Perplexity ComputerがMac完全ローカル実行に対応:モデルとエージェント双方が端末内で完結、ローカルタスクはクレジット消費なし
顧客資料の整理や提案書の予算策定から複数アプリにまたがるToDo整理まで。何ができるのか、完全ローカルとHybridの役割分担、プライバシー機構、利用条件を整理します。
PerplexityはMacクライアント向けに、完全ローカルで動作するPerplexity Computerの提供を開始しました。モデルとタスクを実行するエージェントの双方がMac上で動作します。ユーザーの許可を得ることで、ローカルファイルやネイティブアプリを直接操作でき、機密データをクラウドモデルへ送信して分析させることなくタスクを完了できます。
主な変更点は以下の通りです:
- モデルとエージェント双方が端末内で動作:ローカルモデルがタスクの理解を担い、エージェントがアクセス許可されたツールやアプリの呼び出しを担当します。
- 機密データをローカルで処理:公式説明によると、ローカルタスクではファイルやアプリ内の機密情報を処理でき、それらの内容をクラウドモデルに送信する必要がありません。
- ローカルタスクはクレジットを消費しない:Computerクレジットは消費されませんが、利用にはサブスクリプション契約が必要です。
- ハイブリッド計算(Hybrid)の選択肢:クラウドが公開情報の検索や推論を担当し、Macがプライベートファイルや端末内操作を担当。双方が自動で協調・分担します。
- サブスクリプションおよびデバイス要件:Pro、Max、Enterpriseユーザー向けに提供され、サポート対象のApple silicon Macが必要です。完全ローカル実行には36 GBの統合メモリが推奨されています。
顧客ファイルがどのように振り返りメモへ変換されるか、そしてメール、SMS、Slack、カレンダーのアクション項目がどのように「リマインダー」へ書き込まれるかを示しています。動画は公式の機能デモです。
機能の特徴:ローカルエージェントはPC上でどのように具体タスクを遂行するか?
日常的な業務において、AIアシスタントに委ねる作業には外部へ公開できないプライベート情報が多く含まれます。公式デモでは、2つの代表的なローカル実行シナリオが提示されています。
1つ目のシナリオは、ローカル内の機密ファイルの詳細な整理です。ユーザーは入力欄で PPLX Pro モデルを指定し、「~/Clients/West/Okonkwo ディレクトリ配下の最新メールと税務申告書を読み込み、Okonkwo家の第3四半期投資振り返りメモを作成し、今四半期の変動点および2027年に対応すべき重要課題を抽出せよ」と指示します。画面上にはスプレッドシート、メール、ターミナルツールが表示され、退職計画、住宅、分散投資、社会保障などのトピックを整理した振り返りメモが出力されます。これは複数資料から論点を整理するプロセスを示したものであり、生成された金融アドバイスの妥当性を評価するものではありません。
2つ目のシナリオは、複数システムアプリにまたがる連携抽出です。指示によりユーザーのメール、SMS、Slack、カレンダーをスキャンし、「本日中に返信または対応が必要なすべての事項を『リマインダー(Reminders)』に追加せよ」と求めます。システムは各アプリに分散した情報(例えばSMS内の金曜日の会議日程変更に関するやり取りなど)を自動で読み取り、ToDo項目を当初の1件から5件へと自動拡張して、macOS標準のリマインダーへ直接書き込みます。
公式ブログではさらに、クライアント向け提案書の作成シナリオも挙げられています。機密の面談記録、クライアントの要望、社内価格表を提案書へとまとめ上げ、プロジェクト範囲、Excelによる予算表、そして確認用のOutlookメール下書きを作成します。
画面の「Where the work ran」には、モデル・エージェントともにMac上で動作し、クラウドは不使用であることが明記されています。図中のリソース値はウェブデモのものです。出典:Perplexity公式製品ページ。公式ページのスナップショットに基づき掲載しており、本稿独自の実機テスト結果ではありません。
これらのタスクに共通する実用性は、「資料の読み込み」から「成果物の作成」までを途切れなくつなぐ点にあります。ユーザーは1件ずつ情報を抽出し、整理し、文書や表計算、各種アプリへと転記する手作業を省くことができます。クライアント資料の整理、予算提案書の作成、複数アプリからのToDo集約などを頻繁に行うユーザーにとって、導入の判断材料となります。
ローカルでの推論は、すべてのアプリがオフラインで利用可能であることを意味しません。 メールやSlackによるメッセージの受信や同期にはインターネット接続が必要になる場合があり、AIがどこでメッセージを理解し次の行動を決定するかとは別の段階の話です。
中核メカニズム:「端末内で考える」と「端末内で操作する」の違い
「端末内で考える」とは、モデルがPC上でタスクを理解し内容を分析することを指し、「端末内で動かす」とは、エージェントがPC上でツールを呼び出し、ファイルやアプリを操作することを指します。操作がMac上で行われているからといって、分析もMac上で行われているとは限りません。
例えば、デスクトップアシスタントが確定申告書をクラウドモデルに送って分析させ、その分析結果だけをローカルファイルに書き戻す場合、ファイルの書き込みはMac上ですが、申告書の分析は依然としてクラウド側で行われています。今回のPerplexityの完全ローカルモードは、モデルの推論とエージェントの実行の双方をMac上へ移しました。
- ローカルモデルがタスクの理解を担当:Mac上で動作するローカルモデルが、アクセスを許可されたコンテンツを分析し、何を行うべきかを決定します。
- ローカルエージェントがアクションの実行を担当:許可されたツールを呼び出し、ファイルを読み込み、アプリの情報を処理して、タスクを成果物の形へと進めます。モデルがこの実行システムと協調して初めて、単なるチャット欄での回答にとどまらない処理が可能になります。
Hybridはクラウドの調査能力と機密データをどのように結びつけるか?
Hybridでは、クラウドが公開情報の調査・計画・推論を担当し、Macが機密ファイルや端末内アプリの操作を担当します。 Computerが両者を自動で協調させ、作業結果を1つの成果物へと統合します。ユーザー自身がプロンプトを何段階にも分けて指示し直したり、ツール間でデータを手動コピーしたりする必要はありません。
例えば案件のデューデリジェンスを行う際、クラウドは公開の財務諸表、類似取引、市場情報を調査し、Macは社外秘の取引ファイルを読み取って契約条件や財務前提を抽出し、双方の情報に矛盾がないかを照合します。これこそがHybridの実用的な役割であり、外部の調査結果とクラウドに直接渡せない社内資料を同一のワークフローで処理できるようにします。
2つのサブタスクが、プレゼンテーション資料更新という同一の目的に向けて分担して処理を進めます。公式ウェブコンポーネントのデモスナップショットです。出典:Perplexity公式製品ページ。公式ページのスナップショットに基づき掲載しており、本稿独自の実機テスト結果ではありません。
この処理過程において、Mac上のプライバシーゲート(Privacy Gate)が外部への情報送信を制御します。公式説明によると、端末内の分類器が氏名、住所、口座番号などの機微情報を事前に識別し、代替表記に置き換えてから送信します。回答がMacに戻ってきた段階で、元の情報へと復元されます。例えば顧客氏名を「顧客A」に置き換え、クラウド側はその代替表記をもとに処理を行い、ローカルに戻った結果内で元の氏名に戻します。ルール設定に応じて、ゲートは情報をローカルに留めて送信をブロックしたり、送信前にユーザーの確認を求めたりすることも可能です。Hybridでもクラウドとの情報交換は行われますが、送信できる情報と送信前の処理方法を制御する仕組みです。
Hybrid側ではローカル処理、クラウドでの代替表記使用、ローカル復帰後の元の情報への復元が順に示されています。また、ローカル保持や共有許可の確認が可能であることも説明されています。出典:Perplexity公式製品ページ。公式ページのスナップショットに基づき掲載しており、本稿独自の実機テスト結果ではありません。
2つのモードをどう選ぶか?資料の揃い具合と、クラウドの必要性で判断する
完全ローカルでも複雑で多段階の作業を実行可能であり、選択の基準はタスクの難易度だけではありません。 公式が提示する対比は明確です:
- 非公開の保有資産 + すでにダウンロード済みの相場データ:完全ローカルで分析可能。 必要な資料がすべて端末内にあり、計画・分析・実行のすべてをMac上で完結させたい場合は、完全ローカルを選択します。
- 社外秘の財務データ + 最新の市場調査:Hybridを選択。 Macが機密資料を扱い、クラウドが公開調査や推論を補完した上で、成果物を統合します。
ローカルタスクの実行途中で最新情報、ブラウザ操作、外部連携アプリ、またはクラウドモデルの支援が必要になった場合でも、ユーザーが承認すればComputerからクラウドを呼び出すことができます。クラウドに関わるステップについては完全ローカル処理ではなくなります。
まずタスクに必要な資料を確認し、どこで処理するかを判断します。どちらのモードでも複数ステップのタスクを実行できます。
データも分析もMac内に保持
いつ選ぶか?必要な資料が端末内に揃っており、計画・分析・実行のすべてを端末内で完結させたい場合。
例:非公開の保有資産 + ダウンロード済み相場データ → ローカル分析。
ローカルタスクはComputerクレジットを消費しませんが、サブスクリプションが必要です。
公開調査と機密資料をひとつのタスクに結合
いつ選ぶか?機密資料の処理と同時に、最新の公開調査やクラウドモデルの支援が必要な場合。
例:機密財務資料 + 最新市場調査 → 統合レビュー。
ローカル処理部分はクラウドクレジットを消費しませんが、Hybridタスク全体がクレジットを消費しないという意味ではありません。
Hybridの情報はどう往復するか?
公式説明によると、端末内の分類器が氏名・住所・口座番号などの機微情報を事前に識別し、適切な処理を決定します。
- ① Macが機密値を置換例えば、実際の顧客氏名を「顧客A」に置き換えてからリクエストを送信。
- ② クラウドでリクエストを処理クラウドは代替表記を使用し、許可された調査や推論を実行。
- ③ Macが元の情報へ復元回答が端末に戻った段階で、代替表記を元の実情報へと復元。
プライバシーゲートはルールに基づき情報をローカルに留めたり、送信を拒否したり、事前にユーザーへ確認することも可能です。Hybridでもクラウドとの情報交換は発生します。
完全ローカルタスクの途中でクラウド機能が必要になった場合、ユーザーの許可により呼び出すことができます。クラウドに関わるステップは完全ローカル処理ではなくなります。メールやSlackなどのサービスによるメッセージ同期でも通信が発生する場合がありますが、これはAIがどこで分析するかとは別の処理です。
Hybridはリモートからの利用形態も提供しています。iPhoneからタスクを開始し、Mac側で機密ファイルの読み込みや機微な処理を実行させ、その結果を同一のタスクに集約して他端末から閲覧できます。製品ページでは、毎週月曜日に定期実行して更新結果をSlackやメールへ送信するシナリオも示されており、定常的に同種の成果物を更新したいニーズに適しています。
結果表では、ローカルでのモデル再構築と、クラウドでの類似取引調査が分けて表示されています。画面内のタイムスタンプはデモ用の表記であり、実際の所要時間を表すものではありません。出典:Perplexity公式製品ページ。公式ページのスナップショットに基づき掲載しており、本稿独自の実機テスト結果ではありません。
ローカルで使用されているPPLX Proとはどのようなモデルか?
今回のデモではPPLX Proが採用されていますが、これが唯一のローカルモデルの選択肢ではありません。公式の説明によると、これはQwenの事後学習(post-trained)バージョンであり、既存のモデルをベースに追加学習を行って今回のタスクに適合させたものです。「事後学習」という名称だけでは具体的な学習手法や性能向上幅を把握することはできず、今回の公式発表でもベンチマーク評価などは示されていません。選択可能なモデルはアプリ内の表示に準じます。
誰が利用でき、どのように始めるか?
ローカルタスクはComputerクレジットを消費しませんが、この機能自体の利用にはPro、Max、Enterpriseの有料サブスクリプションが必要です。 前者はローカルタスク実行時にクレジットが減算されるかどうかの話であり、後者は本機能の利用権限があるかどうかの話です。これらを混同してはなりません。またHybridの製品ページでも、ローカルモデルが処理する作業はクラウドクレジットを消費しないと説明されていますが、これはHybridタスク全体がクレジット不要であることを意味するものではありません。
動作環境の要件は実行モードによって異なります:
- 完全ローカルモード:サポート対象のApple silicon Macで動作します。公式推奨は 36 GBの統合メモリ です。これは推奨構成であり、公式が最小メモリ要件として定めているわけではありません。モデルをローカルで動作させるとシステムや他のアプリとMacのリソースを共有するため、この推奨値からメモリ容量の少ない機種における実際の動作速度や互換性を推し量ることはできません。
- ハイブリッド計算(Hybrid)モード:公式製品ページに記載された要件は、Apple silicon MacおよびmacOS 15以上で、統合メモリの基準は 最小 24 GB、推奨 32 GB です。
利用開始の手順:
- 公式リンクから最新バージョンのPerplexity Macクライアントをダウンロードしてインストールします。
- アプリ内の案内に従って、選択したローカルモデルをワンクリックでダウンロードします(設定はアプリ内で一度行えば完了し、Ollamaの個別導入、ローカル実行環境の構築、APIキーの設定などは不要です)。
- モデルセレクターで、タスクの目的に応じてMac上で直接動作する完全ローカル(fully local)を選択するか、ハイブリッド計算(Hybrid)を選択してローカルモデルとクラウドモデルをそれぞれ指定します。具体的な対応状況はアプリ内の表示に準じます。
