Claude Designの開発者本人が明かす誕生秘話と、現場で使える10のテクニック

最も直感に反する3つの心得:一度に10案を要求、詳細が不要な時はワイヤーフレームから、最後の微調整は自分でドラッグ。
著者:Anthropic 官方博客07-27 · 9 分で読了⚑ チュートリアル
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深掘り · 小互解説
1分でわかる要約
  • エンジニアがAIを活用して開発スピードを飛躍的に上げる中、デザイナーは従来通りの速度にとどまっていました。この落差に直面したAnthropicのプロダクトデザイナーNate Parrottが開発したのが「Claude Design」です。本記事では、彼が日常的に実践している10のノウハウを余すところなく解説します。
  • 彼が行き着いた答えは「HTML」でした。Webページのフォーマットと思われがちですが、スライドや動画、PDFでできることはWebページでもすべて実現でき、ClaudeはHTMLの記述を非常に得意としています。
  • 10のテクニックを作業順に整理:着手前4つ、案の作成時4つ、仕上げ2つ。最も直感に反するのは仕上げのステップで、微調整は自分でドラッグして直接編集することでトークンを消費せずに済みます。
  • 見た目を明確に指示しないと、一目でそれとわかるデザイン(オフホワイトの背景、サビオレンジのアクセント、大きな斜体セリフ体)が生成されます。Anthropicの公式ドキュメントもこのデフォルトの存在を認めており、「クリーム色を使うな」といった大雑把な指示では別の固定カラーパレットに切り替わるだけです。
⚑ 本記事の資料はAnthropic公式ブログによるもので、著者はClaude Designを開発したプロダクトデザイナー本人です。手法や製品の位置付けは彼の視点に基づいています。原文で触れられていない背景は本サイトで補足調査し、本文中には「【本サイト追記】」の表記を付し、出典は文末にまとめています。
著者は誰か

Claude Design诞生秘话:エンジニア2人に追いつけなかったデザイナー

この記事の著者Nate Parrottは、Claude Designの設計者本人です。本記事では「彼自身の課題からこのツールがどのように生まれたか」「彼が普段どのように活用しているか」「毎日使っている10のテクニック」の3点について、順番に解説していきます。

まずは彼の直面した課題から紹介します。2025年秋、Nate ParrottはClaude CodeのVS Code版を担当する唯一のプロダクトデザイナーとして、2人のエンジニアと共に作業していました。9月末にベータ版が公開され、11月にOpus 4.5がリリースされると、チームは次々と新機能をリリースしていきました。2人のエンジニアはAIを活用して開発速度を飛躍的に向上させましたが、彼は従来のスピードのまま、設計図を1点ずつ手作業で描き続けていたのです。

彼が最初に試した解決策はごく自然なものでしたが、うまくいきませんでした。ターミナル上で動くClaude Codeの画面はテキストで埋め尽くされていたため、彼はテキストの文脈に沿ってターミナルの出力をコピーし、スクリーンショットを添えて「この機能を追加したいのでデザインしてほしい」と指示しました。しかし、出力結果は期待外れでした。彼は終業後の時間を使って1ヶ月ほど試行錯誤を続けました。

最終的に行き着いた答えは、誰もが知っていながら見落としがちな事実でした。ClaudeはHTMLの記述が非常に得意であるということです。私たちはHTMLをWebサイト専用のフォーマットと考えがちですが、Webページにはスライド、動画、PDFなどあらゆる要素を盛り込め、クリックやアニメーションにも対応できます。そこで彼は静的な設計図を求めるのをやめ、Claudeに直接HTMLを出力させ、左側にチャット、右側にプレビューを表示する専用インターフェースを構築しました。

HTML
彼の手にかかれば、HTMLはキャンバスになる
スライド
ランディングページ
クリック可能なプロトタイプ
アニメーション
ワンペーパー PDF
動画エディターアニメ作成が苦手だったため、まずこれを作らせた
これら6つはすべて本記事で紹介されている実際の成果物です。

単にHTMLを出力するだけでは不十分で、プロダクトデザインには自社ブランドの理解が必要です。そこで彼はAnthropicのフォント、カラー、アセット、設計原則をプロンプトとして組み込み、生成物が最初から規約に沿うようにしました。このツールをチームに共有すると、デザイナーたちは即座にクリック可能なプロトタイプ(clickable prototype)の作成に活用し始めました。従来のツールでは画面の全状態を描いて手動でワイヤーフレームを繋ぐ必要がありましたが、このツールならアセットを渡して「クリック可能にして」と伝えるだけで完了します。

その後、Anthropic Labsチームのアイディア提案ミーティングで、参加者全員がこのツールを使ってその場でスライドを作成しました。自分の発表順を待つ間に会議の合間で作った人も多くいました。この会議をきっかけにLabsチームに人員が割り当てられ、正式な製品として開発が進められたのがClaude Designです。

【本サイト追記】:Nate ParrottはArcブラウザを手がけるThe Browser Companyの創設デザイナーであり、2025年2月にAnthropicへ入社しました。Claude Designは2026年4月にリリースされ、公式の6月発表によると初週で100万人以上が利用しました。現在はPro、Max、Team、Enterpriseのサブスクリプション向けにプレビュー版として提供されており、追加料金なしで利用できます(Enterpriseプランではデフォルトで無効化されており、管理者による有効化が必要です)。

彼は2つの限界についても明確に述べています。画像の生成は行わない:画像モデルを搭載していないため、ロゴの作成には適していません。既存のロゴを読み込ませるのが正しい使い方です。本番環境のソフトウェア開発にはClaude Codeを使用する:Claude Designは初期の構想や方向性のすり合わせを担当し、両者の間で行き来が可能です。

Claude Design
初期構想・キャンバス上で編集
← /design-sync デザインシステムを読み込む
→ デザイン確定後、実装へ引き継ぎ
Claude Code
本番コード記述・実装ツールの開発
引き継ぎ時、Claude Codeは既存の作業を引き継いで進めるため、スクリーンショットからやり直す必要はありません。ターミナルから離れたくない場合は、/design コマンドを使ってClaude Code内で直接作成・編集が可能です。※2つのコマンド名は公式発表に基づく【本サイト追記】。
実際の成果物

彼が毎日Claude Designで作成している4つの成果物

最初の例は、彼のアプローチを象徴しています。彼はアニメーターではないため、まずClaude Designに専用の動画エディターを作らせ、そのエディターを使ってアニメーションを作成しました。「まずAIに使いやすいツールを作らせ、そのツールを使って作業を進める」という手順は非常に参考になります。

Claude Designのオープニングアニメーション。製品登録時に再生される映像で、自作の動画エディターを介して制作されました。

残りの3つの例も同じ手法に基づいています。まずスライダー操作ができるツールを作成させ、そのツールを使って言葉で表現しにくい要素を調整します。

地下鉄時刻表アプリ。調整可能なモーションコントロールを備え、動的な物理的手触りを微調整できます。
Instagram風のカラーコントロール。文字で色を説明する代わり、スライダーとプリセットでアプリの配色を調整できます。
ツール内でツール自体を再設計。同僚のHelenやAndrewと共に試作したエディターの新しいデザインで、実際にリリースする予定はなく、製品の可能性を探るためのアプローチです。
10のテクニック

Claude Design開発者が教える10の実用的テクニック

ここは本記事で最も実践的なセクションです。原文では10の項目がそのまま並べられていますが、本サイトでは作業手順に合わせて「着手前の準備」「作成時のコントロール」「仕上げの手戻り防止」の3段階に再構成しました。各フェーズがそれぞれ異なる無駄を解決します。

着手前
4項目

防ぐべき無駄:曖昧なままの指示。要件が曖昧だと出力も曖昧になり、10回修正を繰り返すより最初から明確に伝える方が効率的です。

案の作成時
4項目

防ぐべき無駄:単一方向のみの試走。スタイルを固めないと手戻りが発生し、1つの方向に固執すると袋小路に陥りがちです。

仕上げ
2項目

防ぐべき無駄:数ピクセルの調整をAIに頼むこと。こうした微調整は自分でドラッグした方が早く、コストもかかりません。

※3つのフェーズへの分類は本サイト独自のものであり、原文にグループ分けはありません。【本サイト追記】
フェーズ1着手前 · 4項目

1. 要件を固めてからプロンプトを送信する

このノウハウは直感に反するかもしれません。多くの人はPCの前に座り、AIの迅速さと低コストに頼って試行錯誤しながら考えます。しかし彼は逆のアプローチをとり、プロンプトの作成に多くの時間をかけ、PCから離れている間に考えを整理します。

例え話

スーパーでの買い出しに似ています。家で献立と必要な食材を決めておけば10分で買い物が終わりますが、店に着いてから考えると迷いが生じ、余計なものを買ってしまう上に時間も無駄にしてしまいます。

彼の3つの実践方法
  • ソファに横になり、スマホのメモアプリに必要な要素を書き出す
  • 散步中に音声メモを録音し、文字起こしデータを貼り付ける
  • Claude Design内の音声入力ボタンを使って口頭で伝える

どのような表現方法を使うにしても、重要なのはPCに向かう前に目的を明確にしておくことです。そうすれば、PCの前に座った時にClaudeが確実なアイデアを実行に移せます。

Nate Parrott

2. 繰り返す作業をデザインシステムとして蓄積する

ブランドファイルやアセットをアップロードすると、Claudeがそれらを分析してデザインシステム企業のカラー、フォント、ボタン、カードなどの再利用可能な部品やルールをまとめた仕組み。新規ページ作成時もこの部品ライブラリから使用します。を生成します。これにより、すべての作業を白紙からではなく、定義済みの設定からスタートできるようになります。

例え話

レゴの標準ブロックのようなものです。形状とサイズが固定されているため、直感的に組み立ててもしっかり噛み合います。手作りの粘土ブロックだと、接合するたびに削って調整しなければなりません。

アップロードすべき素材
  • ロゴ、フォントガイドライン、カラーパレット
  • 完成度の高いスライド、既存ページのスクリーンショット
  • 繰り返し使用するあらゆるアセット

3. 手元にある実際のコンテキストを見せる

既存のアプリやWebサイトのデザインを行う場合は、GitHubを連携させます。Claudeは既存のコンポーネントやページを起点として利用するため、数回の試行で既存のデザインとほぼ同じトーンの成果物を作成できます。また、Web検索や社内システムからのデータ取得にも対応しています。

例え話

リフォーム業者への依頼に似ています。「リビングは30平米くらいで南向き、出窓がある」と口頭で説明するより、部屋の写真を撮影して見せる方が、天井高やフローリングの色、コンセントの位置を正確に把握してもらえます。

4. 画面上の対象を直接指定して指示する

どの要素を指しているか長文で説明するよりも、キャンバス上の要素をクリックして直接口頭で伝える方が効果的です。

テキストで位置を説明する場合
  • 「右側のカード内にある、タイトル下2行目のボタンをもう少し小さくし、色も薄くして」
  • 対象の要素を誤認識するリスクがある
要素をクリックして直接伝える場合
  • ボタンをクリック →「もう少し小さく、色も薄く」
  • 対象が明確で誤解が生じない
同じ修正指示でも、テキスト入力では位置の長文説明が必要ですが、クリック指定なら一言で完了します。
操作手順
  • PCやスマホで音声入力機能を有効化する
  • キャンバス上の変更したい要素をクリックし、「comment」を選択してコメント入力欄を開く
  • 直接話しかけると、音声がテキストとして入力欄に反映される
フェーズ2案の作成時 · 4項目

5. フォントとカラーを事前指定し、AI任せにしない

方向性を指定しない場合、Claudeは自身のデフォルトスタイルを選択します。スタイルの指定を怠った際の影響が明確であるため、本記事で最も実践的なテクニックと言えます。

避けるべきデザインとはどのようなものでしょうか。『The New Yorker』の2026年6月の記事では、その典型的な特徴が以下のようにまとめられています。

指定しない場合に出力されるスタイル
  • オフホワイトやクリーム色の背景
  • サビオレンジ(Rust Orange)のアクセント
  • 大きな斜体セリフ体(装飾付きフォント)与ハイライト
  • 極端に広げられた小見出しの文字間隔
  • 株価ティッカー風のスクロールテキストバー
  • 角丸四角形が入れ子になったデータパネルとネオンのグロー効果
明示的に指定すべき要素
  • フォント名とカラーコードを指定する
  • 参考画像をムードボード複数の参考画像をまとめたコラージュ。「目指すデザインの方向性」を視覚的に伝えるために使用します。(moodboard)としてアップロードする
  • フォントと配色の組み合わせを複数提案させ、最適なものを選択する
  • ブランド素材をデザインシステムとして定義する(ステップ2参照)
デフォルトスタイルの特徴は『The New Yorker』のKyle Chaykaによる2026年6月24日の報道に基づいています【本サイト追記】。右側の指定手法は彼が推奨する実践方法です。

同記事では具体的な事例が紹介されています。フリーランスデザイナーのMatt Ström-Awnによると、最近2社のクライアントが持参した営業提案資料の構成が酷似していました。1ページ目は明るい背景にミッションステートメントと3つの要点、2ページ目は4つの四角形による市場分析、3ページ目は中央配置の「our move」というキャッチコピーでした。彼は「ロゴが違うだけで、まるで同一企業が作成したかのようなデザインだった」と述べています。

Anthropic自身もユーザー向けガイドラインでこの傾向を認めています。

(モデルは)強力なデザインの傾向を備えており、一貫したデフォルトのスタイルを持っています……このデフォルト傾向は常に存在します。

Anthropicガイドライン(『The New Yorker』より引用)

注意すべき重要な注意点:同ドキュメントでは、「クリーム色を使うな」といった漠然とした否定指示は、モデルを別の固定カラーパレットに切り替えるだけであり、デザインの多様性を生み出さないと指摘されています。そのため、「〜にするな」ではなく「〜にしてほしい」と具体的なフォントやカラーを指定することが重要です。

6. 10個のバリエーションを要求し、良い部分を組み合わせる

彼は一度に10パターンの提案を求めています。大半は採用できなくても問題ありません。優れたものが1〜2つ含まれていれば十分です。その後、「B案のベースにD案の要素を加え、2つを融合させたバリエーションを5つ作成して」と指示します。

10
一度に10案を要求
→8案をスキップ
2
良案を2つ選定
→B+D
5
融合案を作成
ミックスを行うには比較対象となる2つの異なる案が必要です。
例え話

内見に似ています。不動産業者に10物件をまとめて案内されれば、日当たりと間取りのどちらを優先すべきかが即座に判断できます。1物件ずつ見学して次の約束を入れる方法では、5物件目を見る頃には最初の物件の印象が薄れ、感覚的な判断になりがちです。

7. 言葉で表現できない場合はスケッチを描く

レイアウトのイメージがあっても言葉で説明しにくい場合は、紙に簡単な構成図を描いて写真をアップロードする方が、長文で説明するよりも効果的です。四角枠、矢印、簡単な注記で十分であり、綺麗に描く必要はありません。

8. 詳細が不要な段階ではワイヤーフレームを作成する

ワイヤーフレーム色とフォントを指定せず、枠組みと配置のみを定義したスケッチ。「どの要素をどこに置くか」を決定するために使用します。の作成を指示することで処理速度が向上するだけでなく、Claudeの意識を視覚的な詳細ではなく全体構造に集中させられるというメリットがあります。

例え話

建築における間取り図の作成と同じです。初期フェーズでは部屋数やキッチンの配置を決定することが重要であり、壁の色は後から検討できます。パース図から議論を始めると、間取りの検討がおろそかになり、ソファの色などの詳細に議論が集中してしまいます。

フェーズ3仕上げ · 2項目

9. 仕上げの微調整は手動で行い、AIに再指示しない

配置変更、削除、テキスト編集、拡大縮小、カラー変更などの細かな調整は、直接編集ツールを使って手動でドラッグ操作を行い、Claudeへの再プロンプト送信を避けます。

彼が挙げる2つの理由

直接編集はトークンを消費しません。また、サイズ調整与位置合わせといった微調整は、目視で確認しながら行う方が確実です。

2つ目の理由の背景:「もう少し右に寄せて」と指示しても、モデルは「少し」の具体量を推測する必要があり、結果を確認して再指示する手間が発生します。手動でドラッグすれば、視覚的に確認しながら一回で正確に配置できます。

トークン消費の削減は一見副次的なメリットに思えますが、外部のデザイナーから最も多く寄せられる不満点でもあります。

【本サイト追記】・外部検証:テックメディア『The New Stack』の2026年4月の検証によると、デザインシステムの作成、ニュースサイトのプロトタイプ構築、数箇所の修正、解説動画の制作のみで、週間利用枠の半分以上を消費したと報告されています。6月19日の記事において、ABM IndustriesのAIプロダクトデザイン責任者Alfie Martinは「トークンコストが高く、Claude Designは大量のトークンを消費します。コンポーネントを自作したり細部を自分で修正したりする方が早い場面も多い」と指摘しています。

Anthropicは6月のアップデートでこの点を改修し、利用枠を独立計算からClaude Code、チャット、Coworkとの共通プール方式に変更しました。公式発表によると、1セッションあたりの平均トークン消費量は従来より削減されています。

この記事では言及されていない重要なポイントがあります。「一度に10案を要求する」手法は、最もトークンを消費するアプローチです。2つのテクニックを組み合わせることで本来の成果を発揮します。利用枠は方向性の模索に投入し、ピクセル単位の微調整には使わないという原則です。最初の10案で方向性を確定させ、確定後の位置調整とフォントサイズ変更は手動で行うことで無駄な再生成を防ぎます。

10. キューを活用し、処理完了を待たずに指示を送る

Claudeが完全な出力を完了するのを待つ必要はありません。複数のメッセージをまとめて送信したり、前の処理が実行中の状態で次の指示を出したりすることが可能です。思いついた指示を順次送信すれば、キュー順に処理されます。

まとめ

10のテクニック チェックリスト

✅ 10のテクニック チェックリスト
おわりに

描かれたすべてのものは、「生きている」べきである

記事の最後で、彼はBret Victorによる2012年の講演を紹介しています。彼のスタイルはスライドを使わず、ステージ上でインタラクティブに動くデモを直接実演するというもので、多くのデザイナーが彼のプレゼンテーションに影響を受けてこの業界に入りました。

講演のタイトルは『Stop Drawing Dead Fish』(直訳:「死んだ魚を描くのはやめよう」)です。このタイトルは、絵描きが描いた紙の上の魚は動かない「死んだ魚」であるが、実際の魚は泳ぎ、逃げ、人間の動きに反応する「生きている」存在であるという観察に基づいています。コンピュータには描かれた魚を活かす能力があるにもかかわらず、私たちは静的なコンテンツを作り続けてきました。

人間は生きており、行動し、反応します。コンピュータの中の生成物もまた、許可されさえすれば、生きていて行動し反応することができるのです……。

(中略)私たちが描くすべてのものは、デフォルトで「生きている」べきなのです。

Bret Victor · Stop Drawing Dead Fish(2012)

この言葉を記事の冒頭に照らし合わせると、それが全体を通したメインテーマであったことに気づきます。

彼が最初に直面した課題の本質は何だったのでしょうか。それはデザイン稿が「静的(死んでいる)」であった点です。画面を1コマずつ作成し、各状態を並べて手動でリンクし、動いているかのように見せかけていました。一方、エンジニアが提供する成果物はインタラクティブに反応する「動的(生きている)」なものです。両者の開発スピードの差は、静的コンテンツと動的コンテンツの差に由来していました。

したがって、彼の解決策は「より速く静的デザインを描く」ことではありませんでした。静的デザインを描くのをやめ、直接インタラクティブな成果物を生成するアプローチへ切り替えたのです。HTMLが最適なメディアであった理由は、クリック可能で動き、レスポンシブに対応し、URL共有ですぐに検証できる「動的」な特性を備えていたからです。

彼が好む作品も同様の性質を持っています。インタラクティブなシミュレーションを備えたドキュメント、対話型のスライド、図表であり動画でもあるコンテンツ、デザイン稿であり自らエディターでもあるツールなどです。これらは従来のカテゴリには収まりません。従来のカテゴリは静的コンテンツのために定義されたものだからです。

10のテクニックもこの視点から見ると一貫性を持っています。要件の整理、スタイルの確定、バリエーションの選定、手動での微調整といった意思決定は人間が担当し、大量生成と実行はAIに委ねます。「それがどうあるべきか」を人間が決定し、AIがそれを「活かす」役割を担うのです。

【本サイト追記】:同講演は2012年5月16日にサンフランシスコのSIGGRAPHで初めて発表され、同年11月27日にExploratorium(体験型科学博物館)で録音・収録されました。上記の引用文の間の記述は本サイトにて一部省略し、「(中略)」と表記しています。
出典
How the product designer who built Claude Design uses it to explore ideas before building themNate Parrott · Anthropic·claude.com·2026-07-24
本サイト注
埋め込み動画4点はいずれも原文に掲載されたAnthropic公式YouTubeチャンネルのものであり、キャプションは本サイトによる執筆です。文中の例え話(買い出し、レゴ、リフォーム、内見、建築)は理解を助けるために本サイトが追加したもので、原文には含まれません。原文で触れられていない背景は本サイトで補足し、「【本サイト追記】」のタグを付しています(著者の経歴、Claude Designのリリース時期・利用人数・提供範囲、/design-sync および /design コマンド、デフォルトデザインの特徴とMatt Ström-Awnの事例、トークン消費の検証データ、Bret Victor講演の背景情報)。10のテクニックの3フェーズ分類および3点の模式図は本サイト独自による再構成です。
↑ 本文ここまで
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