DeepSeek V4.1 Flash アップデート:ゲームや3D空間の構築が得意になり、より高速・低コストに
レースゲームはスタートからリザルト画面まで走り抜け、紫禁城は視点を切り替えて探索でき、渓谷は時代とともに姿を変える。今回のアップデートで何ができるようになり、利用者の手間をどう減らせるのか。
DeepSeek は V4.1 Flash を更新し、新バージョン V4.1-Flash-1017 をリリースしました。公式ウェブ版およびスマートフォンアプリにも同時に適用されています。
今回のアップデートでは、主に3つの進化がもたらされました:
- 小規模なプロジェクト全体を形にする能力の強化:ミニゲームや立体空間などのコンテンツを、最初から最後まで目に見えて操作できる状態へと組み上げます。
- タスクの高速化とコスト削減:タスク実行時間と生成される文字量がともに削減され、公表されたベンチマークではタスクあたりの平均コストも低下しました。
- 自社開発の検索機能を他社製アプリへ開放:DeepSeek のチャットで利用されているウェブ検索およびページ取得技術が、単独のサービスとして他社アプリ向けに公開されました。
ミニゲームや立体シーンの作成がさらに得意に
ミニゲームを1つ作るには、映像、操作方法、ルールをすべて同時に構築する必要があります。車の3Dモデルがあるだけではレースにはならず、コース、ステアリング操作、速度計、勝敗の判定画面まで揃って初めて成り立ちます。新版 Flash が重点的に改善したのは、これら各パーツをつなぎ合わせ、実際に動作する一連のプロジェクトに仕上げる力です。
DeepSeek は新モデルで制作された4つのプロジェクトを公開しました。いずれも実際に動かしたときの様子を示しています:
カメラが宮殿群、中庭、本殿の間を移り変わり、赤い城壁、金色の屋根、雪景色、光と影の移ろいを描き出します。
紫禁城(故宮)3D建築群ウォークスルー:映像はまず連なる宮殿の屋根の上空俯瞰から始まり、視点が徐々に近づいて紅壁の中庭や門を抜け、本殿の構造、地面に積もる雪、光の当たり方による明暗の変化を描き出します。文化財の展示や3Dインタラクティブ空間のプロトタイプとして活用できる例です。
マシン紹介、カウントダウンによるスタート、コース走行と障害物回避、リアルタイム速度表示、勝利判定画面を含みます。
ウェブ夜間レースゲーム(Neon Velocity):レースカーの画像を1枚描くだけでなく、ゲーム全体の流れを丸ごと構築しています。メイン画面での車両表示やスタートボタンから、カウントダウン、ネオンに彩られたコースでの加速やライバル車の回避、画面下のダッシュボードやミニマップのリアルタイム表示、そしてゴール後の順位判定画面まで網羅されています。
一人称視点でのテストルーム探索、手持ちのポータル銃で壁に青とオレンジのゲートを開いて行き来する様子を実演。
『ポータル2』メカニクス再現デモ:ゲーム制作エンジン Godot を使い、おなじみの一人称テストチャンバーを構築。プレイヤーがツールを手に壁へ青とオレンジのポータルを発射し、一方に入ると瞬時にもう一方から現れる仕組みを再現しており、デモの最後にはエレベーターも登場します。ゲーム制作において、「一方のゲートに入ると別の場所へ出る」という基本ギミックをまず動く形で検証し、その後にステージを広げていく用途に適しています。
見下ろし視点で、同一の渓谷地形における石器時代、古典古代、中世、現代の集落の変遷を表現。
時代の渓谷(Valley of Ages):見下ろし視点で描く歴史の変遷シーンです。時代のタブが石器時代から古典古代、中世、そして現代へと切り替わるにつれ、同じ川や谷の両岸に建つ建築物が、素朴な藁葺き小屋から古典的な列柱神殿、中世の街並み、そして現代の高層ビルや舗装道路へと次第に進化していきます。
ミニゲーム、インタラクティブ展示、教育用デモを作りたい人にとって、この能力の強みは「アイデアをまず目に見えて操作できる初期版として形にし、人に試してもらってから改善方針を決められる」点にあります。公式デモは開発ツールと連携して作られた厳選された実例であり、どんな要望でも一言プロンプトを投げるだけで完成することを保証するものではありません。また、基本操作が動くことと、完全なゲームとして仕上がっていることは別物です。
パソコン上でプロジェクトを動かすには連携ツールが必要
チャット欄でアイデアを出すことと、パソコン上で実際に AI にプロジェクトを動かしてもらうことは、使い方が根本的に異なります。自身のPC上でファイルを作成しゲームを起動させるには、そうした操作を実行できるツールを AI に連携させ、必要な権限を設定する必要があります。
デモにあるような完全なプロジェクトは、2つの役割の分担と連携によって成り立っています:
- モデルが思考を担当する:要望を分析し、何個のファイルが必要か、コードをどう書くか、エラーが出た際にどう修正すべきかを考案します。
- 連携ツールがパソコン内で手を動かす:ストレージ上に実際のコードファイルを新規作成し、プログラムを実行。エラーが発生すればその情報をモデルへ戻し、モデルが再び修正案を練ります。
ユーザーが一言二言の指示を出しただけでも、パソコンの裏側ではモデルと連携ツールが「コードを書き、動かし、エラーを見つけ、直して再試行する」サイクルを何度も繰り返し、プログラムの正常動作を試みています。公式が推奨する連携ツールは DeepSeek Harness と呼ばれ、設定された権限の範囲内で AI に代わってファイルの作成やコマンド実行を行い、生成されたコードを実際に動かします。
他のモデルと比べて何が優れているのか?
DeepSeek が公開した一覧表によると、新版 Flash はプログラミングやタスク自動化のテストにおいて高い競争力を示す一方、高難度の総合問題や一部の画像認識テストでは Claude Opus 5 に及んでいません。タスクの種類によって結果は異なります。
プログラミング:Claude と一長一短。あるコーディングテストでは Flash が 77.0 をマークし、Claude Opus 5 の 74.0、GPT-5.6 Sol の 73.0、Kimi K3 の 67.5、GLM 5.3 の 66.9 を上回りました。しかし別のコーディングテストでは Flash が 29.1、Opus 5 が 37.0 と逆転しています。一部の開発タスクで競争力があるとは言えても、あらゆるプログラミングで Claude より上とは言えません。
タスクの自律実行:比較表でひときわ目立つ強み。タスク自動化テストにおいて Flash は 60.5 を記録し、Opus 5 の 50.3 をリード。表中の GPT、Kimi、GLM の各バージョンも、Flash の 60.5 を下回っています。前述の連携ツールと合わせることで、単にアドバイスを出すだけでなく、ゴールに向けて連続して操作をこなしプロジェクトを前進させる使い道がイメージできます。実際の効果はタスクの内容によって左右されます。
高難度問題への対応:Opus 5 とは明確な開き。外部ツールを使わずに難問を解く総合テストでは、Flash のスコアは 42.6 で、Opus 5 の 56.3 に及びませんでした。GPT-5.6 Sol の 44.5 や Kimi K3 の 43.5 も Flash をわずかに上回っています。コーディング成績が優秀だからといって、あらゆる難問で最良の答えを出せるわけではありません。
画像・図表分析:競争力はあるが Opus 5 には一歩届かず。ツールを活用した図表分析テストにおいて、Flash は 83.0 を記録。Opus 5 の 84.0 に迫り、GPT-5.6 Sol の 79.9 や Kimi K3 の 68.1 を上回りました。図表を読み解く力は備えているものの、この結果だけであらゆる視覚認識能力の総合順位と見なすことはできません。
以上は DeepSeek が公表したテスト結果です。モデルを選ぶ際は、自身の利用目的や実際の使用感と照らし合わせて判断する必要があります。
待ち時間を短縮し、出費を抑制:タスク実行効率の進化
DeepSeek によると、新バージョンはタスク完了までの時間が短くなり、生成される文字量も削減されたとのことです。この改善の実質的な意味は、待ち時間が減り、より少ない出力でタスクを終えられることにあります。具体的にどれほど短縮されるかはタスク次第であり、一律の短縮率は公表されていません。
普段のチャット利用であれば、主に気にするのは応答の速さと結果の質です。しかし、有料でモデルを自社アプリに組み込む場合は、1つのタスクをこなすのに実際にいくらかかるかが重要なポイントとなります。
正答率は向上、平均コストは減少
同一の公式プログラミングテストに基づき、スコアを「100問中でおよそ何問解けるか」に換算。
公式 DeepSWE プログラミングテスト(スコア 74.2% と 77.0%)に基づく換算値。「100問中」は直感的な理解のための換算で、費用は原図の概算値です。すべてのタスクで同等の削減率が得られるとは限りません。
公式に公表された一連の標準プログラミングテストにおいて、旧モデルの最高設定での合格率は 74.2% でしたが、新バージョンでは 77.0% に向上しました。この数値をわかりやすく比率換算すると、テスト問題100問につき、旧版はおよそ74問正解だったのに対し、新版はおよそ77問正解できる計算になります。
このテスト群では、1問あたりの平均試行コストも約0.49ドルから約0.20ドルへと低下しました。つまり、正解数が増えたにもかかわらず、平均コストは下がったことになります。この2つの費用は公式チャートから読み取った概算値であり、当該ベンチマーク内でのタスクコストを示すものです。ソフトウェア連携時の単価をそのまま表すものではなく、すべての利用現場で同等のコスト削減率が得られるとは限りません。
他社アプリにも開放された DeepSeek の検索機能
DeepSeek の公式チャットでは以前からウェブ検索による資料参照が可能でした。今回の新展開は、その基盤となる検索エンジンを他社製ソフトウェア向けに開放した点です。開発者は自作の AI アシスタントにこれを組み込み、最新のウェブページを検索し、本文を読んだ上で回答させることが可能になります。DeepSeek によると、この自社検索システムはすでに日々数億件のリクエストを処理しているとのことです。
このサービスは主に2つの動作で構成されています:
- Search(ウェブページ検索):キーワードを渡すとウェブ全体を検索し、関連性の高いページのタイトル、URL、短い要約テキストを返します。
- Fetch(本文取得):検索要約だけでは不十分な場合、指定したウェブページの本文を抽出し、AI が精読できるようにします。
たとえば、特定ブランドの新製品の使い方を案内する AI アシスタントを作る場合、次のように資料を調べさせることができます:
- ユーザーから最新機能について質問された際、アシスタントはまず Search で公式サイトの関連説明ページを探します。
- 検索結果の要約に答えがはっきり書かれていれば、そのままユーザーに回答し、ページ本文を読み込む手間を1回分省きます。
- 複雑な問い合わせであれば、Fetch を使ってマニュアルページの全文を取得し、モデルが本文を熟読した上で回答します。
検索によってアシスタントは最新情報を入手できますが、ウェブ情報や AI の回答に誤りが生じる可能性は残ります。重要な内容は原典で確認することが不可欠です。
これら2つの API の公開価格は、いずれも 1,000回あたり5元(5CNY) です:
1回の資料検索にいくらかかるか?
試算例:1回の問い合わせでまずウェブ検索を行い、続いて本文を1件取得するかを選択。成功した操作1回につき0.5フェン(0.005元)が課金されます。
ここで明確にしておくべき点は、「1,000回あたり5元」はAPI呼び出しの回数を指しており、1,000人のユーザー対応や1,000回の会話を意味するわけではないということです。たとえばアシスタントが1回の問い合わせで「検索を1回(Search 1回)」行い、「ウェブページを1件取得(Fetch 1回)」した場合、合計2回の呼び出しとなり、合わせて1フェン(0.01元)がかかります。AI が資料を読み取り回答を生成するモデル利用料は別途計算されます。また、結果を正常に取得できたリクエストのみが課金対象となり、通信障害や該当結果なしの場合は請求されません。
この従量課金は他社製ソフトウェアが検索 API を利用する場合のものであり、DeepSeek 公式アプリのチャット料金ではありません。なお、DeepSeek Harness、Claude Code、Codex 経由で DeepSeek のサーバー側検索をすでに利用している API ユーザーについては、この検索および本文取得の利用料が一時的に免除されており、北京時間2026年11月1日午前0時より課金が開始されます。
試してみたいときはどこから始めるか
利用者の目的に応じて、以下の方法で新バージョンを体験できます:
- 日常的なチャット利用:DeepSeek の公式ウェブサイトまたはスマートフォンアプリを直接開くだけで利用可能です。新バージョンへの切り替えは自動で行われており、普段のタスクで使い心地の違いを試すことができます。
- PC上でプロジェクトを実験したい場合:チャット画面だけではローカルファイルを直接操作できないため、PC上でコードを実行できる連携ツールの導入が必要です。
開発者向け導入とモデルのダウンロード
DeepSeek Harness を使用している場合、公式からはバージョン 0.2.1-rc.1 以上へのアップデートが推奨されています。
- ソフトウェアへの組み込み:従来のエンドポイント名
deepseek-flashを呼び出しているプログラムは、API設定を変更することなく自動で新バージョンに切り替わります。 - ダウンロードとセルフホスト:モデルの重みファイルも同時に公開されており、MITライセンス(条件に基づく利用や改変を許諾)が適用されているため、開発者は無料でダウンロードして自社サーバーにデプロイしたり追加改変を行ったりできます。
モデルファイルに関心のある開発者は、Hugging Face リポジトリ または ModelScope コミュニティ から入手可能です。
