SpaceXAIがGrok 4.7を発表 モデル競争の主戦場は「長時間タスク」へ

より大規模なベースモデル、強化学習期間の延長、そして数時間に及ぶタスク向けの訓練セットにより、Grok 4.7はAIの競争軸を単一ターンの応答から複雑な作業の継続的な完遂へと移行させた。

著者:SpaceXAI09-23 · 約10分

SpaceXAIが、コーディング、エージェント、および専門知識業務向けの最新フラッグシップモデル「Grok 4.7」を発表した。標準版はGrok 4.6の価格と出力速度を維持しており、すでにCursor、Grok Build、およびxAI APIで利用可能となっている。

xAIは今回のアップグレードを単なるベンチマークスコアの向上とは位置づけず、数時間を要するタスクへと訓練の重点をシフトさせている。すなわち、モデルがツールを持続的に呼び出し、自身の作業を検証し、長いコンテキストの中でも目標を見失わずにいられるかどうかにフォーカスした。Grok 4.7を理解するには、まずこの変化から押さえる必要がある。

Grok 4.7が解決を目指すのは、なぜ長時間タスクが途中で破綻するのかという問題

短時間のタスクは、モデルの能力について錯覚を生みやすい。関数を1つ書く、コード片を解説する、1ページの文書を生成するといった作業は、通常1〜2ターンで結果が出る。真の実力差が現れるのは長時間タスクだ。モデルはファイルを継続的に読み込み、ツールを呼び出し、エラーを処理し、前提となる制約を記憶しながら、数十ステップを経た後でも自分が何を解決しているのかを把握し続けなければならない。

Grok 4.7ではそのために、Grok 4.6より大規模なベースモデルを採用し、強化学習の訓練期間を延ばし、数時間を要する課題へとタスクの構成比率をシフトさせた。xAIはこの改善を2つの点に集約している。自身の作業をより綿密に検証すること、そして長いコンテキストをより適切に管理することだ。

さらに本モデルは、Grok Bot harnessをネイティブに理解するよう訓練されている。Harnessとは、モデル外部の実行環境と捉えることができる。会話の構成、ツールの呼び出し、コマンドの実行、およびタスク状態の保存を担うものだ。ここではGrok Bot独自のアプローチを対象としており、会話や一般的な知識業務において、タスクがどのように構成され推進されるのかをモデルにより深く習熟させることを目的としている。

推論設定としては、low、medium、high(デフォルト)、xhighの4段階のreasoning effortが提供されている。これにより、チームは日常的なタスクには低いエフォートを充て、複雑なデバッグ、長連鎖のエージェント、専門的なナレッジワークにより多くの計算リソースを振り分けることができる。

7つのベンチマークすべてで4.6を超過、最大の飛躍はターミナルタスクに現れる

Grok 4.7、Grok 4.6、GPT-5.6 Sol、Fable 5.1の価格と7つのベンチマークの比較
xAIが公表した価格とベンチマークの比較。各モデル列は図中に表記されたeffort設定を使用している。

この表はGrok 4.7の立ち位置を最も明確に示している。すべての項目で首位を獲得しているわけではないが、前世代と比較して「こちらが向上した代わりに、あちらが低下した」というようなトレードオフは見られない。

  • 長時間コーディング:CursorBench 4.0は40.4%から46.3%へ向上。
  • ソフトウェアエンジニアリング:DeepSWE v1.1は65.2%から71.0%へ向上。
  • 数時間のターミナル作業:Terminal-Bench 4.0は20.3%から38.0%へ、17.7ポイント増加し、相対的な伸びは約87%。
  • 電気工学:EEBenchは53.0%から64.0%へ向上。
  • 法務タスク:Harvey Legal Agentは15.8%から19.6%へ向上。
  • 臨床推論:HealthBench Professionalは48.5%から56.7%へ向上。
  • 数時間のオフィス業務:AA Briefcase v1.1は1,546から1,657へ向上。

なかでもTerminal-Benchの変化は、今回のリリースにおける訓練の主軸を最も如実に物語っている。これは1回のコード補完ではなく、ターミナル環境の中でモデルが複数ステップにわたる作業を持続的に推進できるかを測る指標だ。38.0%という数値はこの種のタスクがまだ完全に「解決」されたわけではないことを示しているが、4.6と比較すると、長大なシーケンスの中でモデルが有効な作業を維持できる確率は明らかに高まっている。

横断的に見ると、Grok 4.7の強みは価格設定と一部の専門タスクに集中している。EEBenchやHarvey Legal Agentでは表中のFable 5.1やGPT-5.6 Solをリードしている一方、Fable 5.1はCursorBench、Terminal-Bench、AA Briefcase、HealthBenchでより高い数値を出し、GPT-5.6 SolはDeepSWEとHealthBenchでわずかに上回っている。比較にあたっては列名にも留意が必要だ。Grok 4.7はxHigh、4.6はHigh、他の2モデルはMaxを使用しており、DeepSWEではGrok 4.7はHigh Effortと表記されている。

長時間能力の第2の着地点:完全なドキュメントの納品

コーディングと専門的なドキュメント作成は一見異なる業務に見えるが、作業が長期化するにつれて直面する失敗の性質は共通している。前者はファイル、依存関係、実行状態を常に一致させ続ける必要があり、後者は資料、数値、論点、レイアウトを終始一貫させ続けなければならない。モデルが初期の制約を1つでも忘れると、後半の成果物は全体として破綻してしまう。

これこそが、xAIがknowledge workとcodingを同列に扱った理由である。Grok 4.7に求められるのは、局所的に正しい内容を書くことだけでなく、分散した資料を前後の整合性が取れたドキュメントやプレゼンテーションへとまとめ上げることだ。

AA Briefcaseは弁護士、看護師、金融アナリストなどの専門職が直面する数時間規模のオフィス業務をモデルに処理させるベンチマークであり、GDPvalも同様に専門的なナレッジワークを検証する。公式チャートにおいて、Grok 4.7のGDPval Eloは1,695を記録し、Grok 4.6の1,605を上回り、Fable 5.1 Maxの1,735に迫っている。これはアップグレードの方向性が単に「コードがより書ける」ことにとどまらず、より長大な資料を読み解き、情報を構成し、完全な成果物を産出できるかどうかも含んでいることを示している。

この点は、xAIが自己検証と長大なコンテキスト管理を同時に強調する理由の裏付けでもある。文書作成や分析、プレゼンテーション業務において、課題となるのは表現の巧みさではなく、大量の資料を通じてモデルが一貫した基準を保ち、序盤の根拠を後半の結論へ正確に引き継げるかなのだ。

真の価格優位性は、1タスクあたりに要するコストで決まる

token単価だけを見ても、「各ステップが高いか安いか」しか判断できず、「タスクを完遂するのにいくらかかるか」には答えられない。より高性能なモデルが無駄な試行錯誤を減らせば、高い単価であっても総コストを抑えられる可能性がある。逆に安価なモデルであっても再試行を繰り返せば、長時間のタスクでは割高になりかねない。

CursorBench 4.0のスコアと平均タスクコストの関係図
CursorBench 4.0のスコアと平均タスクコストの曲線。横軸は左から右へ行くほどコストが低下し、縦軸はタスクスコアを示す。

xAIが公表したCursorBench 4.0のプロットには、同一モデルの複数の実行ポイントが含まれている。Fable 5.1はより高い絶対スコアを達成できるものの、それに応じて平均タスクコストも高くなる。同等のコスト帯では、Grok 4.7の曲線はGPT-5.6 SolやSonnet 5を上回っている。これこそが公式の述べる「price-performance frontier(費用対効果のフロンティア)」だ。訴求点はあらゆるスコアで首位を獲ることではなく、一定の予算内でより多くの長時間コーディングタスクを完遂することにある。

実務に携わるチームにとって、最も記録に値する指標もtoken単価から「成功した単一タスクの総コスト」へとシフトすべきだ。モデルの呼び出し、再試行回数、ツール実行、そして人間による介入時間までを含めて初めて、アップグレードが真にコスト削減につながるかを判断できる。

オープンワールドゲーム開発が、関数の実装より困難な理由

オープンワールドゲームは単一の機能ではなく、同時に成立していなければならないシステムの集合体だ。車両は道路上を走行し、歩行者や交通はシーンの状態を共有し、カメラ、マップ、速度UIはプレイヤーの動きに追従しなければならない。個々のパートはどれも決して複雑ではないが、真に難しいのは開発を継続する中でそれらを互いに衝突させないことだ。

SpaceXAIは発表スレッドにおいて、都市のドライビングデモを通じてこのタスクの性質を提示した。画面内の車両、歩行者、道路、建物、ミニマップ、速度UIが意味しているのは、1回限りの関数補完ではなく、複数モジュールの持続的な協調動作である。

SpaceXAIの発表スレッドに含まれるGrok 4.7のオープンワールド都市デモのクリップ。

この例は「数時間に及ぶタスク」を具現化したものだ。モデルには、より多くのコードを生成することだけでなく、目標、状態、そして複数のサブタスク間の関係性を長期にわたって維持し続けることが求められる。Grok 4.7の訓練における刷新は、まさにこうしたタスクが中途で忘却や競合、度重なるやり直しに陥るのを防ぐために行われた。

安全性への取り組みがタスク性能と並んで発表される段階へ

Grok 4.7には、新たなsafeguard stackが導入された。xAIは、危険なリクエストに対する拒絶能力を向上させると同時に、正当なサイバーセキュリティ業務に対する誤拒絶を減らすことを目標に掲げている。

公式からは2つの具体的な検証結果が示された。LatchBioのバイオセキュリティベンチマークでは62.4%を記録し、HackerBench v0.3では高リスクなデュアルユースプロンプトの通過率を3.3%に抑えた。さらにxAIは、一部のサイバーセキュリティパートナーに対し、防御研究を目的とした招待制のGrok 4.7レッドチーム機能の提供を開始した。

この動向が重要なのは、長連鎖のエージェントがより多くのツール権限を獲得するにつれ、セキュリティが単なるチャットUIのコンテンツフィルタリングにとどまらなくなったからだ。モデルがコマンドを実行し、ファイルを操作し、タスクを持続的に推進していく以上、危険な操作の識別能力と正当なタスクの可用性は、プロダクト評価において同時に扱われなければならない。

本番環境への導入に向けた主要構成一覧

項目 Grok 4.7
モデルID grok-4.7
コンテキストウィンドウ 500,000 tokens
ナレッジカットオフ 2026年5月
入力と出力 テキスト・画像入力、テキスト出力、テキスト出力上限なし
API Responses API、Chat Completions
ツール Function calling、Web Search、X Search、Code Execution
推論エフォート low、medium、high(デフォルト)、xhigh
利用可能なチャネル xAI API、Grok Build、Cursor、OpenRouter、Vercel、Cloudflare

標準版はGrok 4.6と同一の価格体系を採用している:

  • 200k prompt tokens未満:入力 $2、キャッシュ入力 $0.50、出力 $6 / 1M tokens。
  • 200k prompt tokens超過:入力 $4、キャッシュ入力 $1、出力 $12 / 1M tokens。

Grok 4.7 Fastは同一モデルをより高速なインフラストラクチャ上で動作させ、出力速度は標準版の2倍、tokenレートも2倍となる。CursorおよびGrok Buildでのみ提供され、Grok Buildの無料枠にはカウントされず、パブリックなxAI APIとしても開放されていない。

モデルの基礎能力に加え、以下の3つの運用設定が長時間タスクの費用と継続性に直結する:

  1. キャッシュを確実にヒットさせる:Responses APIではprompt_cache_keyを設定し、Chat Completionsではx-grok-conv-idを使用することで、同一セッションを同一サーバーへルーティングし、キャッシュミスによる入力料金の全額再請求を回避する。
  2. 肥大化するコンテキストの抑制:ツール呼び出しが多くループが長期化する場合、context compactionと連携して履歴を圧縮し、後続ターンのコストとレイテンシを抑える。
  3. マルチターンの推論状態の引き継ぎ:Responses APIはreasoning.encrypted_contentを返す。このreasoning itemsをそのまま次回のリクエストに含めて送り返すことで、モデルは複数ターンにわたるタスクで当該推論状態を引き継いで利用できる。

米国でのデータレジデンシーを必要とするチーム向けにはhttps://us.api.x.ai/v1も用意されており、推論は米国内に保持され、token価格は10%割増となる。

チームは移行すべきかをどう判断すべきか

Grok 4.7で最もテストする価値があるのは、1回のQ&Aでも、単一のコード補完でもなく、現状で途中で破綻しがちなタスク群だ。複数ファイルにまたがる改修、ターミナルでの連続的なトラブルシューティング、長大な資料の分析、完全なドキュメントやプレゼンテーションの作成などがこれにあたる。

同一の実タスク群を用いて既存モデルとGrok 4.7を比較し、以下の3つの指標を記録するとよい:

  1. エンドツーエンド成功率:所定の検収条件に沿ってタスクが真に完遂されたか。
  2. 成功した単一タスクの総コスト:モデル利用料、再試行、ツール呼び出し、および人間の所要時間の合計。
  3. 人間の介入ポイント:モデルがどの段階で制約を忘れ始め、エラーを繰り返し、あるいは人間による再計画を必要としたか。

成功率が向上し、総コストが下がり、人間の介入が減少して初めて、Grok 4.7の長時間タスク向け訓練は真にチームへの価値へと結実する。このモデルがもたらした変化は、「また一つ賢いチャットモデルが登場した」ということではない。AIモデルの競争を、「より低いコストで、誰が複雑な作業を持続的に完遂できるか」という、いっそうシビアな問いへと押し進めた点にある。

実践用持ち帰り資料

Markdown をスクロールして確認し、コピーしてチーム向けに調整できます。

Markdown · 会員
Markdown を読み込み中…
出典
Introducing Grok 4.7SpaceXAI·2026-09-21·原文を見る
編集部注
ベンチマーク、安全性評価、デモはSpaceXAI/xAIの発表資料に基づく。API仕様と段階制料金は公式開発者ドキュメントに基づく。