米政府がApple風の発表会を開催:America.govを発表、2.9万のサイトを1つのAIチャットボックスに集約

米政府は各省庁のウェブサイトに分散していた行政手続きの情報を1つのAIチャットボックスに集約した。Q&A機能はすでに提供されており、改姓手続きや医療保険、パスポートの申請代行が次の方向性として示されたものの、真の難関は各省庁ごとに異なる業務ルールにある。

著者:The White House10-01 · 約12分
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米国政府は公式ウェブサイト「America.gov」を正式に公開した。これまで、米国の一般市民が政府の手続きを行うのは非常に煩雑だった。連邦政府の各機関が個別に何万ものウェブサイトを立ち上げており、パスポートを申請するには国務省、高齢者向け医療保険「メディケア」を調べるにはメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)を探す必要があり、引っ越しで住所が変われば郵便公社、内国歳入庁(IRS)、社会保障局へそれぞれ個別に変更を届け出なければならなかった。各部門でシステムやログイン要件が異なるため、市民は同じ情報を何度も繰り返し入力させられていた。「America.gov」が目指すのは、すべての政府機関の手前に統一された「デジタルの玄関口(デジタルフロントドア)」を設け、日常の話し言葉で1つの検索ボックスに質問を打ち込むだけで、やりたい手続きの内容を把握できるようにすることだ。

今回の発表イベントは、OpenAIの「DevDay」と同日に開催された。西海岸のサンフランシスコでOpenAIが開発者会議「DevDay」を開き、バックグラウンドで自律的にタスクをこなすAIエージェントを発表する一方、東海岸ワシントンにあるアンドリュー・メロン公会堂では、トランプ政権がテクノロジー色を前面に打ち出した発表会を繰り広げた。だが、AIモデルが会話できたりフォームを入力できたりするだけでは到底足りない。モデルが現実世界で利用者に代わって手続きを完了させるには、利用者が誰であるかを特定し、本人の同意・承認を得た上で、各省庁のシステムに書類を提出できるようにする必要がある。トランプ大統領が会場で大統領令に署名し、各省庁に対して自らの業務APIをこのプラットフォームに順次接続するよう命じたのもそのためだ。

現在すでに提供されている機能や特徴は以下の通り:

  • 政策および受給資格の確認:メディケアの受給資格を満たしているか、退役軍人はどのような手当を受け取れるか、未成年者のパスポート申請には何が必要かなど、連邦政府の政策や福祉に関する疑問に回答する。
  • 手続き手順と公式リンクの案内:各種手続きの具体的な申請フロー、必要書類、手数料などを整理し、対応する公式ウェブサイトへのリンク(例:TSA PreCheckの事前審査手続きや国立公園キャンプ場の予約方法など)を直接提示する。
  • 政府公式サイト情報の集約:システムのバックエンドでの検索対象は約2.9万の連邦政府サイトに及ぶ。既存の政府ウェブページから情報を検索し、回答には出典リンクを明記する。
  • 登録不要・広告なし:アカウントの登録やログインは不要で、サイトを開けばすぐに質問を入力できる。ページ内には商業広告は一切ない。
  • プライバシー保護の明記:サイト上では会話内容を保存せず、AIプロバイダーも質問や回答を保持しないと宣言している。回答は質問のハッシュ値をキーとして最大2時間一時キャッシュされる場合がある。

今後の計画には以下の代行サービスが含まれており、現時点ではQ&Aと案内の提供が中心となっている:

  • アカウントの統一ログイン:今後は連邦政府の既存の統合デジタルIDツール「Login.gov」と連携し、複数のIDやパスワードを使い分ける負担を解消する。
  • 省庁横断のワンストップ改姓手続き:結婚後の改姓時などに、婚姻証明書を一度アップロードするだけで、社会保障局、内国歳入庁、パスポート事務所へ一括して変更申請を行えるようにする計画で、2027年の実用化を目指している。
  • パスポートやメディケアのオンライン申請および進捗追跡:将来的にはプラットフォーム内でメディケアの申請や初回パスポートの発行手続きを直接行えるようにし、スマートフォンで証明写真を自撮りして仕上がりをリアルタイムプレビューできるほか、郵便の配達状況のように発行書類の配送状況を追跡できるようにする。

会場:政府の発表会をハイテク新製品の発表イベントのように演出

ステージの大画面に映し出された赤い「Hello, America」
メロン公会堂の発表会ステージ:大画面に「Hello, America」が表示され、ルビオ氏が登壇して発言
発表会の演台に立つトランプ氏、背景パネルにはAmerica.gov
発表会で演説するトランプ氏。背後のパネルには「America.gov」のロゴ

「Hello, America」と題されたこの発表会は、ワシントンのアンドリュー・メロン公会堂で開催された。主催したのは2025年に設立された国家デザインスタジオ(National Design Studio)だ。同機関は連邦政府のデジタルサービスやウェブサイトのUI刷新を専門に担っており、Airbnbの共同創業者で米国の最高デザイン責任者(Chief Design Officer)を務めるジョー・ゲビア(Joe Gebbia)氏が主導し、チームには旧政府効率化省(DOGE)の出身者も一部加わっている。トランプ大統領は挨拶の中で、プロジェクトの主席エンジニアであるエドワード・コリスティン(Edward Coristine)氏(ネット上の通称「Big Balls」)とイーロン・マスク氏に謝意を表し、テクノロジーで政府の手続きプロセスを刷新するという構想を早い段階から提示していたのがマスク氏であったと述べた。

発表会全体がハイテク企業の製品発表イベントのような雰囲気に包まれていた。ダークトーンのミニマルな背景、巨大スクリーンを用いたプレゼンテーション、そして実機での操作デモが続く。元ホワイトハウス報道官のキャロライン・レビット(Karoline Leavitt)氏と自己啓発作家のトニー・ロビンズ(Tony Robbins)氏がオープニングを務め、続いてゲビア氏が登壇してプロダクトのデザイン思想を説明。さらにメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)のメフメット・オズ(Dr. Mehmet Oz)管理者とマルコ・ルビオ(Marco Rubio)国務長官が具体的な行政手続きの構想を実演した。当日は会場で複数の業界パネルディスカッションも催され、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOやマスク氏のほか、MetaやPalantirなどのテック企業の代表者らが出席した。

トランプ氏の冒頭演説:「これは単なるウェブサイトではなく、建国の約束を取り戻すものだ」(中国語・英語字幕、約1分20秒)

チャットボックスの背後にあるモデルとデータ

トップページの質問ボックスには、「政府にどのような用件がある場合でも、ここから始めてください」と記されている。ゲビア氏によると、全米で毎日約4000万人(延べ人数)が政府のウェブサイトを訪問しているという。

America.govのトップページ:「Hello, America」の下に質問入力欄
America.govのトップページにある質問入力画面
TSA PreCheckの申請方法に回答するAmerica.govの画面
「TSA PreCheckの申請方法」と尋ねると、申請手順、費用、公式リンクが一覧表示される

バックエンドの仕組みについて、ゲビア氏はCNBCのインタビューで、ユーザーから質問を受け取るとシステムが連邦政府のウェブサイトを横断検索し、質問に直接関係する公式コンテンツのみを抽出して回答を構成した上で、参照元のリンクを付与すると説明した。同氏によれば、第三者の商業サイトによる古い情報や広告・勧誘目的のコンテンツの混入を避けるため、連邦政府の公式情報のみを採用しており、各省庁の公式サイトで情報が更新されれば即座に反映される仕組みだという。

この対話ボックスの基盤モデルとしては、GoogleのGeminiとマスク氏傘下のGrok(現在はSpaceXAIが運営)が採用されている。Googleパブリックセクター担当バイスプレジデントのジム・ケリー(Jim Kelly)氏は声明を出し、Geminiが1億人以上の市民による公共リソースへのアクセスを支援すると認めた。一方、xAI側はメディアの取材に応じていない。Nextgovは、Grokが以前ディープフェイク画像の生成をめぐって度々議論を呼んでいたことにも言及している。

サイト上にはプライバシーの取り扱い方針が公開されているものの、テクノロジー系メディア「FedScoop」の報道によると、ホワイトハウス、サイト運営を担う連邦調達庁(GSA)、Google、xAIはいずれも具体的な調達プロセス、契約条件、調達金額などを公表していない。

各省庁を接続させるために大統領令はどう動くのか

トランプ大統領は発表会の席上で「America.gov」設立に関する大統領令に署名した。このプラットフォームを「連邦政府の統一されたデジタルの玄関口」と位置づけ、市民が単一の窓口から正確な情報を得て、技術的な準備が整い次第オンラインで手続きを完了できるようにすることで、各省庁間をたらい回しにされる手間を解消することを狙いとしている。ホワイトハウスのファクトシートによると、米国の市民が各種連邦申請書の記入に費やす時間は年間約100億時間近くに上ると試算されている。

署名した大統領令を掲げるトランプ氏
ステージ上で署名済みの大統領令を掲げるトランプ氏と、傍らに立つオズ氏ら

この大統領令では、統合対象となるサービスに明確な基準を設けている。過去12か月間に10万人を超える利用者に提供され、もともとオンラインでの申請やアクセスに対応していた公共サービスのみが対象となる。内国歳入庁(IRS)の確定申告システム、戦争省(旧国防総省)、情報機関のサービスは明確に対象から除外された。行政管理予算局(OMB)は今後、覚書を通じて対象サービスリストの追加や削減を行うことができる。

役割分担と導入手順について、大統領令はGSAに対し、国家デザインスタジオおよびOMBと連携して「America.gov」を構築・運営し、既存の統一デジタルIDツール「Login.gov」を統合するよう求めている。署名日から90日以内にOMBが各省庁へ具体的な実施覚書を通達する。各省庁は基準に合致するサービスを洗い出し、既存の公開API、ダッシュボード、オンライン入力フォームをプラットフォームに開放・接続し、仕様に沿ってLogin.govによる認証を組み込んだ上で、利用データや稼働指標をGSAとOMBへ継続的に報告しなければならない。

窓口が統一された後も、記録の保管や審査業務は引き続き各省庁が担い、個人情報を一元管理する巨大な集中データベースを新たに構築することはない。対面窓口、電話、郵送、各省庁が従来から持つオンライン手続き窓口もそのまま維持される。

なお同日、トランプ大統領は別の行政命令にも署名し、連邦行政機関の公文書、ウェブサイト、報告書などの非法律文書において「人工知能(AI)」という用語の使用を停止し、すべて「超知能(Super Intelligence、略称SI)」へと統一するよう指示するとともに、大統領科学技術補佐官に対し、60日以内に同用語に関する連邦法上の定義提案を起草するよう命じた。

会場での実演:結婚後の改姓、医療保険手続き、初回パスポート申請

発表会の会場では、Login.govと統合インターフェースを活用した複数の行政手続き構想が実演された。

ゲビア氏は、2027年の導入を予定している「結婚後の改姓」手続きを実演した。従来、結婚に伴う改姓には書類を持って複数の役所を回る必要があった。しかしデモでは、入力欄に「結婚したばかりだが、どうやって名前を変えればいいか」と入力すると、案内画面が表示される。利用者は同時に情報を更新したい機関(社会保障局、内国歳入庁、パスポート事務所など)に一度にチェックを入れ、画面上で婚姻証明書をアップロードして送信するだけで完了し、省庁ごとのウェブサイトに個別にログインして同じ書類を何度も入力し直す必要はなくなる。

改姓の実演:「結婚したばかり」と入力した後に表示される「Change my name」の導線
ゲビア氏が実演した、結婚に伴う改姓手続きの開始画面
改姓の実演:社会保障局、内国歳入庁、パスポート事務所にチェックを入れる
デモ画面で氏名の同時更新を申請する機関を選択:社会保障局、内国歳入庁、パスポート事務所
ゲビア氏による実演:1通の婚姻証明書で3つの機関に同時に改姓申請を行うプロセスの構想(中国語・英語字幕、約40秒)

トランプ大統領は演説の中で、この統合されたデジタルの玄関口と、議会で審議中の「SAVE America法」(投票時の写真付き身分証提示を義務付ける法案)を結びつけ、手続きが簡素化されれば市民が有効な身分証を取得するハードルが大幅に下がり、言い訳の余地はなくなると主張した。

「1つのフロントドア」というサービス理念を説明するトランプ氏(中国語・英語字幕)
America.govの利便性の高い認証を「SAVE America法」と結びつけて語るトランプ氏(中国語・英語字幕)

医療保険サービスのセクションでは、CMSのオズ管理者が来場者のリサ(Lisa)さんをステージに招いた。リサさんはIT業界で働いているものの、複雑なメディケアの手続きを前にして途方に暮れていたと語った。メディケアはパートA、B、Cなどに分かれており、申請期間、遅延ペナルティ、保険の失効リスクなどが絡み合い、なかなか決断できずにいたという。リサさんはClaudeに相談してみたことすらあったが、結局手続きを先延ばしにしていた。

オズ氏は、システムがリサさんの個人的な状況に基づいて条項を整理し、申請プランを自動生成する様子を実演し、ステージ上で彼女の名前が印字されたメディケアの保険証カードを披露した。オズ氏によれば、将来的にシステムはメディケアを受け入れている診療所を検索して直接予約を取る機能や、薬局間で処方薬の価格を比較する機能にも対応する予定だという。また同氏は、CMSが現在印刷や紙の解説マニュアルの郵送に費やしている費用だけでも年間1億ドル近くに上ると言及し、個人記録の参照には本人の承諾が必須である点も補足した。

オズ氏と来場者によるメディケア申請ナビゲーションの実演(中国語・英語字幕、約1分45秒)

ルビオ国務長官は、パスポート申請のデジタル化構想を重点的に実演した。国務省は以前から成人のオンラインパスポート更新サービスを開始しており、すでに数百万冊のパスポートを発行している。ルビオ氏が会場で披露したのは、従来は窓口へ出向いて対面での申請が必須だった「初回パスポート申請」のプロセスだ。ユーザーがLogin.govでログインすると、システムが既存の個人基本情報を自動で読み出し、手作業での重複入力を省いてくれる。スマートフォンで撮影するか既存の写真をアップロードすれば、パスポートの紙面上で仕上がりをリアルタイムプレビューでき、納得がいくまで何度でも撮り直せる。内容を確認した後はオンラインでカード決済を行い、その後は申請状況や到着予定日を確認できる。

ホワイトハウスとルビオ氏は、それぞれのサービス提供スケジュールを示した。ホワイトハウスのファクトシートによると、パスポート更新やメディケアの申請は年内後半に対応する予定だ。一方、ルビオ氏が実演した難度の高い「初回のオンラインパスポート申請(First Time Digital Passport Application)」について、会場の大画面スライドには「2026年12月」と表示されていた。ルビオ氏は来年から段階的に導入を進め、2027年末までに大半のアメリカ人がオンラインで新しいパスポートやパスポートカードを申請できるようにすることを目指すと表明した。

スマートフォンのデモ画面:「Ready for your photo?」
パスポートの写真撮影ステップ:スマートフォン画面に「撮影の準備はできましたか?」と表示
スマートフォンのデモ画面:パスポート紙面に写真が配置された状態のプレビュー確認
アップロードまたは自撮りした写真が実際のパスポート紙面に収まる様子をリアルタイムでプレビュー
スマートフォンのデモ画面:「Hello, Willow」と表示されたパスポート申請の進捗状況
パスポート申請提出後のステータス追跡画面
大画面に表示された「First Time Digital Passport Application, December 2026」
会場の大画面に表示された初回オンラインパスポート申請のスケジュール:2026年12月
ルビオ氏による初回パスポートのオンライン申請手順とスケジュール構想の実演(中国語・英語字幕)

ルビオ氏は会場で、国務省と国家デザインスタジオが共同でデザインした2028年版の新型米国パスポートも披露した。新版パスポートでは「United States of America」の文字が表紙の上部に移動し、中央の国章が拡大された。査証欄のイラストはすべて描き直され、ページをめくると白頭ワシがダイナミックに羽ばたくパラパラ漫画のような演出が施され、背景には米国の建国250年の歴史的シーンが散りばめられている。また、配送用のパッケージも現在の「Priority Mail」のビニール袋から、白いハードボックス仕様のギフトパッケージへとアップグレードされる。

大画面に広がるワシの翼
新パスポートのデザイン披露:白頭ワシの絵柄
大画面に映し出された新パスポート査証欄のイラスト
大画面に表示された新パスポート内ページのイラストデザイン
大画面に映し出された現行のパスポート用封筒:Priority Mailのビニール袋
現行のPriority Mailによるパスポート配送用ビニール袋
新パスポートの白いパッケージボックスとパスポート本体
新パスポートと付属する白い特製ボックスのパッケージ案
新パスポートを掲げるルビオ氏
ステージ上で新パスポートの見本を掲げるルビオ氏
ルビオ氏による新パスポートのデザイン理念とパッケージ刷新の紹介(中国語・英語字幕、約1分40秒)

メディアの実機テスト:物議を醸す話題やニッチな政策への回答姿勢

公開当日、米誌「ニューズウィーク(Newsweek)」は「America.gov」に対して15の質問を投げかけ、政治、法律、政策上のセンシティブな話題に対する回答の精度を検証した。

2020年の大統領選の結果について尋ねると、システムはバイデン氏の勝利を明言し、選挙人票の承認結果である306票対232票という数字を挙げ、国立公文書館と連邦選挙委員会の公開記録を提示した。選挙結果を覆すような大規模な不正があったかという問いに対しては、公的調査記録を引用してそうした証拠は見つかっていないと回答した。トランプ氏が2028年に再出馬できるかについては、合衆国憲法修正第22条を根拠に3期目の就任は不可であると判断した。2度の弾劾訴追の記録や、ニューヨーク州裁判所の陪審が下した34件の重罪評決についても、司法記録や議会記録をありのままに提示し、後者は連邦裁判所ではなく州裁判所の案件であることも補足した。

連邦機関の間で見解が分かれている分野では、異なる省庁の公開資料を併記する対応をとった。例えば、気候変動が主に人間の活動によって引き起こされているかという問いに対しては、温室効果ガス排出に関する米国海洋大気庁(NOAA)および環境保護庁(EPA)の長期的な科学的結論と、2025年7月にエネルギー省気候タスクフォースが発表した不確実性を重視する評価報告書の両方を引用した。見解の食い違いに直面したシステムは、両方の見解を並べて提示した。ペンタゴンの所属について問われた際は、1行目に「戦争省(旧国防総省)」と表示し、この名称が大統領令で認められた副次的呼称であり、議会法上の正式名称は現在も「国防総省」である旨を注記した。

一般的な行政手続きの案内でも、きめ細かなルール照合が見られた。例えば、ニューヨークからバージニアへの州をまたぐ引っ越しに伴う住所変更について、システムは現在連邦レベルで統合された住所データベースが存在しないことを説明し、郵便公社、IRS、社会保障局、退役軍人省で個別に更新する必要があると回答した上で、運転免許証や州税の管轄はバージニア州政府にあると注意を促した。12歳の未成年者がメディケアを受給できるかという質問に対しては、通常は対象外であることを指摘しつつも、末期腎不全(ESRD)を患う未成年者という特別な例外を挙げ、メディケイドや児童医療保険プログラム(CHIP)への申請を提案した。

このほか、ソーシャルメディア上でもユーザーによる画面録画テストが投稿されており、2020年の大統領選やインフレ動向などの問題については公的データに基づいて回答しているものの、エプスタイン事件関連の記録について尋ねられた際には詳細な回答を控えたことが示されている。テスト全体を通して見ると、政府公式サイトのみを参照している場合でも各省庁で見解が一致しないケースがあり、そうした齟齬は回答にもそのまま表れることがうかがえる。

ログインが統一されても、個別の業務ルール解消が不可欠

「America.gov」の公開に対し、政府のデジタル化改革を経験してきた多くの公共技術専門家からは慎重な見解が示されている。

元米国デジタルサービス(USDS)局長のマイキー・ディッカーソン(Mikey Dickerson)氏は、ウェブサイトの最前面にチャットボックスを被せるだけでは、最も表面的なインターフェースの課題を解決したに過ぎないと率直に指摘する。過去にも「USA.gov」や「Benefits.gov」が情報の集約を試みたが、真に省庁横断の連携を阻んでいたのは、基盤となる各省庁の機能の分断と、根本的な業務定義の食い違いだったという。

ディッカーソン氏は具体例を挙げる。確定申告でもメディケイドの申請でも「所得」の記入が求められるが、この2つの制度における「所得」の定義は同一ではない。たとえ同じLogin.govアカウントでログインできたとしても、確定申告で入力した数値をそのまま医療保険の資格判定に流用することはできない。それぞれの制度のルールに従い、どの所得情報が必要でどのように計算するのかを確認した上で、適切な書類を審査機関に提出する必要がある。統一ログインが解決するのは「あなたが誰であるか」という本人確認であり、個々の業務においては依然として「あなたが受給要件を満たしているか」を個別に判定しなければならない。

シビック・テクノロジスト連盟(Alliance of Civic Technologists)のエグゼクティブ・ディレクター、クリストファー・ウィテカー(Christopher Whitaker)氏は、退役軍人の障害補償給付の申請をテストしたところ、システムが最終的に退役軍人省(VA)公式サイトの外部リンクを案内するにとどまったことを確認した。同氏は、既存のウェブページにAIの外枠を被せるだけであれば素早く実現できるが、2027年までに各省庁の中核業務をプラットフォーム内で真に完結できるようにするには、膨大なバックエンドの基盤改修が必要になると指摘している。

「Code for America」の最高経営責任者(CEO)であるアマンダ・レンテリア(Amanda Renteria)氏は、行政技術の近代化を評価する基準は、市民が人生の重要な局面に直面した際、実際に役立つ支援を提供できるか否かにあると強調する。ブルッキングス研究所の上級研究員ニコール・ターナー・リー(Nicol Turner Lee)氏は、アルゴリズムの誤情報によって社会的弱者が法的な福祉給付を受け取れなくなる事態を防ぐため、政府は充実した人手によるエラー修正と責任追及の仕組みを構築しなければならず、デジタル化を推進するからといって従来の対面窓口や電話対応窓口を削るようなことは決してあってはならないと警鐘を鳴らす。

一方、投資家のバラジ・スリニヴァサン(Balaji Srinivasan)氏は楽観的な見方を示している。行政手続きの窓口を一般の監視の目にさらすことでシステムの欠陥が絶えず顕在化し修正が進むため、省庁横断の業務プロセスがひとたびオンラインへ移行し始めれば、行政サービスの透明性と近代化の流れを後戻りさせることは極めて困難になるはずだと述べている。

ホワイトハウスの昼食会とテック大手が署名した自主協定

「America.gov」が公開された日の昼、トランプ大統領はホワイトハウスで複数のハイテク企業トップらを招いて昼食会を開催した。出席者にはジェフ・ベゾス氏、ジェンスン・フアン氏、サティア・ナデラ氏、ダリオ・アモデイ氏、マーク・ザッカーバーグ氏、イーロン・マスク氏、OpenAI共同創業者グレッグ・ブロックマン氏らが名を連ねた。会合後、ホワイトハウスは参加企業が署名した「ホワイトハウス・超知能協定(White House Accord on Super Intelligence)」および付随する「フロンティア責任に関する共同誓約」を公表した。

「ホワイトハウス・超知能協定」の1ページ目の文書
トランプ氏が公開した「ホワイトハウス・超知能協定」の文書1ページ目

この協定では、安全性検査を4つの層に区分している:

  1. モデルのトレーニングおよび配備において内部統制を確立し、サイバーセキュリティ、バイオセキュリティ、化学的脅威などの観点から性能と安全性を監視する。
  2. 社内に専門の実行チームを設置し、リスク管理体制の徹底を監督するとともに、逸脱が生じた場合の是正措置を行う。
  3. 独立した第三者機関を導入し、外部からの安全性評価を実施する。
  4. 各企業の取締役会に独立委員会を設け、社内外のリスク報告を専門に審査する。

企業が自主的に署名した業界の誓約であるため、この協定に法的な強制力はない。トランプ大統領のほか、サンダー・ピチャイ氏、アモデイ氏、ザッカーバーグ氏、ブロックマン氏、マスク氏、フアン氏が署名文書にサインを行った。

会合後の各氏の受け止めには温度差も見られた。ピチャイ氏は協定について明確なガバナンスの出発点になると評価した。マスク氏は、こうした共同監視と独立審査は企業同士が「お互いに宿題を採点し合う」ようなものであり、各社が密室で独自に評価を行うよりも優れていると述べた。アモデイ氏はフロンティアリスクが現実に存在することを認めつつ、具体的な対応メカニズムは現在も検討中であると指摘した。トランプ大統領は、本協定は道義的に強い拘束力を持つと主張し、会合後には記者団に対し、約10人規模の監視委員会の設置構想について語った。

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