Anthropicが独自の個人向けAgent「Claude Duet」を発表:仕事を自らフォローし、ノートPCを閉じても作業を継続
連携済みアプリの確認やブリーフィング・作業結果の作成を自律して進め、判断が必要な事項だけを提示。外部への送信、決済、署名、削除には事前の承認が必要です。
Anthropicが、仕事を能動的にフォローし、ユーザーに代わってタスクを実行するスタンドアロン型のAgentアプリ「Claude Duet」を発表しました。
主要な機能と特徴は以下の通りです:
- 能動的なフォローとモーニングブリーフィング:毎朝、連携している各アプリの重要な動向を自動で整理して要約を作成。連携済みアプリを定期的に確認し、必要な場合のみ通知を送ります。
- デバイスを離れても継続動作:タスクはAnthropicが管理する独立したクラウド仮想マシンおよびブラウザ上で実行されるため、スマートフォンをオフにしたりノートPCを閉じたりしても、進行中の作業が中断されることはありません。
- 高リスクな操作は人手で確認:複数ツールをまたぐ情報参照、分析、下書きの作成などは自律して行いますが、外部へのメール送信、加盟店への支払い決済、書類への署名、データの削除を行う前には、必ず処理を一時停止してユーザーの承認を待ちます。
- 既存のClaudeの記憶とスキルを継承:従来のClaudeアカウントに蓄積された記憶(Memory)、スキル、連携アプリをそのまま引き継ぎ、テキスト入力と音声入力の両方に対応した1つの継続的なスレッド内で、その場での指示と長期的なタスクを一元管理できます。
約1分39秒、元の映像と音声のまま掲載しています。前半は製品の流れを紹介し、後半はAnthropic社員による利用フィードバックで構成されています。画面に表示される業務内容、金額、結果はデモ用のものであり、実際の運用実績ではありません。
やるべきことを自ら先に見つけ出す
通常のAIチャットでは、人間が先に課題を見つけて会話を始めるのが一般的です。これに対してClaude Duetは、対応が必要なタスクを自ら見つけてユーザーに提示し、ユーザーがデバイスから離れている間も作業を完了まで進めます。
Duetの中核には「Claude Opus 5.5」が採用されており、どのタスクを保留できるか、どれを事前に準備できるか、どれをユーザーに判断してもらう必要があるかを見極めます。
Anthropicが公開した初期テスターのフィードバックには、こうした能動性を実務で活用した例が示されています:
- スケジュールの不整合を事前に通知:不動産仲介業を営むJess氏は、毎朝Duetからその日のブリーフィングを受け取っています。ある日、Duetがカレンダーを定期確認していた際、内見の予定が誤った日付に入っていることに自ら気づき、速やかに警告を出しました。Jess氏は、これこそ自分からわざわざ質問しなくてもAIに能動的に気づいてほしかったことだと述べています。
- 複数システムにまたがる情報の統合:南フロリダで約110名の従業員を抱える飲食店マネージャーのAmin氏は、Duetを会計、カスタマーサポート、マーケティング業務に活用し、店舗ごとの請求書照合を行っています。同氏は、Duetがこれらの業務をまとめることで「タブを100個も開く必要がなくなった」と評価しています。
- 移動予定を踏まえた事前提案:ブランドストラテジストのMya氏の予定には、見込み顧客との電話ミーティングが入っていました。Duetは事前の背景資料を用意するとともに、その通話予定がフライトの直前に設定されていることに気づき、会議時間の変更を自発的に提案しました。
Mya氏に届いたのは日程変更の提案であり、実際に予定を調整するかどうかは本人が判断します。
なぜオフラインや電源オフでも作業が進むのか
その鍵は、計算環境がユーザーの手元にあるスマートフォンやノートPC上で動いているのではないという点にあります。Duetにタスクを指示すると、クラウド上の仮想マシンとそこに付属する独立したブラウザが引き継いで作業を進めます:
- Opus 5.5が手順を判断:業務目標を理解し、実行ステップを計画。どのタイミングでツールを呼び出し、いつ作業を止めて指示を仰ぐべきかを判断します。
- クラウドツールが具体的に実行:クラウド仮想マシンや独立したブラウザ環境でアプリのデータを取得し、具体的な操作を処理。ドキュメント、グラフ、ダッシュボード、財務予測、Webアプリケーションなどを準備します。
スマートフォンやPCは、指示を出し重要な通知を受け取るための窓口にすぎません。端末の電源を切ったり、ノートPCを閉じたり、一時的にオフラインになったりしても、クラウド仮想マシンがバックグラウンドでタスクを進行させ続けます。作業が完了した際やユーザーの承認が必要になった際には、デバイスが再びオンラインになった時点で通知が届きます。
能動的な確認は無制限の「リアルタイム監視」ではない
Duetの能動性は、バックグラウンドで休むことなくリアルタイムに常時監視し続けるものではありません。
公式の説明によると、Duetは連携済みアプリを「数時間おき」にチェックします。このような間隔が設けられている主な理由は、絶え間なくチェックを続けるとサブスクリプションプランの利用枠が急速に消費されてしまうためです。どのタイミングでメッセージを送るかについては、モデルの判断能力によって「ユーザーの注意が必要なもの」と「後回しにできるもの」が振り分けられます。Anthropicもテストからのフィードバックをもとに、この判定基準の調整を続けています。
これはつまり、2回のチェックの合間に急な変更や緊急の連絡が入った場合、Duetが見落とす可能性があることを意味します。ユーザー自身が最も重視する内容や、通知を受け取りたい頻度をDuetに直接指示しておくことも可能です。
権限の分離:自律して行うこと、絶対に実行しないこと
AIを企業の基幹ツールに接続する際、最大の懸念となるのは勝手な操作を行ったりデータを漏洩させたりしないかという点です。Claude Duetは、アクションの種類やデータごとに明確な権限境界を設けています。
「未払い金の回収フォロー」を例に:請求書の整理や文面作成は先行して実行できますが、実際にリマインドを送信するには承認が必要です。
連携アプリの読み取り、未払い請求書の確認、データ分析、リマインド案の起草。
メッセージの送信、支払い、文書への署名、コンテンツの削除は、必ず事前に提示して承認を待ちます。
口座間の資金移動や証券取引は、例外なく禁止された操作に分類されます。
クレジットカード番号・公的個人識別情報:新しい分類器と安全プロンプトにより、送信要求を拒否するよう設計。
健康情報・個人の財務情報:ユーザーから明示的な送信指示があった場合のみ許可。
公式ルールに基づいて整理した概念図であり、製品の実際のUI画面や内部処理順序を示すものではありません。
1. アクションの権限レベル
- 自律実行:情報の読み取り、データの照合・分析、下書きの作成や提案の準備を自律して行います。
- 人間の承認が必須:外部へのメッセージ送信、支払いの決済、書類への署名、コンテンツの削除を行う前に、Duetはこれから実行する具体的な操作を画面に提示し、ユーザーの承認を待ちます。例:
- メールやSlackメッセージの送信
- 文書や契約書への署名
- コンテンツの削除
- 購入・決済:StripeのLinkウォレットを使用する場合、Duetはまず購入商品について確認を求め、Link側で支払いの承認ポップアップを表示した上でバーチャルカードを介して決済を完了させます(これにより実際のカード番号が露出するのを防ぎます)。また、ShopifyのShop Payによるオンライン決済にも対応しています。
- 禁止されている操作:たとえユーザーが承認を与えたとしても、Duetが決して実行しない操作もあります。これには口座間の資金移動や証券取引が含まれます。加盟店へのオンライン決済は購入に伴う支払いであり、口座間の直接送金とは根本的に異なる操作カテゴリとして区別されています。
2. 機密情報の保護メカニズム
Agentがユーザーに代わって資料を読み、外部向けメッセージを作成する際には、情報の行き先を常に判断する必要があります。Duetは専用の新しい分類器(Classifier)と安全システムプロンプトを導入し、メッセージを個別に検査し、機密情報の流出を防ぐために使います:
- 最高レベルの機密情報:クレジットカード番号や政府発行の身分証明情報などについては、外部への送信要求を直接拒否するように設計されています。
- その他の機密情報:医療・健康データや個人の財務状況などは、ユーザーから明示的な送信要求があった場合にのみ送信が許可されます。
3. 認証情報の分離とセキュリティ保護
企業向けアプリと接続した後の認証情報の管理について、DuetはClaude Managed Agentsと同様の設計思想を踏襲しており、モデル自体がログインパスワードやアクセストークンに直接触れることはありません。Managed Agentsの仕組みでは、パスワードや認証情報は実行環境の外部にあるセキュアな仕組みで保管され、Agentがツールを呼び出す際は仲介サービスを介して認証が行われるため、モデルにパスワードを渡す必要がありません。
さらに、Duetには以下のような対策が講じられています:
- プロンプトインジェクション対策:ブラウザ操作(browser-use)などに関連する研究の防御成果を取り入れ、外部のWebページやメールに隠された不正な指示によってAgentが本来の目的から逸脱したり、権限外の行動を取ったりすることへの対策を講じています。
- アクション分類器(Auto mode classifier):Duetがユーザーから指示されていない操作ステップを勝手に実行してしまうのを防止します。
Anthropicはレッドチームによる対抗テストを実施し、外部のセキュリティ企業によるペネトレーションテスト(侵入テスト)を依頼したほか、Duetを公開バグバウンティプログラムの対象に含めています。これらの措置は権限逸脱や情報漏洩のリスクを低減するためのものであり、実際の利用にあたっては依然として重要な結果に対する確認が必要です。
アプリコネクタの実際の守備範囲
Claude Duetは、Claude Marketplaceで提供されている6,000件以上のコネクタやプラグインを利用できます。
Gmail、Googleカレンダー、Slack、Shopify、QuickBooks、Gusto、HubSpotといった主要なオフィス・業務システムが含まれています。画像内には1Passwordのアイコンも含まれていますが、保存された認証情報の利用サポートは開発中であり、現時点では未提供であることが公式に確認されています。
コネクタの役割は、認可を受けたAgentが対応する外部アプリを操作できるようにすることです。「6,000件以上」という数字はマーケットプレイスに登録されているコネクタやプラグインの総数であり、それぞれのソフトウェアの全機能が完全に動作検証されていることを意味するものではありません。
具体的な業務シナリオにおいて、Duetは以下のような典型的なワークフローに対応できます:
- 未払い請求書の確認と督促:Intuit QuickBooksやStripe内の未払い請求書を検索し、督促のリマインド文面を作成。ユーザーが内容を確認・承認した後に外部へ送信します。
- 給与計算と人事処理:Gustoで勤務時間、賞与、経費精算項目を入力し、人間が確認して支給を実行できるよう給与明細を準備します。
- 顧客フォローと契約締結:HubSpot内の顧客情報や取引履歴をもとにフォローメールを作成。LinkedInでの求人投稿案を作成して承認後に公開したり、DocuSignを介して署名用の契約書を準備したりします。
- マーケティング素材の作成とECサイト運営:Canvaを使って新商品の告知をSNSプロモーション用素材に変換。Shopifyでのストア構築や管理を行います。なお、公開前にページをプレビューできるより高度なShopify向けビジュアルエディタも近日提供予定と公式にアナウンスされています。
また、ユーザーの許可を得た上で1Passwordに保存されたログイン情報を利用してWebサイトに自動ログインする機能も、近日中に提供されることが公式に発表されています。ユーザーはいつでも個別のアプリとの連携を解除できます。
利用要件、対応プラットフォーム、利用枠の消費ルール
利用を検討している専門職や小規模事業の経営者は、現行の以下の利用ルールを把握しておく必要があります。
1. 利用資格と対応プラットフォーム
- 現在の提供段階:リサーチプレビュー(Research Preview)の段階にあり、公式ウェイティングリストから順番待ち登録を行う必要があります。
- 対象プラン:初期提供は米国在住のClaude ProおよびClaude Maxの個人向けサブスクリプションユーザーに限定されています。現時点ではTeamプランやEnterpriseプランはプレビュー対象に含まれていません。
- 対応端末・インターフェース:iOSおよびAndroid向けの独立したネイティブアプリに対応。PC環境からはWeb版のclaude.aiを通じてアクセスします。
2. 利用枠の消費メカニズム
リサーチプレビュー期間中、Claude DuetはProおよびMaxプランの料金に含まれており、Claudeの他の機能と利用上限枠(Usage limits)を共有します。その消費の仕組みは通常のチャットとは異なります:
- バックグラウンドの定期確認自体が利用枠を消費:Duetが連携済みアプリをバックグラウンドで定期的に巡回・確認する動作そのものが利用枠としてカウントされます。
- 複雑な大型タスクは複数ステップの処理が発生:財務予測モデルの構築やプレゼンテーション資料の作成といった規模の大きいタスクを任せる場合、バックグラウンドでモデルとのやり取りやツール操作が何往復も実行されるため、より多くの利用枠を消費します。
通知設定で調整できるのは「どのような内容を受け取りたいか」「どの頻度で連絡が欲しいか」という点であり、バックグラウンドでの確認動作自体は変わらず利用枠を消費します。
まずは結果を検証しやすいタスクから始める
初期のリサーチプレビュー版である現段階のClaude Duetには、現実的な制約も存在します:
- 文脈の誤解や優先度の判断ミスの可能性:長い対話の文脈を誤解したり、タスクの緊急度の見極めにズレが生じたりすることがあるほか、2回の定期チェックの合間に生じた新たな変化を見落とす可能性があります。
- 仕事・ビジネス用途に特化:主に業務タスクを想定して設計されているため、チケット手配のような個人の雑務・おつかいをこなす能力は相対的に高くありません。
- 付属ブラウザの画面は直接確認不可:現時点ではDuetが使用している内蔵ブラウザの画面を直接見ることはできません。ただし、実行されたタスクのステップや生成された具体的な成果物は確認可能です。
実際の運用においてDuetが本当に業務の効率化につながるかどうかは、見落としや誤判断の発生頻度、そして各操作の確認・承認に人間がどれだけの時間と手間を割く必要があるかによって決まります。初期の試用段階では、作業範囲が明確で結果を検証しやすい業務から導入するのが適しています。
