プロダクト発表 · 小互(シャオフー)解説

Lightricks が動画モデル LTX-2.5 をオープンソース化:音声・映像を一体生成、10 秒動画を 6.8 秒で

220 億パラメータで、ウェイトは当日に Hugging Face へ。ComfyUI も初日から対応。ただし「オープンソース」には、年間売上高 1,000 万ドルという線があります。
60 秒でわかる
  • Lightricks が動画生成モデル LTX-2.5 を発表・オープンソース化。10 秒の動画生成について、公式計測では 6.8 秒。同じ比較表では Veo 3.1 が 70 秒でした。
  • 多くの動画モデルとの根本的な違い:映像と音声を同じモデル内で一緒に生成します。別途用意する必要がありません。
  • ただし「オープンソース」には条件付き。ダウンロード前に、見落としがちな関門がもうひとつあります。
速度ランキングも画質ランキングも LTX公式の自己評価です。本稿では、そのテスト条件もあわせて記載しました。アーキテクチャ関連は前世代 LTX-2 の論文(arXiv 2601.03233)、パラメータ数とコンポーネント構成は Hugging Face 上の実際のウェイトファイルに基づきます。いずれも 2.5 の公式テクニカルレポートではありません。
発表

Lightricks が LTX-2.5 をオープンソース化、ウェイトは当日から入手可能

イスラエルの企業 Lightricks が手がける LTX チームは、動画生成モデル LTX-2.5 を発表しました。同日中にウェイトを Hugging Face へ公開し、ComfyUI も初日からネイティブ対応。API も利用できます。モデルの総パラメータ数は 220 億。テキスト・画像・動画の 3 種類の入力に対応し、出力は映像と音声が一体化した作品です。

公式発表用映像。この作品はサイト内で唯一、音声付きのデモです。他の機能デモ動画は、ウェブの自動再生の慣例に従い、音声トラックを外しています。動画 / LTX

できること——8 つの機能

8 つの機能区分ごとにデモが用意されており、これらがおおむね 2.5 の機能リストです。

モーション
人や物が物理的に自然に動くように。今回の世代での重点改善項目のひとつです。
マルチショット
1 回の生成で複数のカットを出力。カメラ位置が変わっても、人物やシーンは同じままです。
プロンプト忠実度
複数の主体や条件が複雑な指示でも、書かれた通りに出力します。
自動尺調整
尺を管理する専用モジュールを内蔵し、コンテンツに応じて動画の長さを調整します。
HDR
16bit リニア EXR に対応。明暗の幅を失わず、プロ向けのグレーディングが可能です。
実写素材の編集
実写の映像を取り込んで編集・延長が可能。ゼロからの生成だけでなく、既存素材も扱えます。
よりクリーンな出力
映像の欠陥が少なく、後処理で直す箇所も減ります。
ファインチューン可能なベース
物理AI向けに調整された事前学習チェックポイントを追加公開。各自のデータで学習を続けられます。
8 本のデモはすべて LTX 公式モデルページのものです。動画 / LTX

前世代からの進化点

今世代は、旧コアに機能を足したのではなく、ほぼ全段階を作り直しています。具体的には次の 6 点です。

① 新しいレンダリング方式

Diffusion Fidelity Rendering を採用。先に構造を作り、後からディテールを補完します。今回の画質向上の主因です。詳しくは後述します。

② 新しいビデオデコーダー

高い圧縮率を保ちつつ、高速な動きのある場面での映像破綻を軽減。顔などのディテールが潰れにくくなりました。

③ ネイティブなマルチショット

一連のシーケンスをひとつの出力として生成。カメラが変わっても、人物・シーン・音声の一貫性を保ちます。バラバラに生成して後で繋ぐ方式ではありません。

④ 言語バックボーンの刷新

カスタム版の Gemma 4(ウェイトでは 120 億パラメータ版)でプロンプトを処理し、専用のプロンプト増強器も併用します。

⑤ 蒸留版(distilled)が大幅に改善

同じ品質でありながら、より高速・省リソース。サンプリングステップは 8 ステップ固定で、自前のハードウェアで動かすための鍵となります。

⑥ NVIDIAとのローカル最適化

RTXシリーズとDGX Spark向けに VRAM 使用量を削減。ウェイトには NVFP4 と int8 の 2 つの量子化バージョンが最初から含まれます。

速度

10 秒動画を 6.8 秒で生成——ただしテスト条件の確認が必要

速度ランキングは画像から動画を生成する際の、10 秒動画の生成時間です。

LTX 2.5 ローカル2×GB200 · 720p
6.8s
LTX 2.5 API1080p · 待機時間込み
23.7s
Gemini Omni Flash720p
52s
Grok 1.5720p
63s
Veo 3.1720p · 8 秒で計測
70s
MiniMax H3768p
180s
Seedance 2.0720p
196s
FLUX 3720p
259s
Seedance 2.5720p 上限
317s
Kling 3.0 Pro約 1080p
398s
データは LTX 公式発表に基づき、本サイトが元画像の数値をもとに再描画。各社の解像度条件をラベルに併記しました。

数字とあわせて確認したい点が 3 つあります。

1 点目:6.8 秒は、彼ら自身の GB200 を 2 枚使った環境での数値です。GB200 は NVIDIA の最新データセンター向け GPU で、1 枚で車が買えるほどの価格です。この結果はモデル自体の効率の高さを示しますが、「あなたの GPU ならどれくらい速いか」は別の問題。公式も後者については数値を出していません。

2 点目:2 つの LTX の解像度が異なります。ローカル環境は 720p、API 経由は 1080p です。API の 23.7 秒は、サードパーティ製プラットフォームの fal.run でのエンドツーエンド計測で、待ち時間も含まれています。

3 点目:競合他社の条件もさまざまです。多くは 720p、MiniMax H3は768p、Kling 3.0 Pro は約 1080p。Veo 3.1 は 10 秒ではなく 8 秒の動画で計測されています。

LTX 公式発表の速度ランキングと画質ランキング
公式画像:左が速度ランキング、右が画質ランキング。各行の下にある小さな文字が各社のテスト条件です。図 / LTX
アーキテクチャ

映像と音声は一緒に生成される

多くの動画モデルは映像のみを扱い、音声はないか、別のモデルを組み合わせます。LTX シリーズは前世代から違う道を歩んでいます。音と映像を同じモデル内で同時に生成するのです。同社はこれを「ビデオ・オーディオ・ワールドシミュレーション」と位置づけています。

このアーキテクチャは 3 層構造です。

01
2つのストリーム、幅が異なる
140 億パラメータのビデオストリームと、50 億パラメータのオーディオストリームを並行稼働。映像の方が情報量が多いため、ビデオ側が明らかに幅広です。
02
2つのストリームが相互参照
双方向の交差注意レイヤーで 2 つのストリームを接続。時間的位置情報も付与し、「この音」と「このフレーム」を対応させます。
03
同じタイムステップを共有
2 つのストリームは同じリズムで同時にノイズを除去します。個別に生成して後から同期するのではありません。

つまり、出力されるのはセリフや吹き替えだけでなく、キャラクターや環境、スタイル、感情に追従する完全なオーディオトラック——環境音や効果音も含めて——です。他のモデルは無声映画を撮ってから声を当てる方式。LTX-2.5 は、撮影中からマイクのスイッチが入っている、と言えます。

2.5 のウェイト構成はこの設計に対応しています。ビデオ用の VAE に加えて、独立したオーディオ用 VAE を搭載。機能タグにも「テキスト読み上げ」「ビデオ読み上げ」「オーディオ読み上げ」などの組み合わせが記載されています。ウェイトファイル名に 22b とあり、今世代の総パラメータ数が 220 億であることを示します。前世代は 140 億+50 億。増加分がどちら側に配分されたかは非公開です。

なぜこれが重要なのか:動画内の音声は飾りではありません。足音のリズムが着地とズレたり、口の動きが音節と合わなければ、観客は一瞬で違和感を覚えます。音と映像を同じモデル・同じリズムで生成するのは、まさにこの同期問題を解決するための設計なのです。
新メカニズム

新しいレンダリング方式:先に構造、後からディテール

今回の画質向上の主因が Diffusion Fidelity Rendering です。これは動画生成の長年の課題を解決しようとするものです。高速化のため、モデルは元のピクセルで直接作業するのではなく、動画を大幅に圧縮してから生成します。圧縮が強いほど計算は速くなりますが、解凍するとディテールがぼやけます。最もぼやけやすいのが顔です。

LTX-2.5 の解決策は、「構造」と「ディテール」を 2 つの段階に分けることです。

第 1 段階:8 倍に圧縮された空間で、動きと構造を素早く組み立てる 粗い構造 · 動きの方向 高忠実度キーフレームが詳細を固定 難しい箇所に多くの計算を割り当て、簡単な箇所は少なめに 第 2 段階:専用のレンダリング段階でディテールを動画全体に敷き詰める 完成作品
本サイトが公開されている方式の説明をもとに描いた図です。
01
8 倍圧縮空間で構造を組み立てる
まず動画の動きと構造を決定。時間軸で 8 倍圧縮するため、計算量が大幅に減り、高速化につながります。
02
同時に高忠実度キーフレームを生成
構造を組み立てる一方で、高精細なキーフレームを別途生成し、映像のディテールを固定。後段でのぼやけを防ぎます。
03
画面の複雑さに応じて計算量を配分
難しい箇所には多くの計算量とキーフレームを割り当て、簡単な箇所は少なめに。キーフレーム数はシーンの複雑さと計算予算に応じて変化します。
04
最後にレンダリング段階でディテールを補完
構造が決まった後、専用の拡散レンダリング段階が、最終的な映像にディテールを敷き詰めます。全フレームを常に最高精度でレンダリングするわけではありません。
Diffusion Fidelity Rendering のデモ映像。動画 / LTX
画質

画質ランキング 1 位——比べているのは「破綻の少なさ」

もうひとつのランキングは、テキストから動画を生成した際の、動画ごとの目に見える欠陥数を測定したものです(少ないほど良い)。LTX 2.5 Pro が 0.28、LTX 2.5 Fast が 0.39、Flux 3 が 0.45、MiniMax が 0.46、Wan 2.6 が 0.65、Seedance 2.5 が 0.69、LTX 2.3 Pro が 0.74、Kling 3 Pro が 0.76、Veo 3.1 が 1.20 でした。

10 モデル中、LTX 2.5 Pro が 1 位です。この「1 位」の意味を正確に理解するためには、何を測定したのかを確認する必要があります。

このスコアに含まれるもの

ブロック状のノイズ、壊れたテクスチャ、ぼやけたり塗りつぶされた領域。つまり「一目で AI の失敗とわかる部分」です。

含まれないもの

見た目の良し悪し、動きの物理的な正確さ、プロンプトへの忠実度、音声の同期。これらはこのスコアには入っていません。

さらに、3 つの測定条件も明確にしておきます。98 個の同一プロンプトを 10 モデルで実行。評価は人間ではなく機械が実施。ランキングは「暫定結果」とされており、評価の拡大に伴い変動する可能性があります。また、Seedance 2.0 の 0.60 はグラフに描き込まれていません。

ライセンス

「オープンソース」の 3 つの関門:売上高の壁、微調整モデルの譲渡、ダウンロード時のメールアドレス

同社はこれをオープンウェイトと位置づけています。発表のツイートには、こうあります。「これはレンタルするツールではない。君たちが何かを築くための土台だ。オープンで、君たちのものだ。」

実際の規約は 3 層構造です。

関門 1:年間売上高 1,000 万ドルの壁

LTX-2.x コミュニティライセンスを採用。年間売上高が 1,000 万ドル未満の組織は、商用・本番利用ともに無料です。この金額を超える場合は、有料の商用契約が必要になります。その契約には、完全なウェイト、エンジニアリングサポート、LoRA、柔軟なデプロイオプションが含まれます。

関門 2:微調整したモデルの譲渡には、別途料金が発生する場合があります

自分で微調整したモデルを第三者に譲渡する場合、別途有料ライセンスが必要になる可能性があります。自分で使うのと、成果を他者に渡すのとでは条件が異なります。

関門 3:ダウンロードには連絡先との交換が必要

Hugging Face 上のウェイトはアクセス制限付きです。ダウンロードには、ログインし、連絡先の共有に同意する必要があります。同意ボタンを押すことは、プライバシーポリシーへの同意を意味し、ターゲット広告を含むプロモーション配信への同意も含まれます(いつでも購読解除可能)。ウェイトは匿名ではダウンロードできません。

これらの条件は厳しいものではなく、多くのオープンソースモデルが同様の取り組みをしています。日本語の「オープンソース」という言葉は「自由に使える」と受け取られることが多いですが、この 3つの関門のいずれもが、採用の判断に影響を与え得ます。

疑問点

ロボット分野について、公式の見解は「開発途上」

今回の発表では、ロボットと物理 AI が大きくフィーチャーされています。映画、ロボット、リアルタイムワークフローが、LTX モデルがすでに本番投入されている3つの分野として列挙されています。ロボット企業 Markov Robotics の CEO も「このオープンソースモデルに匹敵するものは他になかった」と推薦の言葉を寄せています。さらに、物理AI向けに調整された事前学習チェックポイントも別途公開されています。

一方、開発者向けの説明書では、同じ事柄についてより慎重な表現が使われています。

既存の用途は、テキスト・画像・動画の入力から、同期した高忠実度の映像・音声を生成することです。ロボットや物理 AI といった新興分野での適合性は、まだ開発途上にあります。

LTX-2.5 モデルカード · Hugging Face

同じ企業による 2 つの声明です。ロボットへの利用を検討しているチームは、後者の見解に基づいて評価するのが安全でしょう。

LTX と制作会社 Asteria の協業
映像制作の分野で公式に名前が挙がっているのは Asteria。アーティスト主導の制作会社で、LTX 上にハイブリッドなワークフローを構築しています。共同創業者の Paul Trillo 氏は、ACES など、既存の制作パイプラインに実際に組み込める機能こそ評価していると述べています。図 / LTX
導入

始め方:3 つの方法、分割されたコンポーネント、16GB から

自分で動かすには 3 つの方法があります。ltx-pipelines(LTX 公式の PyTorch パイプライン)、ComfyUI(公開初日から公式ワークフローテンプレートあり)、そして Diffusers です。

ウェイトは 1 つの大きなファイルではなく、コンポーネントごとに分割して提供されます。拡散メインネットワーク、Gemma 4 テキストエンコーダー、ビデオVAE、オーディオVAE、尺を制御するモジュール、空間・時間アップサンプラー、そしてLoRAです。セットアップ時には、各コンポーネントのパスを個別に指定する必要があります。

ハードウェア要件は、最小 VRAM 16GB、任意の GPU で動作可能、ローカル/エッジ/API の 3 つのデプロイ方法に対応。VRAM が不足する場合は、メインネットワークの動的精度低下と CPU オフロードを使用します。この 16GB が、どの量子化バージョン、どの解像度、どの長さの動画に対応するものなのかは明記されていません。

量子化バージョンは 3 種類。ComfyUI 専用の int8、Blackwell アーキテクチャ向けの NVFP4、そして実行時の fp8 精度低下です。ComfyUI 専用の 2 つのファイルは PyTorch パイプラインでは使用できません。この点はモデルカードに明記されています。

公開から 1 日で、Hugging Face 上にはコミュニティによる 2 つのアダプター、4 つの微調整モデル、7 つの量子化バージョンがアップロードされました。LTXシリーズの累計ダウンロード数は3,300万回を超えています(公式数値。シリーズ全体であり、2.5 単体ではありません)。

✅ LTX-2.5 を自分で動かす前に、以下を確認
現在、自マシンにダウンロードして実行でき、かつ音声・映像を一体生成できる動画モデルの中で最速クラス。10 秒動画を公式計測で 6.8 秒。その代償は、1,000 万ドルの売上高という線と、ダウンロード時に渡すメールアドレスです。
出典
2.5: The Foundation Film Is Made OnLTX Team·公式ブログ·2026-08-11
本サイトからの補足
デモ動画とベンチマーク画像はすべて LTX 公式サイトから取得しました。速度・画質ランキングは公式の自己評価であり、テスト条件は元画像の注記に基づき本文に記載しています。デュアルストリームアーキテクチャ(ビデオ 140 億+オーディオ 50 億、交差注意、共有タイムステップ)は前世代 LTX-2 の論文に基づくもので、2.5 のテクニカルレポートではありません。220 億パラメータ、Gemma 4 テキストエンコーダー、独立オーディオ VAE などは、Hugging Face 上の実際のウェイトファイル名とモデルカードによるものです。ライセンス条項とダウンロード条件は、LTX-2.x コミュニティライセンスの説明と Hugging Face のアクセス警告から引用しました。「先に構造、後からディテール」は、本サイトが公開されている方式の説明に基づいて描いた図です。