ラテンアメリカ最大級の中古車プラットフォーム「Kavak」、AIで会社ごと再構築:顧客対応の96%をAIエージェントが担当
- 多くの企業は「どうやってAIを組織に組み込むか」と問う。この会社は「いまゼロから作るなら、どんな会社になるのか」と問うた。
- 顧客対応の96%、取引の95%をエージェントが完了。1日あたり10万〜20万のエージェントを稼働。
- 2年間稼働し、収益を生んでいたアーキテクチャを、新モデルの登場を機に全廃して再構築した。
「小手先の導入」を拒否、組織ごと再構築へ
現在、多くの企業がAIを導入する方法はこうです。組織構造を一切変えず、チームにChatGPTやClaudeのアカウントを配り、効率が自然に向上するのを待つ。
この方法の結果は、たいてい決まっています。効率は上がらず、顧客の問題は何も解決されず、何も変わりません。理由は明白です。会社のプロセスもインターフェースも評価方法も、すべて「人間が動くこと」を前提に設計されています。そこへ新しいツールを差し込んでも、隙間で少し役立つ程度が限界です。
Kavakは問いを変えました。仮に今が2035年で、AIがその時点の水準まで進化していたら、私たちはこの会社をゼロからどう作るだろうか?
この考え方で導き出された会社は、当時すでに出来上がっていた会社とはほとんど別物でした。プロセスが違い、チームの分業が違い、顧客が入り口から支払いまでに通る道も違います。そこで彼らは珍しい決断をしました。既存の会社を少しずつ改良するのではなく、描いた未来図に合わせて、会社を作り直すことにしたのです。
どうやってAIを既存組織に組み込むか?
→ 構造は変えず、ツールを配り、効率を待つ
ゼロから今この会社を作るなら、どんな形になるか?
→ その答えに合わせて、今の会社を解体して再構築
先にKavakとは何かを説明します
Kavakはラテンアメリカ最大級の中古車取引プラットフォームで、2016年創業のメキシコ初ユニコーンです。評価額は2020年10月に11.5億ドルを超え、2021年には87億ドルのピークに到達。ラテンアメリカで最も価値のあるスタートアップになりました。現在はメキシコ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、トルコ、アラブ首長国連邦で展開しています。
ただし、単なる車販売サイトではありません。当時のラテンアメリカには既存インフラがなかったため、金融・物流・車両履歴(米国のCarfaxに相当)をすべて自社で一から構築しました。いわば垂直統合型の企業です。この点が後で効いてきます。データもプロセスも自社で握っているからこそ、他社にはできないことができるからです。
6つの結論と、丸ごと使える5つの資料
先に、今回の内容で最も価値のある部分をまとめます。結論は6つです。
丸ごとコピーできる5つの資料
以下で順に詳しく説明します。順序には意味があります。最初は基盤の作り方、後半はそれを業務と組織に展開したときに何が起こるか、という流れです。
3つの根本的決定:API書き直し、超人基準、評価指標の変更
すべての施策は、3つの決定から導き出されています。この3つの決定は、いずれも技術選定の話ではなく、「会社をどう変えるか」という問いへの答えです。
一つ目:会社を設計し直す。ツール配布で止まらない
具体的には、エンジニアリングとしてAPIとシステムの大部分を書き直し、エージェントがそれらを使ってタスクを完了できるようにしました。なぜ書き直しが必要だったのか。人間なら我慢できる使いにくいインターフェースでも、エージェントには使えないのです。人間の推測やクリック操作、3つのシステム間でのコピー&ペーストが必要なプロセスは、エージェントには実行できません。インターフェースを変えなければ、エージェントはただ傍観するだけになってしまいます。
さらに、エージェントを育てるためのデータとフィードバックループの生成も始めました。どのように育てるのか。実際の顧客の前に放ち、データを回収し、評価結果を得て、トレーニングする。その繰り返しです。
二つ目:「超人エージェント」の実現を目指す
ここで言う「超人」には具体的な基準があります。成約率、顧客生涯価値(LTV)、顧客体験といった、本当に重要な指標において、エージェントがこれまで会社が雇った中で最高の人間を上回ること。しかも、簡単なタスクではなく、最も難しい問題に挑ませます。
三つ目:取引型企業から関係型企業へ
Kavakは元々、取引型の企業でした。評価指標は、何台買ったか、何台売ったか、ブレーキパッドをいくつ仕入れるか、といったものでした。これを関係型企業に変えました。データベースには1000万人の顧客がおり、その大半に専用のエージェントを割り当て、任務はその顧客の生涯価値を最大化することです。
この変更がKavakで成立した理由は、2つの計算によるものです。第一に、金額です。取り扱うのは車や高額な個人ローンといった高単価商品です。この1000万人のうち、たった1%を活性化するだけで、数億ドル規模のビジネスになります。第二に、業界の特性です。中古車購入において、顧客はまず信頼を築かなければお金を払いません。そして信頼を築く唯一の方法は、顧客を理解し、長期的に関係を育むこと。これはまさにエージェントが得意とする分野です。
| 廃止した旧来の方法 | 導入した新しい方法 |
|---|---|
| チームにAIアカウントを配布し、構造は変えないツールが隙間で少し役に立つ程度 | エージェントが動けるよう、APIとシステムを書き直す |
| AIに簡単なタスクを任せるまずは低リスクな分野から試す | 最も難しい問題に直接挑ませる。基準は最高の人間を超えること |
| 売買した台数で評価取引が終われば関係も終了 | 1000万人の顧客に1人ずつエージェントを割り当て、生涯価値で評価 |
1顧客に1エージェント、それぞれ専用の仮想マシンを保有
36分31秒のインタビュー全文。日本語・英語の字幕付き。日本語訳は当サイト、英語は原音の文字起こしです。動画の著作権はa16zに帰属します。公式版はこちら。
これは今回の内容で最も技術的で、現在の主流のやり方とは逆を行く部分です。市場の多くのチームはまだ「複数の専門エージェントによるマルチエージェントシステム」を構築しています。Kavakが賭けたのは別の道。長期稼働し、明確な目標を持つエージェント(long-running Agent)です。
顧客が一人入ってくると、システムはその顧客専用にエージェントを1体生成し、専用の仮想マシンを与えます。このエージェントは、その顧客とKavakとの長年にわたるすべてのやり取りを記憶しています。ウェブサイトで何を見ていたか、2年前にかけた電話の内容もすべて。自分で戦略を立て、長期的な目標を設定し、顧客を満足させ、適切なタイミングで会社の各製品ラインを提案します。
まるで、各顧客に専属の担当者がつくようなイメージです。ランダムに割り当てられたオペレーターは、前回の会話を覚えていません。一方、担当者は2年前の電話の内容を覚えています。違いは、記憶と目標が誰に紐づいているかです。
なぜ2年間稼働したアーキテクチャを壊して作り直したのか
ただ、最初からこのアーキテクチャだったわけではありません。
2025年12月時点で、Kavakでは数万のエージェントが稼働していました。アーキテクチャは「マルチエージェントシステム+グラフ+オーケストレーション層」。複雑なタスクをステップに分解し、何を先にやるか、どのモデルを呼ぶかを指示するスケジューラー層です。そして、それは機能していました。収益をもたらし、成長ももたらしました。
そこにOpus 4.5が登場。彼らの判断は、このパラダイムは間違っている、というものでした。
理由は因果関係にあります。オーケストレーション層が存在する前提は、単一のモデルが十分に賢くなく、人間が代わりに計画を立てる必要がある、というものです。モデル自体の知能が一定レベルに達すると、外側にあるグラフやマルチエージェントのグリッド、ハーネスは「足場」から「天井」に変わります。より良い進み方ができるのに、決められた手順に従うことしかできなくなってしまうのです。
新人社員に渡す手順書のようなものです。新人が手順書通りに仕事をすれば、速くて正確。手順書は良いものです。しかし、その人が熟練者になった時、手順書は逆に制約になります。もっと良い方法を知っているのに、プロセスが手順書通りにしか許さないからです。
そこで彼らは、2年間稼働し、収益を生んでいたものをすべて廃止し、先ほどのアーキテクチャに置き換えました。仮想マシン+エージェント+記憶+評価+全社ツールとAPIにアクセスできるコマンドライン+長期目標。このアーキテクチャの利点は、毎月登場する新しいモデルを柔軟に取り込めることです。モデルが強くなれば、システムも強くなります。旧アーキテクチャは逆で、モデルが強くなるほど、制約される部分が増えていました。
数万のエージェント+グラフ+オーケストレーション層。
人間がモデルの各ステップを計画。
結果:収益、成長、稼働実績あり。
エージェント1体+仮想マシン+長期目標1つ。
進め方はモデル自身が決定。
賭け:来月のモデルがさらに強力になる。
評価(Evals)は開発と同等に重要
ここまで大胆に進められるのは、評価があるからです。速く走るには、ブレーキが必要です。アクセルを強く踏めるのは、ブレーキが信頼できるからです。
多くの企業はこれを逆に考えています。良いブレーキがないから、ゆっくり走るしかない、と。Kavakは逆です。どれだけ速く走れるかは、評価の質にかかっています。
具体的な規律は、そのまま引用できる言葉です。評価にかけるエンジニアの時間、トークン、コストは、エージェント開発にかけるそれとほぼ同等にする。これは「評価を重視しよう」といった精神論よりはるかに実行可能です。予算比率として明確だからです。
何を測るか?この3つだけ
常に最優先されるのはビジネス成果です。顧客は満足しているか、車を買うか、ローンが通るか、下取りに出してもらえるか。最初のチェック項目はこれです。成約したかどうか。
多くの企業はここでつまずきます。通話数や通話時間といった表面的な指標を測ります。多少の情報にはなりますが、問題は解決しません。本当に問うべきは、次の3つだけです。
| 問い | 何をチェックしているのか |
|---|---|
| この顧客は成約したか | エージェントが存在意義を果たしたか |
| 顧客に価値を提供できたか | 無理やり成約に持ち込んでいないか |
| しばらく経ってまた戻ってくるか | 関係性を消耗させていないか |
この3つの評価が機能し始めたら、あとはエージェントのアーキテクチャを最適化したり、スキルを追加したりして、規模を数百万顧客に拡大していくだけです。
AIセールス、人間チームの戦績を逆転
Kavakは、カスタマーサポート用のエージェントを作ったことは一度もありません。最初に顧客の前に出したのは、営業エージェント。会社で最も難しく、最も価値のあるポジションです。
なぜラテンアメリカでの車販売はこんなに難しいのか
顧客は約2万台の在庫から1台を選び、融資手続きを進め、保険と延長保証に加入します。さらに、自分の旧車を下取りに出したい場合がほとんどなので、旧車の査定も必要です。2020年、2021年のKavakはこうしていました。15の異なる分野にそれぞれ精通する必要があったため、15のチーム、15人の専門家を配置したのです。顧客はまず融資の専門家、次に車選びのコンサルタント、下取りの専門家、保険の専門家…と渡り歩き、ようやく1台購入できる状態になりました。
Kavakのアプローチは2段階です。まず、エージェントに各分野でその専門家を超えさせ、次にそれらを1つの「スーパー専門家」に統合。保険も融資も車選びも査定も分かるエージェントを、直接顧客の前に置きました。
なぜエージェントはより良く売れるのか
理由として挙げられている因果関係は5つあります。専門家であること、無限の忍耐力、顧客の全履歴を把握していること、長期的な視点で行動できること、そして疲れないこと。しかし最も興味深いのは6つ目です。
あるエージェントが犯した過ちを、翌日には他の20万のエージェント全員が学ぶ。これは人間の営業チームには構造的に不可能なことです。研修は一度に一チームずつ、経験は一人ずつ伝承していく。しかも、伝える間に内容が変わっていってしまうのです。
もう1つ、特筆すべき能力があります。それは前述の垂直統合から生まれたものです。顧客が車のローンを返済できなくなった場合、車を返却してより安い車に乗り換えれば、月々の支払いが下がり、経済的に破綻せずに済みます。これは普通のローン機関にはできません。車を保有していないため、回収するしかないからです。
驚嘆の「AI CEO」実験
さらに上の階層へ。管理職はどうか、CEOのポジションはどうか。彼らの見立ては「おそらく可能。この改善ペースなら、2035年には確実に可能」。そして、今すぐ試すことにしました。
方法は、メキシコの1都市「Cuernavaca(クエルナバカ)」を選び、エージェントを同じハーネスに組み込み、この都市のCEOとして起用する、というものです。エージェントは学習を始め、意思決定を行い、自身の決定を評価します。
収録時点で、この実験はわずか6週間しか行われていません。最初の1ヶ月の目標は、この都市の利益を2倍にすることでしたが、達成できず、1.5倍(利益+50%)にとどまりました。
この数字を見る際は、3つの条件をセットで考える必要があります。6週間、1都市、1ヶ月。サンプルは極めて小さく、期間も短く、対照群もありません。
具体的に何をしているのか
このエージェントの働き方は、フィールズ賞級の賢い人物のようです。すべての数字、すべての顧客をくまなく確認し、予測を立て、計画を実行するために、日々実行すべきあらゆることを細かく管理します。
具体的なところまで踏み込むと、Cuernavacaの現場の作業員に直接メッセージを送り、その日の計画を伝え、進捗を音声で報告するよう求めます。
その結果、複数の指標が同時に改善しました。顧客満足度の上昇、在庫品質の向上、回転率の改善、金融サービス浸透率の向上です。
誰もが、CEOはAIが最後に奪う仕事だと思っていた。実際はそうではなかった。
The Self-Improving Company | Kavak's AI Playbook · a16z
整備士のAIアシスタントはどう使われているか
とはいえ、まだ人間がやっている仕事もあります。今も採用とトレーニングを続けているのは、すべて物理世界に関わる仕事です。自動車整備士はその代表格で、高度な手先の器用さと感覚的な判断が必要で、代替が非常に困難です。
そのため、ここでのエージェントの役割は相棒(sidekick)です。使っているのは同じハーネスです。彼らはこのエージェントを「El Mike(エル・マイク)」と名付けました。整備士に点検方法を伝え、ヒントを与え、手本を示します。
映画『レミーのおいしいレストラン』に出てくる、本当に料理ができるネズミのようなものです。料理人に取って代わるのではなく、料理人の頭の上に乗って一緒に料理を作ります。手は人間のもの、判断は二人で下す。
結果として、点検の質が大幅に向上し、点検・修理が速くなり、コストも削減されました。そして最も重要なのは、納車される車の品質が向上したことで、顧客満足度がさらに上昇しました。
つまり、こうした仕事はいまだに採用・教育を続け、AIはそれを増幅するツールとして隣に置かれているのです。
全員AI化:経営陣から整備士まで
このシステムにふさわしい人材はどこから来るのか。答えは、自前で育てる、です。
KavakにはJedi Academy(ジェダイ・アカデミー)という社内トレーニングプログラムがあります。CEOからAIエンジニア、自動車整備士まで、全員が受講します。カリキュラムはMaza氏が自ら設計・指導し、常にアップデートが必要です。変化が速すぎて、こうした内容をスタンフォードに人を送って学ばせることはできません。まったく新しい分野だからです。
修了条件は、本番で動くものを納品することです。6週間後、受講者はその時点の最高水準に達したエージェントを本番環境にデプロイしなければなりません。整備士も、財務担当も、エンジニアも、全員が課題を提出しました。
全員がAIエンジニアになるわけではありません(実際になった人もいますが)。しかし、この新しいテクノロジーとどう協働するかは、全員が学びました。
社員に伝えているのは、引き返す道はない、ということだけです。会社はこの方向に進みます。エンジニアリングチーム、財務チーム、プロダクトチームがそれぞれどう変わるかは説明済みです。学んで新しい現実で働くスキルを身につけるか、去るかを選べます。結果としてカルチャーはむしろ強くなり、社員は本当に興奮しています。
組織の形も変わった
現在のKavakは、非常にフラットで、シニア層が厚く、権限が委譲されたチームです。チームを見ると、エンジニアリング、AI、オペレーションなどが混在しています。これらのチームは、エージェントを作るか、エージェントのために働くか、物理世界で顧客と向き合うかのいずれかです。
エージェントが壁にぶつかった時、人間が受け止める
そして、人間とエージェントの上下関係も、逆転しています。この部分は誤解されやすいところです。
まず、一般的な方法を見てみましょう。現在の大規模エージェントシステムにおける「human in the loop」は、通常こうです。エージェントが壁にぶつかり、行き詰まると、そのケースや顧客を二次対応の人間に転送します。そして、忘れます。
問題はここにあります。ループが閉じていないのです。この一件は人間が解決したかもしれません。しかし、システムは何のデータも得ていません。次に同じ壁にぶつかっても、エージェントはまた立ち往生します。
Kavakはこの方向を逆転させました。顧客を担当するエージェントは、すべてのAPI、すべてのスキル(人間や他のエージェントが作ったもの)にアクセスできます。壁にぶつかったり、何かをキャンセルしそうになったりした時、「助けが必要です」とAPIを呼び出します。そして、そのリクエストを受け止めるのは人間です。相手はエージェントでも、ソフトウェアの一部でもありません。
組織図に描くと、人間チームにエージェントが配属され、指示を出しているのはエージェント、という構図になります。この配置が解決しているのは、具体的な工学的問題です。ループが閉じない限り、エージェントを改善するためのデータは永遠に生まれない。
トークンを3段階に分けて投資対効果を測定
では、これらの投資の価値はどう判断すればいいのでしょうか。彼は、そのまま使える自己チェック用のフレームワークを提示しています。「年間数億ドルをトークンに費やしているが、一体何を得ているのか」という問いに答えるためのものです。
| 段階 | 使途 | 効果を計算できるか |
|---|---|---|
| 第3段階(最も価値が高い) | 組織の実際の業務を遂行するエージェント | すべてのトークンの効果を個別に計算できる |
| 第2段階 | エンジニアのコードベースでの成果 | 間接的に見積もり可能。見積もれたものは本番に導入 |
| 第1段階(多くの企業はここ) | 従業員が個々にClaude Code、ChatGPT、Copilotを使用 | 不明 |
Kavakは現在、第3段階に到達しています。これがさらに投資を続ける理由でもあります。各トークンの効果が分かれば、拡大の根拠が明確になります。賭けに頼る必要はありません。各トークンの効果が分かってこそ、拡大は賭けではなく、根拠のあるものになるのです。
今日、私はナレッジワーカーに投じるよりも、トークンにより多くのお金を投じている。
The Self-Improving Company | Kavak's AI Playbook · a16z
結論はこうです。明確なビジョンを持ち、費やしたトークンがそのビジョンへと導いているかを測定でき、そして絶えず反復すること。導入率自体は何も語りません。
学びたい企業のための2つの前提条件
第一に、トップダウンであること。単に「導入」を推進するだけでは、どこにも到達しません。従業員がボトムアップで何を作るべきかを決め、会社にとって本当に有効なものを作り出せるような、その種のセンスや戦略は生まれません。経営陣自身が使い、非常に明確な計画を持つこと。「会社が3〜5年後にどうなっているか」を示し、それに沿って構築し、非常に垂直にチームをその方向へ導くのです。
第二に、本当に重要なものを測定すること。つまり、前述の評価と、このトークンの3段階です。
自己改善すべきは、組織そのもの
これまでのすべての施策を結びつけると、ある逆転した考え方が浮かび上がります。
現在、再帰的自己改善(RSI)について語る人は皆、モデルがどうやって自分自身を強くしていくかを考えています。ここでの主張は、その対象を変えることです。
過去4000年、人類の経済的価値は「個人」ではなく、「組織」によって生み出されてきた。だからこそ、自己改善のループに入れるべきなのは、より多くの経済的価値を生み出せる「組織」なのです。
もしこのループが機能すれば、真に自己改善し、数日ごとに強くなる新モデルを次々と取り込める組織を手にしたことになります。得られる指数関数的成長は、知能だけでなく、その会社が生み出せる価値にかかっています。
なぜチャンスは大企業ではなく、新興企業にあるのか
ここで彼が持ち出すのは、シュンペーター(Joseph Schumpeter)の創造的破壊です。イノベーションが経済を揺さぶる方法は、既存企業が現状を維持している間に、新しい技術を持った新規参入者が彼らを打ち負かす、というものです。既存企業が自ら新しい技術を使いこなすことは、歴史的にほとんどありません。短期的には価値が破壊されますが、長期的にはすべての人にとってより良い結果になります。より効率的な新興企業が、より良い製品とサービスを提供するからです。
今回も同じことが言える理由。それは、AIを深く採用することが非常に難しいからです。大企業、特に上場企業のCEOが、「すべてをAIに賭ける。過去40年かけて築いたものをすべて破壊し、AIネイティブな会社として再構築する」と宣言する人が、どれだけいるでしょうか。彼らが「導入」している間に、新興企業はAIの強みを中心に直接成長することができるのです。
電力の時もそうだった
Kavakは社内でよく、電力の例を持ち出します。フォードの生産ラインに必要な技術は、1879年から1881年にかけてすでに開発されていました。エジソンは商業用電力供給を開始し、非常に効率的な発電機も作っていました。つまり、フォードの工場は、40年早く建設できたのです。技術はすべて揃っていました。
しかし、当時の人々が電力を採用した方法はこうでした。工場は以前と同じ4階建てで、動力伝達軸とベルトで動く構造のまま、石炭エンジンを電気モーターに交換しただけ。これでも確かに効果はあり、約6%の効率向上がありました。
本当にやるべきだったのは、工場を解体して平地に再建すること。ニューヨークの中心部ではなく、コネチカットやニュージャージーに。小型発電機と電力を中心に工場全体を再設計する。それが3倍の生産性向上をもたらし、20世紀のアメリカを支えました。
コンピューター時代にも同じことが繰り返され、そして今日また起こっています。人々は採用したいが、会社全体を再設計しようとはしない。だから表面的な採用に留まる。得られるのは6%や10%の向上であって、10倍ではないのです。言い換えれば、イノベーターのジレンマが再びやってきた。ただ今回は、産業規模で。
最後に、起業家への一言。今は史上初めて、誰もが世界最強のツールと知能を、ほぼ無料、あるいは月20ドルで使える時代です。だから、やりなさい。ただし、深く。指数関数的成長を仮定する必要すらありません。AIが線形の速度で良くなり続けると仮定して、その未来に向かって構築すればいいのです。
Kavak、会社ごと解体してエージェント中心に再構築
ラテンアメリカ最大級の中古車プラットフォーム。顧客対応の96%をエージェントが処理。図解で、同社がどう会社を壊して再構築したかを解説します。
↓ 一枚で完了 · 動く図あり
多くの企業はまず「どうAIを既存組織に組み込むか」を問う。Kavakは問いを変えました。仮に今が2035年で、AIがその水準まで進化していたら、ゼロからこの会社をどう作るか。その答えに合わせて、機能して収益を生んでいた会社を解体して再構築しました。
どうAIを既存組織に組み込むか?
構造は変えず、ツールを配り、効率を待つ。
ゼロから作るなら、この会社はどんな形か?
その答えに合わせて、今の会社を壊して再構築。
再構築後の数字はこちら:
主流は複数の専門エージェントを組み合わせたシステム。Kavakは逆です。顧客ごとに長期稼働するエージェントを個別生成し、専用の仮想マシン(その顧客専用に独立して動くコンピューター)を割り当てます。顧客の長年の履歴をすべて記憶し、戦略を自ら立て、長期目標を設定します。
このアーキテクチャの背後にある3つの決定:
- APIの書き直し:人間が我慢できる使いにくいIFは、エージェントには使えない。変えなければ、傍観するだけ。
- 超人基準:成約率、生涯価値、顧客体験で、会社が雇った最高の人材を超える。最も難しい問題に挑ませる。
- 評価指標の変更:売買台数から、1000万人の顧客に1人ずつエージェントを割り当て、生涯価値を目指す、へ。
このアーキテクチャは一度、全面的に作り直されている。2025年12月時点で、Kavakでは数万のエージェントが稼働していました。アーキテクチャはマルチエージェントシステム+オーケストレーション層(タスクを分解し、モデルの計画を支援するスケジューラー)。収益も成長もありました。Opus 4.5の登場後、このパラダイムは間違っていると判断。モデルが十分に賢くなれば、オーケストレーション層は「足場」から「天井」になる、というのがその理由です。
数万のエージェント+グラフ+オーケストレーション層。人間がモデルの各ステップを計画。
収益、成長、稼働実績あり。
エージェント1体+仮想マシン+長期目標1つ。進め方はモデル自身が決定。
賭け:来月のモデルがさらに強力になる。
営業はKavakが最初にエージェントに任せたポジションであり、会社で最も難しい仕事です。顧客は約2万台の在庫から選び、融資、保険、下取り査定も進めます。2020〜21年の方法は、15のタスクに15の専門家チームを配置。Kavakはエージェントに各タスクで専門家を超えさせ、それを1つの「スーパー専門家」に統合して顧客の前に置きました。
evalsで見るのはこの3つだけ。多くの企業が測る通話時間などは気にしない:
- この顧客は成約したか
- 顧客に価値を提供できたか
- しばらくしてまた戻ってくるか
さらに投資を続けるかどうか。Kavakはトークンを3段階で自己チェックします。第1段階は従業員が個々にチャットツールを使う状態で、効果は計算不能。多くの企業はここ。第2段階はエンジニアのコードベースでの成果で、間接的に見積もり可能。第3段階は業務を遂行するエージェントで、効果を個別に計算可能。Kavakはこの第3段階にいます。
会社に組み込む?
どんな形になる?
組み合わせるんでしょ?
収益・成長は達成済み
壊すの?
全廃、再構築
- × 通話数
- × 通話時間
成約したか?
15の専門家チーム
回らないといけない
数字の出所は?
投資家の a16z が3億ドルを出資したばかり