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ラテンアメリカ最大級の中古車プラットフォーム「Kavak」、AIで会社ごと再構築:顧客対応の96%をAIエージェントが担当

同社はAIを会社に「足す」のではなく、「ゼロから作るならどう作るか」という視点で会社を解体し、再構築しました。2年間稼働して収益を生んでいたアーキテクチャも、思い切って捨てました。
1分でわかる要点
  • 多くの企業は「どうやってAIを組織に組み込むか」と問う。この会社は「いまゼロから作るなら、どんな会社になるのか」と問うた。
  • 顧客対応の96%、取引の95%をエージェントが完了。1日あたり10万〜20万のエージェントを稼働。
  • 2年間稼働し、収益を生んでいたアーキテクチャを、新モデルの登場を機に全廃して再構築した。
⚑ 内容はa16z公式ポッドキャストからの引用。ゲストはKavakのチーフ・プロダクト&AIオフィサー、Alejandro Maza氏。先に前提を共有します。a16zは2026年2月、Kavakに対して3億ドルの資金調達ラウンドを主導しました。番組最後の免責事項にも、関連会社が当該企業に出資している可能性がある旨の記載があります。また、以下の業績数値はすべて企業側の主張であり、第三者による検証はされていません。
起点

「小手先の導入」を拒否、組織ごと再構築へ

現在、多くの企業がAIを導入する方法はこうです。組織構造を一切変えず、チームにChatGPTやClaudeのアカウントを配り、効率が自然に向上するのを待つ。

この方法の結果は、たいてい決まっています。効率は上がらず、顧客の問題は何も解決されず、何も変わりません。理由は明白です。会社のプロセスもインターフェースも評価方法も、すべて「人間が動くこと」を前提に設計されています。そこへ新しいツールを差し込んでも、隙間で少し役立つ程度が限界です。

Kavakは問いを変えました。仮に今が2035年で、AIがその時点の水準まで進化していたら、私たちはこの会社をゼロからどう作るだろうか?

この考え方で導き出された会社は、当時すでに出来上がっていた会社とはほとんど別物でした。プロセスが違い、チームの分業が違い、顧客が入り口から支払いまでに通る道も違います。そこで彼らは珍しい決断をしました。既存の会社を少しずつ改良するのではなく、描いた未来図に合わせて、会社を作り直すことにしたのです。

多くの企業の問い

どうやってAIを既存組織に組み込むか?

→ 構造は変えず、ツールを配り、効率を待つ

Kavakの問い

ゼロから今この会社を作るなら、どんな形になるか?

→ その答えに合わせて、今の会社を解体して再構築

先にKavakとは何かを説明します

Kavakはラテンアメリカ最大級の中古車取引プラットフォームで、2016年創業のメキシコ初ユニコーンです。評価額は2020年10月に11.5億ドルを超え、2021年には87億ドルのピークに到達。ラテンアメリカで最も価値のあるスタートアップになりました。現在はメキシコ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、トルコ、アラブ首長国連邦で展開しています。

ただし、単なる車販売サイトではありません。当時のラテンアメリカには既存インフラがなかったため、金融・物流・車両履歴(米国のCarfaxに相当)をすべて自社で一から構築しました。いわば垂直統合型の企業です。この点が後で効いてきます。データもプロセスも自社で握っているからこそ、他社にはできないことができるからです。

96%
エージェントが処理する顧客対応の割合(人間を介さない)
95%
エージェントだけで完結する取引の割合(納車時には人が鍵を渡します)
10万〜20万
1日あたりに起動されるエージェント数。それぞれが専用の仮想マシンを持つ
インタビュー全文の動画版(36分半)。出典:a16z公式チャンネル
全体像

6つの結論と、丸ごと使える5つの資料

先に、今回の内容で最も価値のある部分をまとめます。結論は6つです。

1
社員にツールを配るのではなく、会社全体をエージェント中心に再構築した。エージェントが業務で使えるよう、APIとシステムの大部分を書き直した。
2
アーキテクチャは「1タスク1エージェント」ではなく、「1顧客1エージェント」。各エージェントは専用の仮想マシン、記憶、長期的な目標を持ち、1日あたり10万〜20万が起動される。
3
2年間稼働し、収益を生んでいたアーキテクチャを、新モデル登場で全廃して再構築。理由は、オーケストレーション層が十分に賢いモデルの能力を制限するため。
4
評価(Evals)への投資は、エージェント開発への投資と同等。エンジニアの時間、トークン、コストを半分ずつ投じる。
5
AIセールスの成約率は人間チームの2.1倍。AIがCEOとして都市を運営した実験では、初月の利益が5割増加。
6
経営陣から自動車整備士まで、全員が6週間のトレーニングを必須化。修了条件は、その時点の最高水準のエージェントを本番環境にデプロイすること。

丸ごとコピーできる5つの資料

評価と開発の投資比率 この3つだけ測る評価基準 トークン3段階セルフチェック枠組み 長期稼働エージェントの4つの設定 組織変革のための2つの前提条件

以下で順に詳しく説明します。順序には意味があります。最初は基盤の作り方、後半はそれを業務と組織に展開したときに何が起こるか、という流れです。

決定

3つの根本的決定:API書き直し、超人基準、評価指標の変更

すべての施策は、3つの決定から導き出されています。この3つの決定は、いずれも技術選定の話ではなく、「会社をどう変えるか」という問いへの答えです。

一つ目:会社を設計し直す。ツール配布で止まらない

具体的には、エンジニアリングとしてAPIとシステムの大部分を書き直し、エージェントがそれらを使ってタスクを完了できるようにしました。なぜ書き直しが必要だったのか。人間なら我慢できる使いにくいインターフェースでも、エージェントには使えないのです。人間の推測やクリック操作、3つのシステム間でのコピー&ペーストが必要なプロセスは、エージェントには実行できません。インターフェースを変えなければ、エージェントはただ傍観するだけになってしまいます。

さらに、エージェントを育てるためのデータとフィードバックループの生成も始めました。どのように育てるのか。実際の顧客の前に放ち、データを回収し、評価結果を得て、トレーニングする。その繰り返しです。

二つ目:「超人エージェント」の実現を目指す

ここで言う「超人」には具体的な基準があります。成約率、顧客生涯価値(LTV)、顧客体験といった、本当に重要な指標において、エージェントがこれまで会社が雇った中で最高の人間を上回ること。しかも、簡単なタスクではなく、最も難しい問題に挑ませます。

三つ目:取引型企業から関係型企業へ

Kavakは元々、取引型の企業でした。評価指標は、何台買ったか、何台売ったか、ブレーキパッドをいくつ仕入れるか、といったものでした。これを関係型企業に変えました。データベースには1000万人の顧客がおり、その大半に専用のエージェントを割り当て、任務はその顧客の生涯価値を最大化することです。

この変更がKavakで成立した理由は、2つの計算によるものです。第一に、金額です。取り扱うのは車や高額な個人ローンといった高単価商品です。この1000万人のうち、たった1%を活性化するだけで、数億ドル規模のビジネスになります。第二に、業界の特性です。中古車購入において、顧客はまず信頼を築かなければお金を払いません。そして信頼を築く唯一の方法は、顧客を理解し、長期的に関係を育むこと。これはまさにエージェントが得意とする分野です。