実験が示す:AIを使った執筆・創作は「ほどほど」が肝心、多すぎても少なすぎてもダメ
- AIを創作にどれだけ使うべきか——カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究が具体的な答えを出した。「スイートスポット」が存在し、使用量が少なすぎても多すぎても、作品の創造性スコアは下がってしまう。
- 主実験では約150人を対象に、ある学生のために10ドルの元手で始める起業アイデアを考えるという課題を出し、3グループに分けた。ChatGPTを1回だけ使うグループ、4〜6回使うグループ、9回以上使うグループだ。専門家の審査員が独創性・実用性・商業的価値で採点した結果、中間のグループが最も高い平均点を獲得した。319人に対象を変えて再実験しても、結果は同じだった。
- プロのクリエイターでも同じ形が見られる。ファッションデザイナー、ビジュアルアーティスト、作家、アニメーター、技術職、インフルエンサーが1〜7点のアンケートに回答し、それぞれの上司が創造的パフォーマンスを評価したところ、自己評価が4〜5点だった層が最も高い評価を得ていた。
- Huang氏の仮説は、AIが自分自身の経験の枠を超えた視点を与えてくれるというもので、チームが個人よりも創造的になりやすいのと同じ理屈だとする。一方で著者は、いくつかの弱点も補足している。大規模言語モデルは本質的に統計ツールであり、しばしば「平均的な答え」を出しがちで、自分自身の有能感を損なう可能性もあるというものだ。
- この記事を書いたコラムニスト自身も試してみた。ChatGPTと何度かやり取りして、自分一人で書くよりも巧妙なプロットを作り上げたが、その過程でシナプスが必死に新しいつながりを探すあの楽しさが失われたと語り、結局は自分で書くことに決めた。
ChatGPTに映画のあらすじを作らせてみた
Mischaの両親は、自宅の田舎の邸宅で娘の婚約パーティーを開いていた。彼女が乾杯の挨拶をしているとき、グラスが手から滑り落ち、その脚の部分から何かが現れる——小さなメモリーカードだ。この発見が、何十年も前に埋もれていた汚職スキャンダルを掘り起こす。しかもそのスキャンダルは彼女自身の一族にまつわるもので、彼女は正義と忠誠の間で選択を迫られることになる。
これを書いたのは脚本家ではない。New Scientistのコラムニスト、David Robson氏がChatGPTに創作課題を出したのだ。お題はたった一文だった。「彼女の顔がこわばり、目を見開いたまま、グラスが床で砕け散るのを見つめていた」。目標は30分以内に短いプロットの概要を作ることだった。
ハリウッド進出を狙っているわけではない。彼はある研究の結論を試していたのだ。
なぜ読む価値があるのか:同じ研究の中で行われた三回の検証——約150人の実験、319人による第二ラウンドの実験、プロのクリエイターを対象にしたアンケート調査——いずれも同じ「逆U字型」の結果が得られた。中程度の使用量の層が最も良い成績を収めたのだ。最初の二回は人間の専門審査員が独創性・実用性・商業的価値で採点し、三回目の創造的パフォーマンスはそれぞれの上司の評価に基づいている。
三回の検証、いずれも中間層を指し示す
この研究を行ったのはHsuan-Che Brad Huang氏だ。カナダのブリティッシュコロンビア大学で博士課程在籍中に完成させた研究で、現在はシンガポール国立大学ビジネススクールで教鞭を執っている。アルゴリズムが人間の頭脳労働を奪うかどうかについては、ネット上ですでに長く議論が続いている。彼が問いたかったのは別のことだった——AIは私たち自身の創造力を高められるのか、という問いだ。
主実験で使われたのは、創造性を測る定番のテスト課題だった。Mikeという学生のために、10ドルの元手で始められる即興の起業アイデアを考えるというものだ。参加者はまず複数の案を考え、その中で最良のものを詳しく説明するメールをMikeに書く。参加者は約150人だった。
3グループの違いはただ一点、推奨されたAIの使用量だ。1グループはChatGPTを1回だけ、もう1グループは4〜6回のプロンプト、さらにもう1グループは9回以上使った。15分という課題の長さを考えると、9回はかなりの投入量だ。3グループとも全員がAIを使っており、違いは推奨された使用量だけだった。最終的な成果物は人間の専門審査員に渡され、独創性・実用性・商業的価値の3つの観点で採点された。
結果はHuang氏の事前予測とぴったり一致し、中間グループの平均スコアが最も高くなった。これが偶然ではないことを確かめるため、彼はさらに319人を対象に第二の実験を行い、同じ結果を得た。
本業としている人たちでも、形は変わらない
実験室で成り立つことが、実際の仕事でもそうとは限らない。そこで彼は三つ目の調査として、ファッションデザイナー、ビジュアルアーティスト、作家、アニメーター、技術職、インフルエンサーといったプロのクリエイターに話を聞いた。
アンケートでは「私は自分の業務の大半をAIでこなしている」といった項目に、1点(全くそう思わない)から7点(強くそう思う)で答えてもらった。創造的パフォーマンスの評価は本人の自己申告ではなく、それぞれの上司の評価に基づいている。結果は前の二回の実験と一致し、自己評価が4〜5点だった層が最も高い創造的パフォーマンスを示した。
Huang氏はなぜ「適量」が鍵だと考えるのか
Huang氏の仮説は、人間についてのある観察に基づいている。私たちの創造力は、しばしば自分自身の経験に縛られてしまうというものだ。誰もがある種の思い込みを抱えており、それが思考を一定の方向へと押しやってしまう。だからこそ、別の見方に触れることがしばしば有効に働く。
チームが個人よりも創造的になりやすいのは、まさにこれが理由だと考える証拠がある。そしてAIも同じ役割を果たすことができ、自分の経験の範囲外にある視点を与えてくれる。
続けて著者は、この技術が抱えるいくつかの弱点を挙げている。これらを踏まえて、Huang氏は「適量」こそが鍵だと推測しているのだ。
自分では思いつかない角度を提供し、凝り固まった思い込みから引き出してくれる。複数人で考えるほうが一人で考えるより強い理由も、まさにここにある。
- 大規模言語モデルは本質的に統計ツールであり、しばしば「平均的な答え」を出しがちで、人間の脳が持つような個性的な癖に欠ける
- 訓練データに含まれる偏見や先入観も、そのまま取り込んでしまいがちだ
- さらに厄介なのは、自分自身の有能感を損ない、「どうでもいい」という心境を生み出しかねない点だ
ゴルディロックス・ゾーン。あの童話に由来する名前で、少女がクマの家に迷い込んでお粥を味見する話だ。一杯目は熱すぎ、二杯目は冷たすぎ、三杯目がちょうどよい。AIの使い方も同じで、探すべきは熱すぎず冷たすぎない中間の温度だ。
彼自身も一通り試し、それでも自分で書くことを選んだ
冒頭の映画のあらすじに話を戻そう。Robson氏は自分がたどった過程をすべて書き記しており、何度かのやり取りを経て、各ステップで誰が主導権を握っていたかがはっきり分かる。
彼自身の評価では、各ステップでAIが検討する出来事の範囲を広げてくれたことで、限られた時間の中で一人で仕上げるよりも巧妙なプロットを思いつけたのはほぼ間違いないとしている。
しかし彼には三つの留保がある。この三つが牙をむくタイミングはそれぞれ違う。一つは執筆の過程で、一つは提出するその瞬間に、そしてもう一つは何年か経ってから初めて見えてくるものだ。
一点目は図の中で語り尽くされている。二点目についてはもう一言付け加える価値がある。彼は最近短編小説を書き始めており、彼を惹きつけてやまないのは、まさにあの意外に現れるモチーフやテーマで、それらはどういうわけか自分自身の経験や今の感情とつながっている。AIを使ったあの回では、この回路は閉じたままだった。
三点目については、彼自身も確信が持てずにいる。ペンシルベニア州カーネギーメロン大学のGrace Liu氏らが行った研究——タイトルを直訳すると『AIによる支援は粘り強さを低下させ、単独での遂行能力を損なう』——では、人はすぐにAIに依存するようになり、AIがないときの粘り強さが落ちることが示されている。この論文は2026年4月に投稿されたもので、現時点ではまだプレプリントの段階にあり、査読を経て正式発表されてはいない。Robson氏自身は、これが永続的な変化とは限らないと見ているが、それでもこの考えを好んではいない。自分が将来の「怠けた思考」の種を今まいているのかもしれない、というのだ。彼にとって、執筆とはずっと右肩上がりであるべき学習曲線なのだ。
これは、AIを使って創作することを選んだ人を批判しようというものではありません。多くの人はそうすることで自分の知性を損なわずにいられると思います。ですが、もし本当にあの名言の通り、天才とはひらめきよりも汗によるものだとしたら、私はその汗を自分の手でかきたいのです。David Robson、コラム結び
AIで書く:「使うほど良い」から→「中間が一番良い」へ
カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究。三回の検証がいずれも同じスイートスポットを指し示す内容を、図付き一枚で説明します。
↓ 一枚で読み終わる・動く図が一つあります
AIを使って執筆やアイデア出しを手伝わせる話は、ここ数年「AIが人間に取って代わるのか」という議論ばかりだった。この研究を行ったHsuan-Che Brad Huang氏が問いたかったのは別のことだ。AIは人間自身をより創造的にできるのか、そしてどれだけ使うべきなのか、という問いだ。
この問いにはこれまで経験則しかなく、実測に基づく答えはなかった。
AIは自分では思いつかない角度を与えてくれる
✘ 誰もはっきり言えなかったこと
一回の課題でいったい何回使うべきか
感覚頼りの両極端をそれぞれ信じる人がいた。一方は「あまり使うな、引きずられるぞ」、もう一方は「使えるだけ使え、どうせ速い」。どちらが正しいか、これまで実験データはなかった。
研究で測定された結果は「スイートスポット」だった。使用量が少なすぎても多すぎても作品の創造性スコアは下がり、中間層が最も高くなる。研究者は童話の言葉を借りて、これをゴルディロックス・ゾーンと呼んでいる(少女がクマの家に迷い込んでお粥を味見する話で、一杯目は熱すぎ、二杯目は冷たすぎ、三杯目がちょうどよい)。
使うほど → アウトプットが良くなる
「触らないほうがいい」か「多ければ多いほど良い」か、いずれにせよ一直線だと考えられていた。
1回使用 ↓ 4〜6回使用 ↑ 9回以上使用 ↓
逆さのU字カーブ。両端で下がり、中間が最も高い。
次の問いはこうだ。なぜ多く使うほうがかえって悪くなるのか。
主実験では約150人を対象に、Mikeという学生のために10ドルの元手で始める起業アイデアを、15分の制限時間内で考えるという課題を出した。3グループがまったく同じ作業を行い、唯一の違いはChatGPTを何回使うよう推奨されたかだ。成果物は人間の専門審査員に渡され、独創性・実用性・商業的価値で採点された。
一回の実験だけでは何も証明できません。この研究は三回にわたって行われ、後になるほど実際の仕事の現場に近づいていきましたが、結果は変わりませんでした。
本コラムを書いたDavid Robson氏自身も実際に試してみて、5回のプロンプトでChatGPTと一緒に映画のあらすじを作り上げた。そのプロットが自分一人で作るより巧妙であることは認めているが、それでも最終的には自分で書くことを選んだ。過程の中で、脳が必死に新しいつながりを探すあの楽しさが失われていたと語っている。
AIに手伝ってもらおう
引きずられるぞ
どうせ速い
視点が広がらない。
また下がった。
多く使うほど悪くなる?
経験に縛られている
、誰かと一緒に考えるのと同じだ
あの角度は入ってこない。
- × 統計で話すので、出てくるのは「大多数向けの答え」ばかり
- × 訓練データの偏見までそのまま出てくる
- × 成果が自分で作った気がしなくなり、どうでもよくなる
自分だけが知る設定を一つ補う
は自分の手に
探すあの楽しさが、消えた
質問しすぎて自分が不在になるのもダメ。