ:先にプロトタイプ。見て初めて欲しいものがわかる

AI が本当にすごい点の 1 つは、初期プロトタイプが桁違いに安くなったことです。昔はプロジェクトの一段階そのもので、しばしば贅沢品でした。今は一文で出ます。

例は date picker コンポーネント。単純に聞こえますが、答え待ちの問いが山ほどあります。コンポーネント内のナビはどうする? 選択中の日付はどう見える? 区間選択は? 日・月・年の切り替えは?

彼のやり方は、一文で 20 個要求することです。

原文 · 原型を 20 個まとめて
Give me 20 mocks for a date picker web component. Put them all in an HTML file so I can compare.
日付ピッカーの Web コンポーネントのモックを 20 個ください。全部 1 つの HTML に入れて、比較できるように。
20 個の日付ピッカー原型を同じ HTML に並べた画面
20 案を 1 ページに配置。上部は自動で分類:すべて 20 / ミニマル / 表現力 / 区間 / モバイル / コンテキスト。右端は日ごとの忙しさを緑の濃淡で示したヒートマップ。画像は GitHub ブログ原文より。

出てきた 20 案のうち 1 つは年ビューから始まるもの(図左の「Year at a glance」。一年が一目)。それを見て初めて気づきました。自分が欲しいのは、年 → 月 → 日とズームできる UI だと。

見なければ、考えもしない類のものです。

These are the kinds of things you don't consider until you see them.

人は密な文字より、画像・形・見えるレイアウトの方がはるかに速く処理できます。初期に低コストで原型をいくつか作ると、複雑な概念が一気に直感的になります。

見えない作業も、同じく先に図にする

API エンドポイントを 1 つ足す——プログラム同士が呼び合う入口を増やす——という作業には、見せる UI がありません。それでも彼は、先に可視化モックを要求します。

原文 · 見えない設計を図にする
Create a visual mockup of the API for this project. Add five options for how we could handle a new API endpoint that allows the user to download their analytics data.
このプロジェクトの API の可視化モックを作って。ユーザーが分析データをダウンロードできる新エンドポイントの扱い方を、5 案追加して。
API エンドポイント 5 案のツリー比較図
「分析データのダウンロード」1 件を、5 つのやり方でツリーに展開:アカウント単位の同期 DL、リスト単位の同期 DL、非同期エクスポート、コンテンツネゴシエーション、カスタムレポート投稿。下段は第 1 案の完全なリクエスト例で、推奨の最小実用版と注記。画像は GitHub ブログ原文より。

GitHub Copilot デスクトップアプリは Mermaid 図テキストでフロー図を描く記法。数行書けば箱と矢印にレンダリングされるので、AI がそのまま「書いて」図にできます。に対応しており、5 案はそのまま木構造として描画されました。

モデルの選び方:中間の枠。しかも最初から最後まで変えない

日常の大半は中間モデルを勧めます。GPT-5.6 Terra か Claude Sonnet。推論枠も中程度。GPT-5.6 世代は 7 月 9 日に Copilot へ入り、3 型があります。Sol が推論最強、Terra がバランス、Luna が最軽・最安。推奨の Terra は真ん中の枠です。

もう 1 つ、さらに値打ちのある助言。同じ機能・同じバグでは、最初から最後までモデルも推論枠も変えない。理由はプロンプトキャッシュ(prompt caching)モデル側がこれまでの対話を保持し、続きの計算をやり直さない仕組み。料金が割引になります。モデルや推論枠を変えるとキャッシュは無効になります。です。替えなければ、過去の対話はキャッシュ状態のまま後続リクエストが割引されます。替えると最初からやり直しです。

第 4 ステップ

第 4 ステップ:計画モードへ。思いもよらない問いを次々出させる

ここであなたは、最初に思っていた欲しいものではなく、本当に欲しいものがわかっています。実装計画を出す番です。

新しいセッションは要りません。そのまま計画モードへ切り替えます。

原文 · 計画モードへ
/plan Build a date picker web component. I want the user to be able to zoom in and out of years, months, and days.
/plan 日付ピッカーの Web コンポーネントを作る。年・月・日のあいだをズームイン/アウトできるようにしたい。

このプロンプトはかなりぼんやりだと本人も認めています。それでも構いません。計画ステップは、まさにそのためにあります。

理論上は、完璧なプロンプトと完璧な文脈を、完璧な順に並べれば、モデルは一発で成功します。理論上は。誰にもできません。計画モードが理想に近づけるやり方は、自分で手を動かしたら遅かれ早かれ答えることになる問いを、先に 1 つずつ引き出させることです。

計画モードが聞く問いの一例です。どれも、具体的な 1 件を決めています。

開始日と終了日は、同じ日でもよいか?

「1 日選択」と「区間選択」を同じロジックにするかを決めます。同日可なら、「区間長ゼロ」をコードで扱う必要があります。

途中までの選択は有効か?

開始日だけ押して終了日を押さずに離れたとき、状態を残すか、UI に痕跡を残すか。

選んだ日付を空にできるか?

「クリア」ボタンの要否、クリア後は空値かデフォルト日付かの判断。

「今日」は常に表に出すか?

常駐の「今日」導線を置くか、当月まで辿らないと出ないか。

手入力は許すか?

許すなら雑多な入力形式の処理と、誤り時の案内が必要になります。

日付の保存形式は?

他システムとの接続方法が決まります。文字列かタイムスタンプか、時区またぎで 1 日ずれるかも、この 1 問に含まれます。

日付の貼り付けは許すか?

手入力とは別物。貼り付け内容は別場所の書式を引きずりがちで、個別処理が要ります。

こうした問いはまだ長い列が続きます。境界ケースを全部思い浮かべるのは不可能でも、モデルはかなり拾い出してくれます。

この段の急所

提案をそのまま飲むと、計画プロセスの価値を自分で打ち消します。意味は細部を自分の頭で一度通すことにあります。どれを取るか、その場で決める必要があります。

こちらからモデルに聞き返してもよい

計画モードの質問。4 選択肢の 4 番目が逆質問
モデルが「第 1 版でサポートする選択モードは?」と尋ね、4 選択肢を提示:単一日のみ(推奨)、単一日+区間、単一日+区間+不連続複数日、そして 4 番目——「待って、ここで言う不連続日付区間ってどんな形?」。逆質問は組み込みの選択肢で、別の一文を起こす必要はありません。最上行の「Loaded skill grill-me」は、追及スキルを読み込んだ印。画像は GitHub ブログ原文より。

彼はだいたい意図を察していましたが、双方が同じチャンネルに立つよう、それでも 1 問聞きました。途中で質問を差し込んでも計画フローは切れず、そのまま続きます。

もっと厳しく聞くなら:追及専用スキルを入れる

Matt Pocock 作の grill-me スキル(「こっちを詰めてくれ」)を入れると、2 コマンドをつなげて打つだけで、質問の量も厳しさも跳ね上がります。彼は TypeScript 界隈で有名な教育系著者です。このスキルは 1 問ずつだけ聞き、1 つの計画を根こそぎ掘り、あなたと Agent が各分岐で合意するまで続けます。(この記事で使った 1 つ目のスキルです。)

原文 · 追及スキルを重ねる
/plan /grill-me Build a date picker web component. I want the user to be able to zoom in and out of years, months, and days.
/plan /grill-me 日付ピッカーの Web コンポーネントを作る。年・月・日のあいだをズームイン/アウトできるようにしたい。
第 5 ステップ

第 5 ステップ:計画を承認し、Autopilot に走らせ切る

計画が出ると、GitHub Copilot はだいたい、Autopilot へ切り替えて実装するか聞いてきます。

計画サマリーと承認画面
計画サマリーは 6 項目。「フレームワーク非依存のコンポーネントを作る」から「ナビ・選択・フォーム・キーボード・レスポンシブ・モーションの全状態をデモページで検証する」まで。下に 2 選択肢:承認して autopilot で実装(推奨)、計画モードを抜けて自分で指示する。画像は GitHub ブログ原文より。

Autopilot は組み込みのループです。「やると言ったことを本当にやり切ったか」を確認するやり方で、モデルを推し進めます。ここでは計画の各項目です。

この段階で Copilot は自動的にオーケストレーター(英語では orchestrator、編成役)になります。コードベースのファイルを読む必要があれば「Explore」サブエージェントを小さなモデルで派遣し、動作が複雑そうなら「General Purpose」サブエージェントを大きなモデルで派遣しがちです。細かく制御したければ、カスタム Agent とカスタム指示でもできます。何もしなくても、複数サブエージェントと複数モデルの協調の恩恵は受けられます——その存在を知らなくても。

Autopilot が止まるタイミング

autopilot が止まるのは 4 つ。タスク完了と判断したとき、行き詰まったとき、Ctrl+C で止めたとき、設定した最大継続回数に達したとき。最後は --max-autopilot-continues で設定します。無限ループに落ちるのを防ぎ、スクリプトで無人実行するときは特に必須です。事故のとき傍にいないからです。

もう 1 つ、安全設計があります。前段とこの段がセットである理由でもあります。autopilot モードでは、明示的に全権限を与えない限り、承認が必要な動作は一切できません。権限が足りなければ自動拒否の連続になり、仕事は終わりません。

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第 6 ステップ

第 6 ステップ:人がレビュー。「だいたい動く」は拒否する

この段がいちばん爽快です。AI が何を作ったか、ようやく目で見ます。

ただし、欲しかったものぴったりであることは少ない。それが普通です。モデルは心を読めませんし、間違えます。本当に欲しい形になるまで、擦り合わせが要ります。コードでも UI でも、この段の品質はあなたの審美眼が決めます。

日付ピッカー初版:12 個の年の枠
初版の年ビュー。上部に「12 YEARS」、各年は枠に入り、下に 1〜12 の小番号。この 2 点が、次に彼が消す対象。画像は GitHub ブログ原文より。

彼が一目で挙げた 4 点:

その場で列挙した 4 点
  • アニメーションが不揃い
  • 選択済み日付にホバーすると文字が読めない(コントラスト不足)
  • 上部の「12 YEARS」は不要
  • 「Today」を押しても、月ビューや年ビューにいると当日へ飛ばない
リストには入れなかった 1 点
  • このデザインはあまり好きではない。いかにも AI っぽい——実際そうだから

彼が使っているのは自作 CSS フレームワーク Postrboard(デザインシステム。40 超のコンポーネント)。スキルとして Agent に渡し、スキル内で CSS の場所と使い方を指します。彼の枠に限らず、好きな CSS フレームワークなら何でも構いません。モデルにデザインの指針を少し渡すと効果が大きく、多くの場合 CSS フレームワーク 1 つで足ります。(この記事で使った 2 つ目のスキルです。)

その後、彼が投げた一文は、一字一句こうです。

原文 · 改稿指示、一字一句そのまま
ok - we don't need a landing page here - just the component, output and settings panel in a minimal setting. Use the /postboard skill for the design and colors.

For the date picker, when I click on the day, it tries to zoom in, but can't because there is nothing to zoom to. There should be no zoom there.

It doesn't need to say "Zoom Out" at the top

When I mouse over a month or year that contains the selected day, I cannot read the hover text.

When I click "Today" it should take me to that day view, even if I'm on the month or the year.

The months don't need numbers under them and they don't need to be in boxes

Same goes for years. And it doesn't need to say "12 years" at the top."
うん、ここにランディングはいらない。コンポーネント、出力、設定パネルだけで、最小限の配置に。デザインと色は /postboard スキルを。/ 日付ピッカーは、日をクリックするとズームしようとするが、下にズーム先がない。そこはズーム不要。/ 上部の「Zoom Out」も不要。/ 選択日を含む月や年にマウスを載せると、ホバー文字が読めない。/ 「Today」は、月や年にいても当日ビューへ連れていくべき。/ 月の下に番号は要らないし、枠も要らない。/ 年も同じ。上部の「12 years」も不要。

(原文ではフレームワーク名を /postboard と書いて r が 1 つ足りません。正式名は Postrboard です。)

考えすぎないこと。小さな不具合を直すときは、そのままモデルに話せばいい。文脈があれば、それがプロンプトです。

Notice how conversational this is. Don't overthink it.
本人の言葉

「だいたい動く」AI 出力を受け入れないこと。品質を求め、しかも厳しく。この部分の責任はまだあなた側にあります。何が良くて何が良くないかを見分けられること自体が、あなたが持ち込む価値です。手触りと創造性を、AI が人から奪うことはありません。

日付ピッカー最終版:左にコンポーネント、右に設定パネル
改修後:左はコンポーネント本体のみ、右は即時反映の設定パネル。ビュー階層、選択可能範囲、無効にする曜日もその場で調整可能。枠と番号は消えた。画像は GitHub ブログ原文より。
第 7 ステップ · コアの仕組み

第 7 ステップ:別会社のモデルに粗を探させる

納得いくまで直したら、もう一度 Rubber Duck review(ラバーダックレビュー)を依頼します。特別な書式は要りません。口語の一文で呼べます。

原文 · ラバーダックレビューを 1 回
Perform a rubber duck review on this date picker component implementation
この日付ピッカーコンポーネント実装に、ラバーダックレビューをかけて。

仕組みはこうです。GitHub Copilot は今のセッションモデルと別ファミリのモデルを探しに行き、実務上は別会社のモデルに差し替えます。著者は GPT-5.6 Terra を使っていたので、Claude Sonnet がレビューに入りました。理屈は素朴です。モデルごとに学習データが違い、盲点も違う。同じモデルが自分を見ると、同じ穴を抜けがちです。

RUBBER DUCK · 別系列がレビュー セッション GPT-5.6 Terra レビュー側 Claude Sonnet 案とコードを渡す · 読み取りのみ 意見は 3 段階 ブロッカー 直さないと完了しない 非ブロッカー 直すべきだが、動く 提案 優先度低だが有用
意見は重大度で 3 段階:ブロッカー、非ブロッカー、提案。主モデルへ返る。仕組みは GitHub 公式ドキュメントに基づく本サイト作図。

ラバーダックは見るだけ。粗探しにも境界がある

ラバーダックは組み込みの Agent で、読み取り専用、ファイルは変えません。意見を出すだけ。直すかは主 Agent とあなたが決めます。意見は 3 段階。ブロッカー(直さないと完了しない)、非ブロッカー(直すべきだが、動かないわけではない)、提案(優先度は低いが本当に有用)。書式、命名、コメント文法など、実害のない指摘はしないよう明示されています。問題がなければ「なし」と明言します。

最後専用でもありません。プロトタイプも計画も見られます。その段で第 2 の AI の意見が欲しいかどうか次第です。

いちばん効くタイミングは計画が終わり、コードをまだ書いていない瞬間。方向転換がいちばん安い。ほかに 3 つ。途中で盲点を洗う、テストを書いたあとでカバレッジを確かめる、失敗が続くときに頭を切り替えて分析する(同じ発想で何度も試さない)。小さな変更ではだいたいスキップし、邪魔をしません。

手動でいつでも呼べます。/rubber-duck まだ足りない境界ケースは? の一文で足ります。

名前の由来

rubber ducking はソフトウェア業界の古い手法です。コードや思考を、動かない物——伝統的にはゴムのアヒル——に向かって話します。「口に出す」だけで、自分で穴に気づくことがよくあります。違うのは、このアヒルは口答えすること。返ってくる意見はそのまま直せます。

さらに厳しく:2 モデルに互いを磨かせる

ラバーダックと Autopilot は、1 本のループにつなげられます。

原文 · 2 モデルが合意するまで相互レビュー
/autopilot rubber duck this date picker implementation. When you have the result, review it carefully and make any necessary adjustments. Repeat the rubber duck review until both you and the reviewing model agree that the only items that remain have diminishing returns.
/autopilot この日付ピッカー実装をラバーダックレビュー。結果を受け取ったら慎重に見直し、必要な調整を全部。あなたとレビュー側モデルの双方が「残りは収穫逓減だけ」と合意するまで繰り返せ。

代償はトークン消費の増加です。彼の言い方では、2 モデルに交互に叩かせてコードを硬くすること。未来の自分が落とし穴にハマる時間を買っている、という感覚です。

第 8 ステップ

第 8 ステップ:コミット。話題が変わったら新セッション

終わったらコミットするか、同じ変更の中に次の機能を足します。セッション管理についての助言がもう 1 つ。次の仕事がこれと無関係なら、新セッションを開く。セッションはテーマ単位に分ける。話がそれ切ったら、だいたい切り替えどきです。

彼が仕上げた成果物です。年 → 月 → 日と段階ズームし、左のコンポーネントと右の設定パネルがリアルタイム連動します。

年をクリックして月へ、月をクリックして日へ。戻るはその逆。この動きは静止画では伝わりません。動画は GitHub ブログ原文より。

彼自身、この例は少し作為的だと言います。それでも一瞬立ち止まる価値はあります。日付ピッカーは、かつてフロントエンドでいちばん手強い仕事の 1 つでした。経験者に聞けばすぐわかります。

締め

「スキルは不要」と言いながら、自分で 2 つ入れた

記事の冒頭は「今 AI に圧倒されているなら、あなたは一人じゃない」から始まり、毎日タイムラインを埋める新ツール、新 MCP、新スキル、新ワークフロー、そして必ずセットになる「見て!この変なプロンプト 1 本で AI を完全に理解した」を並べます。彼の返事は一言です。

……信じないね。

I…don't believe you.

毎日 AI で仕事をして出た結論は、足さないほど理解が深く、効率も上がるということ。どんなプラグインを入れるか、どんなルールを書くか、Agent をどうだまして余分に働かせるか——面白いけれど、彼から見れば小技に近い。本当に効率を一段上げたのは、このハーネスをどう使い、どれだけ理解しているかでした。

今の市場に溢れる粗製乱造についても一言あります。Agent にスキルを 1 つ生成させれば、文句なく何かは作ってきます。それが使えるかは別問題。しかもそういうものが、各種スキル市場や MCP 市場にすぐ出せます。

本人の線引き

断言し切ってはいません。明確に書いています。あとで複雑なワークフローを定義し、チーム向けに自動化するなら、スキル、MCP、カスタム Agent はもちろん重要になる——「実際、この記事でもいくつか使った!」と。言いたいことは 1 つだけ。それなしでも、AI は十分うまく使える。

最後のまとめは 3 層です。

第一に、大半の人にはシンプルな流れで足ります。シンプルには副次効果もあります。複数の仕事を同時に回すとき、どの Agent がどんな状態で、自分が前回どこまでやったかが把握しやすい。コンテキストウィンドウは有限で、モデルが一度に覚えられる量も有限です。

第二に、AI 周りで遊べるものに上限はありません。MCP、スキル、指示、カスタム Agent、ワークフロー、ループ、Agent に Agent を促させ、仮想開発チームを丸ごと組む——全部ありです。

第三に、最後に置いた一文:

いま誰も、自分が何をしているのか本当にはわかっていない。みんな手探りで作っている。今日の魔法の呪文の多くは、明日の反面教師になる。

nobody really knows what they are doing right now.

振り返ると、原文タイトル末尾の mostly には重みがあります。記事の最初から最後まで、彼はスキルを 2 つ使いました。Matt Pocock の grill-me で計画を徹底的に問い、自作の Postrboard でデザインのトーンを決める。冒頭の免責にも、本人が認めています。

だから「ハーネスだけで足りる」の本当の意味はこうです。毎日湧く新ものに追い回されなくていい。手元のツールの既存機能だけで、仕事は十分うまくできる。本当に自動化が要る複雑な流れに当たってから、そのとき足せばいい。

逆側の答え
Anthropic 社内対談:ハーネスの外側フローは、いま解体されつつある
モデルが自分で手順を考えられるほど強くなると、外側の編成はまだ要るのか。向こうは逆の答えを出しています。
✅ 8 ステップ実践チェックリスト
文中の 7 本のプロンプトは、彼が実際に打ち込んだ原文です。UI 修正の口語の連打も含みます。自分の要件に差し替えてそのまま使えます。プロンプト技巧は要りません。
出典
The harness is all you need (mostly)Burke Holland · The GitHub Blog·原文·2026-07-27
本サイト注記
スクリーンショット 6 枚と末尾の動画はいずれも GitHub ブログ原文より。権限 4 段階の対照表、Autopilot の停止条件、ラバーダックの 3 段階意見と登場タイミングは GitHub 公式ドキュメント由来で、原文では展開されていません。ファイル削除事故の経緯と時間は Matt Shumer の 2026 年 7 月 10 日のツイートと関連報道より。原文はリンク 1 本のみ。GPT-5.6 の 3 型の位置づけ、Postrboard のコンポーネント数、grill-me スキルの動き、計画モードの 7 問が「何を決めているか」の解説は本サイトの補足で、原文は問いそのものの列挙のみ。ハーネス構造図とラバーダックフロー図は本サイトの作図。Autopilot のスクリーンショットは原文キャプションが「計画を実装中」だが、画面は承認 UI で止まっており、本サイトは画面に合わせて記述。
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