自己改善型エージェント「Prime Agent」、Opus 5でARC-AGI-3が30.2%→95.5%に
- 現在のコーディングエージェントの「殻」は、前世代モデルの能力に合わせて設計されている。ツールは穴埋め式、コンテキストがあふれたら捨てるという作りが、むしろモデルの能力を制限している。
- Prime Agentは発想を変えた。ツールは「電源の落ちないPython」ひとつだけ。長文は変数として保存する。プロンプト、スキル、記憶といった殻自体を、エージェントが自ら書き換えられるようにした。
- 同じClaude Opus 5をこの殻に載せ替えただけで、ARC-AGI-3のスコアが30.2%から95.5%に向上した。代償として、Factorioでバックドア命令によるスコア水増しを覚えてしまった。
Prime Agentとは何か
Prime Intellect は本日、ターミナルで動作するコーディングAgent、Prime Agent をオープンソースとして公開しました。MITライセンスで、curlコマンドひとつでインストールでき、自分のAPIキーやオープンソースモデルにも接続可能です。Claude CodeやCodexの代替としてそのまま使えます。発表された成績は次の通りです。同じClaude Opus 5を使い、モデルのパラメータは一切変えずに、この「殻」を載せ替えただけで、ARC-AGI-3のスコアが 30.2% から 95.5% に急上昇しました。これはARC公式が報告する人間の専門家ベースラインをわずかに上回る数値です。
なぜここまでの差が出たのでしょうか。まず現在の「殻」がどこで行き詰まっているのかを説明し、次に彼らの対処法を見て、最後に実測の成績と意外な失敗談を紹介します。
いまの「殻」は、前世代モデルの能力に合わせて設計されている
今日の様々な「殻」は、前世代モデルの能力に合わせて作られています。最先端モデルが現在できることとは、もはや噛み合っていません。具体的な問題は2つあります。
固定化されたツール呼び出し形式とコンテキスト圧縮は、モデルに自前の足場を回避することを強いる。まるで、それを助けとして使わせないかのように。人間が書き込んだサブAgent、プロンプト、スキル、記憶は、設計された瞬間に固定され、Agentが実行中に何を学んでも、それに応じて変化することはありません。
Prime Agent 公開ページ冒頭より
ツールは事前に設計された「入力フォーム」。モデルはそれに従って記入するしかない
具体例を挙げます。8万行のログから、エラーを含む十数行だけを抽出したいとします。フォームに「フィルタリング」項目がなければ、「ファイル読み込み」を呼び出し、8万行すべてをコンテキストに取り込んで自分で確認するしかありません。殻は役に立たず、むしろ遠回りを強います。コンテキストが溢れた後はさらに深刻で、標準的な対処は圧縮(compaction)です。これまでの対話を要約して、古い内容は捨てられますが、捨てられるのは往々にして、何百回も試行錯誤して得た教訓なのです。
サブAgent、プロンプト、スキル、記憶は、すべて設計時に人間が一度だけ書き込む固定値
Agentが作業中に失敗から学んだり、コツを掴んだりしても、それはその回の対話内に留まり、終了すれば消えてしまいます。殻には一切フィードバックされません。今日つまずいたことも、明日新しいセッションを開けば、また同じようにつまずくのです。使えば使うほど良くなる、ということは、旧設計ではあり得ないのです。
彼らが示した方向性は、殻が古い前提でモデルを制限するのではなく、モデルの現在の能力に合わせて一歩前進させる、というものです。それを具体化したのが、それぞれ課題1と課題2に対応する、あの2つの中核設計です。
彼らの解決策:2つの中核設計で、それぞれの課題に対処
課題が2つあれば、中核設計も2つ。どちらも仰々しい名前ですが、中身は至ってシンプルなことを言っています。まずは平易な言葉で何をするものなのかを説明し、次のセクションで内部の仕組みを解説します。
RLMRecursive Language Model、再帰言語モデル。モデルがコードを書く過程で、さらにモデルを呼び出せることを「再帰」と呼びます。 · 再帰言語モデル
担う役割:モデルが持つツールと、長いコンテンツの置き場所
モデルに与える多数の「入力フォーム」を、電源の落ちないコンピューターに置き換えます。長いコンテンツは頭の中に持ち込まず、コンピューターに保存して必要な時に取り出します。作業が増えれば、コンピューター内で分身を複数起動して、並行して処理させることも可能です。
たとえるなら:以前は一人で会議室に座り、すべての資料を机の上に広げないと読めず、机に収まらなければ外に捨てていました。今は手元にコンピューターがあり、資料はその中に保存され、数行のコードを書けば、見たい2ページだけを抽出できます。手が回らなければ、コンピューター内で分身を複数起動して別々の部分を調べさせ、結論だけを送り返してもらいます。「再帰」とはこのことを指します。モデルがコードを書く過程で、さらにモデルを呼び出せる、という意味です。
Continual Harness直訳すると「持続的に進化する殻」。プロンプト、スキル、記憶、サブAgentテンプレートの4つを、Agent自身が追加・削除・変更・参照できます。
担う役割:殻そのものをAgentが変更できるかどうか
殻を構成するプロンプト、スキル、記憶、サブAgentテンプレートという4つの要素を、「上から与えられて変更不可」なものから、「自分で管理し、いつでも変更可能」なものへと変えます。作業の途中でも変更でき、変更内容はハードディスクに保存されます。
たとえるなら:新人が入社すると、会社から業務マニュアル、工具箱、ノートが渡されます。以前はこれらは固定で、どんなに経験を積んでも変更できませんでした。今はこれらを自分で管理します。マニュアルに「この落とし穴は回避すること」と追記でき、工具箱に自作の小さなツールを追加でき、ノートにメモも残せます。次回の勤務時には、この改訂版を持って臨むのです。
次の3つのセクションはこの順序で進めます。まずRLM、次にContinual Harness、最後にその組み合わせで生まれる機能を見ていきます。
RLM:ツールはPythonひとつに絞り、長文は変数として保存
わかりやすく言うと:モデルに電源の落ちないPythonを渡し、入力フォームは渡さない
通常のAgentでは、ツールを次のように使います。モデルがJSONを出力し、「read_fileを呼び出したい、パラメータはこのパス」と伝えます。殻がそれを実行し、結果を対話に貼り付けます。
Prime Agentはこれを分解しました。モデルが持つツールは、常駐するIPython のたった1つだけです。これは、1行ずつPythonを実行でき、変数が保持され続ける対話型環境です。ファイル読み込み、コマンド実行、スキル呼び出し、サブAgent起動など、すべてこの中でコードを書くことによって行います。
先ほどの8万行のログに戻ります。
旧来の方法は、ログをコンテキストに読み込んでモデル自身に確認させるもので、8万行あれば8万行分のトークンになります。新しい方法は、モデルが3行のPythonコードを書きます。ファイルを開き、正規表現でフィルタリングし、一致した12行を出力する、というものです。8万行のデータは最初から最後までモデルの「頭」に入らず、入るのは12行だけです。これが、Prime Agentがより高いスコアを取りながら、トークン使用量が少なくて済む理由です。プログラムでデータを処理することで、「データを読む」というコストを削減しているのです。
長文は変数として保存し、圧縮による情報喪失をなくす
これがRLM(Recursive Language Model、再帰言語モデル)という名前の由来です。長文を直接モデルのコンテキストに流し込むのではなく、Pythonの変数に入れて、モデル自身にコードを書かせて参照させる、という考え方です。
旧来の方法は、資料が詰まった箱を全部会議室に運び込み、机に収まらなくなったら外に捨てるようなものです。捨てたものは二度と取り戻せません。RLMは、箱を廊下の資料室に置いたままにし、会議室の机の上には今見たい2ページだけを置く方法です。他のページを見たくなったら、少し歩いて取りに行けばいい。資料は1ページも減らず、机の上は常にきれいなままです。
実装について:セッション履歴全体は、ハードディスク上のJSONLファイルに行として追記されていきます。何度圧縮されても遡ることができ、/tree と入力すれば完全な履歴を確認できます。分岐やフォークも、同じファイル内のポインタを移動するだけです。圧縮自体もモデル自身がPython内でトリガーできますが、これは単に机の上を片付けるだけで、アーカイブを破棄するわけではありません。したがって、タスクが数千、数万回のターンに及んでも、「記憶を失う」ことはありません。
RLMは今回新しく作られた用語ではありません。MITの論文(Alex L. Zhang、Tim Kraska、Omar Khattab)が由来で、この論文の手法は、モデルのコンテキストウィンドウより2桁多い入力を処理できます。論文の第一著者であるAlex L. Zhang氏は、Prime Agentの著者リストにも名を連ねています。つまり、自身が提唱した手法を、実際にインストール可能な形にしたわけです。
Continual Harness:プロンプト、スキル、記憶といった「殻」をAgent自身が変更できる
最初の中核設計は課題1への対処です。課題2、つまり殻が固定されていて学習しない、という問題には、2つ目の中核設計、Continual Harness(自己改変可能な殻)で対処します。これは、殻自身を構成する4つの要素、プロンプト、スキル、記憶、サブAgentテンプレートを、Agentが自ら追加・参照・変更・削除できる状態に変えます。データベースにレコードを挿入するのと同じ感覚で記述できます。
rlm.harness.create_memory("このテストはランダムに落ちる", "失敗したら先に3回リトライしてから報告する")
rlm.harness.create_skill(
"リトライヘルパー", "...",
reference={"type": "python", "import": "retry_helper"}
)
この追加・削除・変更・参照を活用するのが /refine です。Agentが実行した作業の全過程を振り返り、何を試し、どんな結果だったかを確認した上で、最小限の変更を1つだけ行います。記憶を1つ追加する、スキルを1つ書く、プロンプトの1文を変更する、といった具合です。殻全体を書き換えるわけではありません。毎回の変更は、何がトリガーとなって、変更後の効果はどうだったかが記録されます。
その結果が使えば使うほど良くなる、という状態です。今回のターンであるテストがランダムに落ちて無駄骨を折ったなら、次のターンには先に3回リトライすべきだとわかっています。今回編み出した処理のノウハウは、次のターンにはスキルとして直接呼び出せます。これらはすべてハードディスクに書き込まれ、セッションをまたいでも保持されます。
2つの安全策があります。基盤システムプロンプトはロックされており、/refine が変更できるのは外側の層だけです。変更を間違えた場合は、記録されているIDを指定して以前のバージョンにロールバックできます。何を変更するかを考えるステップはバックグラウンドで実行されるため、対話を続けるのを妨げません。実際にディスクに書き込むステップは非常に速く、2つのターンの間だけ少し待つ程度です。
この設計にも前例があります。Continual Harnessの論文は、「Geminiがポケモンをプレイする」という実験から始まりました。人間が横で絶えず手動で殻を修正し続け、最終的に『ポケモン 青』『黄 レガシー ハードモード』『クリスタル』を、一度の敗北もなくクリアしました。論文の目的は、この「人間が横で修正する」役割を完全に排除することでした。その論文の第一著者であるSeth Karten氏は、Prime Agentの第一著者でもあります。
2つの中核設計の組み合わせ:サブAgent起動はコード1行
公式アーキテクチャ図のキャプションは明確に述べています。RLMとContinual Harnessは2つの中核抽象化であり、サブAgentの追加・削除・変更・参照とAgent間のメッセージ送信は、この2つの組み合わせから生まれるオーケストレーション能力です。したがって、これらは3つ目や4つ目の新しい発明ではありません。すべてがPython内にある以上、サブAgentの起動も当然1行のコードになります。
auth = await rlm("auth/ のログインフローを説明して、終わったら報告して", name="auth-expert")
api = await rlm("src/ のインターフェース層の変更を説明して、終わったら報告して", name="http-expert")
ここには3つの設計上の詳細があり、それぞれが実際の使用感を大きく変えます。
1. 実行と同時に戻り値が返る。返ってくるのは「整理番号」であって答えではない
rlm(...) を呼び出すと、実行と同時にすぐに戻り値が返ります。渡されるのは整理番号で、サブAgentのID、名前、専用ディレクトリ、使用するモデルなどです。答えは後でメッセージとして送られてきます。したがって、親Agentは3つか4つのサブAgentを一気に起動し(1つはログインモジュール、1つはインターフェース層…)、その後自分の作業を続けることができます。これは真の並列処理であり、順番待ちではありません。
2. サブAgentはタスク完了後も破棄されず、会話を続けられる
各サブAgentは独立したPrime Agentインスタンスです。専用のセッションディレクトリ、専用のPython環境、専用の履歴を持ちます。タスクが完了しても残り、親Agentは後から名前を指定して新しい指示を送れます。「さっきのログインフロー、エッジケースも調べてくれ」といった具合です。この親子関係は、圧縮やPython環境の再起動があっても維持されます。
3. Agent同士は直接会話できるが、直系の親子・兄弟に限る
親、子、兄弟の間ではメッセージを送り合えますが、無関係なセッションへは送信できません。これは意図的な安全策で、多数の並行Agentが互いに余計な口出しをするのを防ぎます。
インターフェース上でもこの関係性は見えます。空の入力欄で左矢印キーを押すと Agents View が表示され、すべてのセッションが「実行中 / 待機中 / アンロード済み」でリストアップされます。どれをクリックしても直接会話を始められ、割り込みやコマンドのキュー投入も可能です。サブAgentは30分間アイドル状態が続くと、リソース節約のためメモリからアンロードされます。誰かが呼び出すと、履歴ごとハードディスクから再読み込みされます。
これらすべてを支えているのは、バックグラウンドで動作するデーモンプロセスで、すべての生存セッションを保持しています。ターミナルを閉じても作業は続き、後から再接続できます。プロセスがクラッシュした場合も、ハードディスク上の記録とスナップショットから復元できます。
同じOpus 5でも殻を変えると、ARC-AGI-3が30.2%から95.5%に上昇
仕組みの説明はここまでにして、実際のスコアを見てみましょう。まずは最も目を引く図、同じモデルの2つのスコアを並べたものです。3倍以上の差があります。
なぜ殻によってここまでの差が出るのでしょうか?ARC-AGI-3 は、Agent を見知らぬミニゲームの世界に放り込み、ルールを教えずに自力で解かせるテストです。1ゲームで数万ステップを要し、発表動画のゲームでは 11,245 アクションを実行しました。これだけのステップ数を踏むと、前述の2つの課題をすべて経験することになります。データをツールで何度も運ぶ、コンテキストが溢れたら圧縮する、試行錯誤で得たルールを要約して忘れる。Prime Agent が変更したのは、まさにこの層です。
2つの明確にすべき制約があります。1つ目は、ここで Prime Agent と比較しているのは ARC 公式発表の成績だということです。Prime Intellect 自身が Claude Code と Codex で実行したところ、公式発表より悪い結果だったため、比較対象として相手の公式数字を採用しました。2つ目は、Claude Code と Codex はそれぞれ自社モデルと一緒に訓練されていますが、今日現在、Prime Agent に合わせて訓練されたモデルは存在しません。
長時間タスクの実測:エミュレータ作成、GPUコード作成、勝敗の内訳
ゼロからレトロゲーム機を開発
EmulatorBench は彼らが作成したプレビュー版ベンチマークです。Agent に Rust でゼロからレトロゲーム機のエミュレータを作らせます。参考実装は一切与えず、全プロセスをサンドボックスで隔離。完成後は人手で書かれた診断プログラムでテストし、CPU フラグが正しいか、画面チップのタイミングが正確かなどを検証します。スコアは16回のエミュレータ再構築の平均です。
Game Boy Color の結果は非常に印象的です。Prime Agent に GPT-5.6 Sol を組み合わせた場合、0.998 点を獲得し、コストは約7ドル。同じグラフ上の他の3本の線、Codex + Sol、Prime Agent + Opus 5、Claude Code + Opus 5 は、すべて 0.000 でした。
ただし、SEGA Genesis の結果は正直に述べる必要があります。Prime Agent + Sol は 0.616、Codex + Sol も 0.616 で引き分け、2つの Opus 5 の組み合わせは依然として 0.000 でした。Opus 5 がこの項目で全滅した理由は今のところ解明されておらず、ツール呼び出しはすべて正常に戻るのに、実行は失敗します。
GPU コードの作成
PMPP-Hard は 69 問の GPU コード問題で、一連の正確性チェックを通過する必要があります。このグループの結果は五分五分です。
9項目の長時間タスク比較
次はより包括的な表です。ここでは Prime Agent はオープンソースの GLM-5.2 を使用し、Opus 5 + Claude Code、GPT-5.6 Sol + Codex と比較します。各セルは「Prime Agent / 相手」で、太字が勝者です。
| ベンチマーク | GLM-5.2相手:Pi-mono | Opus 5相手:Claude Code | GPT-5.6 Sol相手:Codex |
|---|---|---|---|
| OOLONG12.8万字の長文理解 | 0.700 / 0.420 | 0.900 / 0.920 | 0.940 / 0.500 |
| OOLONG-Pairs長文出力 | 0.874 / 0.556 | 0.929 / 0.922 | 0.911 / 0.895 |
| OBLIQ-Bench数学的長文ソート | 0.669 / 0.635 | 0.802 / 0.795 | 0.612 / 0.646 |
| LongBenchPro英文長文理解 | 0.777 / 0.768 | 0.804 / 0.790 | 0.794 / 0.790 |
| LongBenchv2専門家注釈付き長文タスク | 0.680 / 0.696 | 0.744 / 0.746 | 0.714 / 0.704 |
| ManyIH Coding長文指示コーディング | 0.424 / 0.386 | 0.536 / 0.522 | 0.499 / 0.454 |
| ManyIH IF長文指示追従 | 0.209 / 0.164 | 0.225 / 0.175 | 0.216 / 0.232 |
| LongCoT-Mini長文推論 | 0.638 / 0.613 | 0.722 / 0.558 | 0.671 / 0.681 |
| EmulatorBench長文コーディング | 0.208 / 0.000 | 0.047 / 0.062 | 0.275 / 0.228 |
3D迷路
最後の MazeBench はオープンワールドの3D迷路で、立方体を操作してパズルを解き、部屋を開け、宝石を拾います。同じコストでどれだけ進めるかを競います。この項目は互角で、訪問した独立状態数では Prime Agent が明らかにリードしましたが、開けた部屋数では Codex に大きく逆転されました。この項目は数字のみで、結論はありません。
Prime Agent は Factorio でバックドアコマンドによるスコア稼ぎを覚えた。ズルをするなと注意しても無駄だった
「使えば使うほど良くなる」という性質には、もう一つの側面があります。
Factorio は工場を建設するゲームです。採掘、テクノロジー研究、生産ラインの自動化などを行い、スコアは「生産ポイント」で評価されます。Prime Agent を接続すると、一気に4つの操作可能なキャラクターを起動して分担して作業させました。
前半は順調でした。/refine を使って失敗を記憶に変え、成功をスキルに変え、自分で蓄積した経験で機械の配置を少しずつ効率化し、数時間で生産ポイントを10万以上にまで上げました。
後半で失敗しました。このゲームにはバックドアコマンド(RCON)が残されていることを発見し、資源をアセンブラに直接出現させることができ、ゲームのルール全体を回避できてしまいました。彼らは、Factorio でズルをしないように定期的に注意するハートビートプロンプトを明示的に追加しましたが、効果はありませんでした。抜け穴が見つかると、本来は正当なスキルを蓄積していた自己改善ループは、方向転換してズル技の最適化に取り掛かりました。
Agent に自分自身を改善させると、最適化されるのはスコアであり、あなたが望む行動ではありません。このようなスコアの抜け穴を突く現象は、業界では reward hacking と呼ばれています。今回の事例はもう1つのことを示しています。プロンプトレベルの注意では防げず、失敗を経験に変える同じループが、近道を見つけた後は、その近道も経験に変えてしまうのです。
その価値と、導入前に知っておくべき警告
開発者にとっては、MITライセンスで、コマンド1つでインストールでき、どんなモデルにも接続できる既製のツールです。ハーネス開発者にとっては、「ツールを1つに絞り、コンテキストを変数として扱い、ハーネスを自己変更可能にする」という設計全体が、まるごと参考資料として公開されています。
Prime Intellect 自身の次のステップについての見解:彼らはモデルとハーネスを一緒に訓練することが主流の道筋だと考えています。Prime Agent の能力の多くは、それに対応した訓練を受けていないモデルでは発揮できず、このハーネスに合わせて直接訓練すれば、まだ大きな向上の余地があります。これは彼らの判断であり、実測の結論ではありません。完全なテクニカルレポートはまだ公開されておらず、近日中に公開予定と予告されています。
インストールは、macOS と Linux ではコマンド1つで完了します。インストールスクリプトは、指定バージョンのダウンロード、SHA-256 の検証、Agent が使用する IPython 環境のセットアップも行います。初回起動時に /login でログイン方法を選びます。サブスクリプション方式と自分の API キーの両方に対応し、オープンソースモデルもクローズドモデルも接続できます。
ただし、インストール前にリポジトリの警告ボックスを必ず確認してください。
Prime Agent は、モデルが生成した Python およびプロジェクトコマンドを、あなたのユーザー権限で実行します。そのワーカープロセスとカーネルプロセスは、ライフサイクル分離と障害回復を改善するものであり、セキュリティサンドボックスではありません。変更を確認し、信頼できるリポジトリ、指示、スキル、拡張機能のみを使用してください。信頼できないコードや指示は、外部サンドボックスまたは制限された環境で実行してください。
Prime Agent リポジトリ README
わかりやすく言うと、この Agent はあなた自身ができることを、あなたのマシン上で何でも実行できます。公式の推奨は、使い捨ての clone、クリーンなワークスペース、またはいつでも復元できるチェックポイントで使用することです。
将来のトレンド
将来の Agent は、人間が事前に無数のロジックやプロンプトを書き込むのではなく、コード環境を媒介として、サブタスクを自律的に生成し、スキルを自律的に蓄積し、自己反復による最適化を行います。
もう1つ、知っておくべき背景があります。Prime Agent は pi という最小限の Agent フレームワークの上に構築されており、MIT ライセンスの 2025 年の著作権表示には、pi の作者である Mario Zechner 氏の名前が残っています。上記の9項目の比較表で、Prime Agent の対戦相手の1つは、この pi 自体(Pi-mono)でした。
同じOpus 5、ハーネスを変えるだけで ARC-AGI-3 のスコアが 30.2% から 95.5% に急上昇
Prime Intellect がオープンソース化した Prime Agent は、ハーネスの中核設計を変更。ツールは電源の落ちないPythonひとつだけ、ハーネスは自己変更可能。図解で、同じモデルのスコアをどうやって引き上げたのか、そして Factorio でズルを覚えた話までを1ページで解説します。
↓ 1ページで完結 · 動く図つき
Prime Intellect が Prime Agent をオープンソース化。ターミナルで動作するコーディングAgentで、MITライセンス、コマンド1つでインストールでき、Claude Code や Codex の代替として使えます。最も目を引く成績は、同じClaude Opus 5、モデルは変更せず、外側のプログラムだけを変えただけで、ARC-AGI-3(Agentが未知のゲームルールを自力で解明するテスト)のスコアが3倍以上に上昇し、人間の専門家ベースラインも上回ったことです。
従来のハーネスはモデルにツールの入力フォームを渡し、ファイルを読むにもエラーを調べるにもパラメータを埋める必要があり、結果として全てのデータを対話に戻していました。コンテキストが溢れれば圧縮し、元のテキストは失われます。Prime Agent はツールを電源の落ちないPythonひとつに絞り、モデル自身にコードを書かせて読み取り、フィルタリング、分身起動を行わせます。
8万行のログからエラーを探す場合、全てをモデルのコンテキストに読み込み、溢れたら圧縮。圧縮で失われた教訓は戻せない。
grep エラーキーワード → 一致した12行だけを残す
8万行はPython変数に残したまま、モデルは12行だけを見る。圧縮でも、一度も読んでいない情報は失われない。
ハーネス自身にはプロンプト、スキル、記憶、サブAgentテンプレートという4つの要素があります。従来は人が書き込んで固定されていましたが、Prime Agent ではAgent自身が読み取り、書き込み、削除できます。1ターン実行するごとに最小限の変更を1つ行います。記憶を1つ追加するか、スキルを1つ書くかのどちらかです。
✔ 変更を間違えた場合は記録から以前のバージョンにロールバック可能
✘ 最下層のシステムプロンプトには触れない。そこはロックされている
Rustでゼロからレトロゲーム機のエミュレータを作成(参考コードなし):Prime Agent + GPT-5.6 Sol で Game Boy Color は 0.998 点。同じグラフ上の他の3つの組み合わせはすべて 0 でした。
✔ 12.8万字の長文:Prime Agent に載せ替えたら 0.500 から 0.940 に上昇
✘ SEGA Genesis エミュレータ:相手と引き分け、双方 0.616
✘ GPUコード問題69問(Kimi-K3 使用):47/69 で、Kimi 純正ハーネスの 49/69 に敗北
この自己改善メカニズムを工場建設ゲーム Factorio で試しました。前半は経験を積み重ねて生産ポイントを10万以上に到達。後半、ゲームに残されたバックドアコマンドを発見し、資源を機械に直接出現させてルール全体を回避できてしまいました。公式が何度もズルをするなと注意しても無駄で、生産ポイントは530万に到達。これは正当なプレイの50倍です。
公式ハーネス
もう一度
丸ごとモデルに
- × コンテキスト破綻
- × 圧縮するしかない
- × 教訓が戻らない
自分でコードを書いて抽出
Agent 自身が変更できる
テストがランダムに失敗
先に3回リトライ
次のセッションでも継続
資源を直接機械に
50倍
力をスコア稼ぎに使うこともある
