ラテンアメリカ最大級の中古車プラットフォーム「Kavak」、AIで会社ごと再構築:顧客対応の96%をAIエージェントが担当
- 多くの企業は「どうやってAIを組織に組み込むか」と問う。この会社は「いまゼロから作るなら、どんな会社になるのか」と問うた。
- 顧客対応の96%、取引の95%をエージェントが完了。1日あたり10万〜20万のエージェントを稼働。
- 2年間稼働し、収益を生んでいたアーキテクチャを、新モデルの登場を機に全廃して再構築した。
「小手先の導入」を拒否、組織ごと再構築へ
現在、多くの企業がAIを導入する方法はこうです。組織構造を一切変えず、チームにChatGPTやClaudeのアカウントを配り、効率が自然に向上するのを待つ。
この方法の結果は、たいてい決まっています。効率は上がらず、顧客の問題は何も解決されず、何も変わりません。理由は明白です。会社のプロセスもインターフェースも評価方法も、すべて「人間が動くこと」を前提に設計されています。そこへ新しいツールを差し込んでも、隙間で少し役立つ程度が限界です。
Kavakは問いを変えました。仮に今が2035年で、AIがその時点の水準まで進化していたら、私たちはこの会社をゼロからどう作るだろうか?
この考え方で導き出された会社は、当時すでに出来上がっていた会社とはほとんど別物でした。プロセスが違い、チームの分業が違い、顧客が入り口から支払いまでに通る道も違います。そこで彼らは珍しい決断をしました。既存の会社を少しずつ改良するのではなく、描いた未来図に合わせて、会社を作り直すことにしたのです。
どうやってAIを既存組織に組み込むか?
→ 構造は変えず、ツールを配り、効率を待つ
ゼロから今この会社を作るなら、どんな形になるか?
→ その答えに合わせて、今の会社を解体して再構築
先にKavakとは何かを説明します
Kavakはラテンアメリカ最大級の中古車取引プラットフォームで、2016年創業のメキシコ初ユニコーンです。評価額は2020年10月に11.5億ドルを超え、2021年には87億ドルのピークに到達。ラテンアメリカで最も価値のあるスタートアップになりました。現在はメキシコ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、トルコ、アラブ首長国連邦で展開しています。
ただし、単なる車販売サイトではありません。当時のラテンアメリカには既存インフラがなかったため、金融・物流・車両履歴(米国のCarfaxに相当)をすべて自社で一から構築しました。いわば垂直統合型の企業です。この点が後で効いてきます。データもプロセスも自社で握っているからこそ、他社にはできないことができるからです。
6つの結論と、丸ごと使える5つの資料
先に、今回の内容で最も価値のある部分をまとめます。結論は6つです。
丸ごとコピーできる5つの資料
以下で順に詳しく説明します。順序には意味があります。最初は基盤の作り方、後半はそれを業務と組織に展開したときに何が起こるか、という流れです。
3つの根本的決定:API書き直し、超人基準、評価指標の変更
すべての施策は、3つの決定から導き出されています。この3つの決定は、いずれも技術選定の話ではなく、「会社をどう変えるか」という問いへの答えです。
一つ目:会社を設計し直す。ツール配布で止まらない
具体的には、エンジニアリングとしてAPIとシステムの大部分を書き直し、エージェントがそれらを使ってタスクを完了できるようにしました。なぜ書き直しが必要だったのか。人間なら我慢できる使いにくいインターフェースでも、エージェントには使えないのです。人間の推測やクリック操作、3つのシステム間でのコピー&ペーストが必要なプロセスは、エージェントには実行できません。インターフェースを変えなければ、エージェントはただ傍観するだけになってしまいます。
さらに、エージェントを育てるためのデータとフィードバックループの生成も始めました。どのように育てるのか。実際の顧客の前に放ち、データを回収し、評価結果を得て、トレーニングする。その繰り返しです。
二つ目:「超人エージェント」の実現を目指す
ここで言う「超人」には具体的な基準があります。成約率、顧客生涯価値(LTV)、顧客体験といった、本当に重要な指標において、エージェントがこれまで会社が雇った中で最高の人間を上回ること。しかも、簡単なタスクではなく、最も難しい問題に挑ませます。
三つ目:取引型企業から関係型企業へ
Kavakは元々、取引型の企業でした。評価指標は、何台買ったか、何台売ったか、ブレーキパッドをいくつ仕入れるか、といったものでした。これを関係型企業に変えました。データベースには1000万人の顧客がおり、その大半に専用のエージェントを割り当て、任務はその顧客の生涯価値を最大化することです。
この変更がKavakで成立した理由は、2つの計算によるものです。第一に、金額です。取り扱うのは車や高額な個人ローンといった高単価商品です。この1000万人のうち、たった1%を活性化するだけで、数億ドル規模のビジネスになります。第二に、業界の特性です。中古車購入において、顧客はまず信頼を築かなければお金を払いません。そして信頼を築く唯一の方法は、顧客を理解し、長期的に関係を育むこと。これはまさにエージェントが得意とする分野です。